軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

6話 摺り合わせ

無事に人種王国第一王子クローの試験(ただの言いがかりとも言うが)を突破し、『護衛に問題無し』の合格をもらう。

訓練場から、リリスの先導で話し合いの場に移動する際、クローと兵士達が隔絶した別種の存在を見るかのように僕へと視線を向けてきた。

その視線は僕にとってどうでもいいものではあるが、普通の人ならばあまり気持ちが良くないだろう、と思える視線も中には混ざっている。

彼らの視線を無視して僕達はさっさと場所を移動する。

向かった場所は……リリスの私室だ。

「……姫様、お戯れはおよしください」

「ノノ、どきなさい。部屋に入れないではありませんか」

「……メイド長として、殿方を姫様の私室にお入れする訳にはまいりません」

リリス私室前で、メイド長を名乗るノノという女性がリリスと押し問答を繰り返す。

メイド長ノノの言い分は尤もだ。

年頃の少女の部屋に男性が入る。

しかも女性側は人種王国第一王女リリスだ。仮に彼女に婚約者が居た場合、これが問題になって婚約破棄に発展してもおかしくない。

だがリリスはメイド長ノノの意見を聞かず強行する。

「彼らは私が冒険者ギルドを通して護衛を依頼した、信頼できる方々です。また私室と言っても寝室なら問題ですが、リビングでお話し合いをするだけです。そして、これ以上お兄様などに今回の一件を邪魔されないためにも、私室で護衛のすりあわせをしたいのです。これは私自身の安全に関わる問題ですので、手を抜く訳にはまいりません。ですから、人種王国第一王女リリスの名においてもう一度命じます。ノノ、どきなさい」

「…………」

一方でリリスの意見も納得できるものだった。

彼女の言葉通り寝室まで入ったら問題だが、リビングで客人と応対するならギリギリ言い訳が効く。

何より『黒の道化師』パーティーには男だけではなく、女性のネムムも居るため、他者から指摘を受けても言い訳がききやすい。

また私室はリリスの領域のため、他会議室でおこなうより、妨害を受ける可能性もぐっと低くなる。

彼女はその辺りも計算に入れて、私室での話し合いを提案しているのだ。

人種王国第一王女リリスの名を出されて、それ以上の抵抗は難しくノノは黙って引き下がる。

偽ユメが扉を開き、リリスを室内へ。

そのまま僕達と一緒にリビングまで移動した。

「皆様、お好きな席へどうぞ。ノノ、貴女達は私が声をかけるまで入って来ないように」

「……姫様、我々を遠ざけては客人に満足な給仕が出来ません。どうか残るご許可をくださいませ」

「お客様の対応はユメに任せるから安心しなさい。これ以上、私に恥を掻かせないで」

「……ッ。失礼致しました」

ノノが一礼すると偽ユメ以外のメイド達を連れて部屋を出る。

彼女達が部屋を出たのを確認してから、ネムムに問う。

「ネムム」

「……扉の外で先程のメイド達がこちらを窺っているようですが、離れているので普通に話をする分には声を聞かれることはないかと。他にこちらを窺う気配がありますが、距離が離れているため問題ありません」

「ありがとう。一応、『R、サイレント』、『R、探知』、『SR、魔力妨害』、 解放(リリース) 」

ネムムに確認を取った後、 恩恵(ギフト) 『無限ガチャ』カードで防音と、盗み聞く者、監視する者、その手のマジックアイテム等が無いかのチェックをし終えた。

これでこのリビングは綺麗になったので、踏み込んだ話をしても問題は無い。

僕はソファーに座り、仮面を外す。

「さっきのメイド長の人が、魔人国と繋がっているスパイだね」

「お恥ずかしい話ですが……。他控えていたメイドも数名が他国のスパイでしたわ。お陰で現在、心から信用できるのはライト様が与えてくださったカードで作り出したユメちゃんだけですの」

僕が仮面を外したことで、リリスも『本音を告げてもよい』と気付き、テーブルを挟んだ正面ソファーへと腰を下ろす。

ネムム、ゴールドは僕の背後に立ち、偽ユメが既に準備されていたポットで淹れたお茶を僕とリリスの前に置く。

配置を終えると、彼女はメイドらしく静かに目立たない端へと移動した。

リリスはどこか疲れたように溜息を漏らしカップを手に取る。

「幼い頃から一緒に居たノノがスパイで、場合によっては私を暗殺する役目を負っていたと知り、最近は彼女の淹れたお茶すら飲めず、私の身の回りの世話は全てユメちゃんに任せているのです。ライト様、彼女をここに置いて頂きまして本当にありがとうございます。ユメちゃんが居なかったら、肉体より先に精神的に潰れていた所ですわ。」

「? 確か毒物無効化のネックレスをお渡ししましたよね?」

予想以上にスパイが紛れ込んでいることを知り、暗殺を警戒し僕から彼女に毒物無効化の力を持つマジックアイテムをプレゼントした。

彼女とは協力関係にあるし、色々と彼女のお陰で助かっている点もあるため、少しでもそれを返すために贈ったモノだ。

リリスが服の上からネックレスを撫でつつ、苦笑する。

「ライト様から頂いたマジックアイテムのお力を疑う訳ではありませんが……やはり心情的に落ち着かなくて……」

「お気持ちは理解できますよ」

確かに毒物を無効化出来るとはいえ、『毒物が入った飲食物を口にしたいか』と問われたら僕もお断りだ。

警戒し、口にしないよう心がけるのが普通だろう。

リリスが話題を変えるため、軽く咳をする。

彼女は謝罪しつつ、深々と頭を下げた。

「ライト様、先程はお兄様が失礼な態度を取り大変申し訳ありませんでした。ですがお兄様もライト様が護衛として『問題が無い』と仰いました。お兄様はシックス公国会議中は次期国王の予行演習も兼ねて王国内を切り盛りする予定です。なので今回の会議は欠席で、移動中などにちょっかいを出されることはありません。国王であるお父様も既に了承済み。なのでどうか寛大なお心でお許しくださいませ」

「頭を上げてください、リリス様。お兄さんの態度は気にしておりません。むしろ同じ兄として妹の旅路の安全を心配する彼の心は理解できますし、怒ったりなどしませんよ」

「ライト様、ありがとうございます……」

僕から直接『怒っていない』という言葉を引っ張り出し、顔を上げたリリスがあからさまな安堵を漏らす。

『奈落』最下層の力が人種王国に向かないよう慎重な対応をしているのだろうが、少々恐がり過ぎじゃないかな?

確かに『奈落』最下層の戦力は自分としても凄まじいの一言だが、それを何にでも振るう程軽くはない。

――と、僕の口から言っても、態度を変えるのは難しいだろうな。

僕とリリスは協力関係を結んでいるが、この辺りに立場や持つ力量の差から来る認識の差異が存在するのは仕方ないとも言える。

胸中でそう考えつつ、僕は話を進める。

「では早速、シックス公国会議の日程、護衛や流れについてすりあわせをいたしましょう」

「はい、よろしくお願いします」

こうして僕達はクローの妨害が入ったがようやく予定通りの話し合いをおこなうことが出来たのだった。