軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

5話 人種兵士達との模擬戦

「ら――ダークさん! 貴方と模擬戦をする兵士達は兄に逆らえないのです! なのでどうか寛大なるお慈悲を与えてくださいませ!」

「……分かりました。ちゃんと手加減をするのでご安心ください、リリス姫様」

訓練所中央へ移動する途中、リリスに声をかけられたので無視する訳にもいかず返事をする。

彼女はちょくちょく感情が高ぶっているせいか、僕の本名を口にしかけていた。

また僕の実力を知り、自国兵士の身の安全を願う気持ちは立派だと思うが、この場で大きな声で『寛大なお慈悲を~』なんて口にしたら、兵士達のプライドに触ってしまう。

予想通り、クローの背後に居た兵士達の瞳に闘争心の火が灯る。

この若干空気が読めない所が、彼女の兄クローと似ている気がした。

(兄妹だからか? それとも王族だから、下々の感情など気付かない結果なのかな?)

僕は移動しつつ、余計な事を考えてしまう。

訓練所中央まで移動すると、5人の人種兵士が待ち構えていた。

盾に剣×3人、弓兵×2人構成だ。

剣の刃は潰され、矢の鏃は外されている。

(恐らく盾で防御しつつ、弓兵で削って、最後に複数人数で袋叩きにするつもりかな。よっぽど『 巨塔街(きょとうがい) 』に出入りしている僕達を、シックス公国会議に出席させたくないんだな……)

堅実といえば堅実な作戦だ。

当然、リリスが抗議の声をあげる。

「お兄様! ダークさんはお1人! にもかかわらず複数で挑むのは卑怯ではありませんか!」

「普通の模擬戦ならともかく、これは護衛の試験だぞ? 盗賊やモンスターは必ずしも1対1で挑んでくる訳ではない。 より実戦に則した模擬戦にしなければ試験の意味が無いではないか」

「た、確かにお兄様の仰ることには一理ありますが……」

「ならば黙って見ていろ。それでは試験を始めるぞ」

「お兄様!」

リリスの叫びを五月蠅そうに無視して、クローが審判のように僕達の間に立つ。

「相手の殺害以外は全て許す。これは試験だが、実戦を想定してのモノだということを忘れずに」

簡単なルールを説明すると僕と兵士達から距離を取る。

クローが開始の合図を叫ぶ。

「では……始め!」

彼の声に従い敵の前衛は盾を構えて防御態勢になって、背後の弓兵を守る。

弓兵は素速く矢を弦に番えて、狙いを絞る。

僕はというと――相手の行動など気にせず、真っ直ぐ踏み込む!

「手加減はもちろんするけど……ある程度の痛みは我慢してね」

「ぐあぁッ!?」

正面、盾を構える兵士×3人のうち、真ん中の人に声をかける。

声をかけた彼の盾を正面から、杖で突き本人ごと力任せに吹き飛ばす。

『いくら冒険者A級でも相手は子供だ』と、見た目で判断していたのだろう。

素速い踏み込みに加え、鍛えた成人男性が構える盾ごと吹き飛ばす程の力があるとは想定していなかったようで、兵士は戸惑いの悲鳴を上げながら地面を転がった。

盾に守られていた弓兵達も、まさか盾を構えた兵士が1人吹き飛ばされてくるとは想定しておらず、慌てて回避行動を取る。

当然、弦にかけていた弓を撃つ暇など無い。

僕は驚き固まってしまった左右の盾兵士の間をすり抜け、ついでに首を打ち抜き意識を奪う。

さらに矢を撃たず回避に専念していた弓兵達の腹部を杖で突き、無力化する。

模擬戦は10秒かからず終了してしまう。

目の前の現実にクローと人種兵士達が言葉を失い、呆然とする。

僕はそんな彼らに声をかけた。

「これで僕が足を引っ張ることは無いと証明できましたか?」

「……ふ」

「ふ?」

「巫山戯るな!」

合格をもらえる所か、クローに怒鳴られてしまう。

なぜだろう、実力を示すため速攻で倒した上、リリスの要望通りなるべく兵士達を傷つけなかったというのに。

どうして『巫山戯るな』と怒鳴るのか。

僕が疑問を抱いていると、クローが叫び出す。

「そ、そんな魔術師風の恰好をしているにもかかわらず魔術一つ使わず、兵士達を倒すなど! 貴様、実は魔術師ではなく戦士だな! 戦士のくせに魔術師の恰好をして騙すなど不正だ! 卑怯者め! この模擬戦は不正だ! そうに違いない!」

「えぇぇ……」

別に相手を騙すため魔術師の恰好をしている訳ではない。

『無限ガチャ』で得たカードを通して一流魔術師とほぼ遜色がない魔術を行使することが出来る。

故に分類上、僕は『魔術師』と呼んで差し支えないため、魔術師の恰好をしているのだ。

それにケチを付けられる謂われはない。

魔術を使わなかったのは、単に使うまでもなかっただけだ。

僕はクローのあまりの頭の悪い言葉に、怒りの混じった表情を作る。

リリスが僕の表情変化に気付き、青い顔で慌てて介入してきた。

「お、お兄様! 落ち着いてください! 誤解です! ダークさんは魔術師で間違いありません。ただ実力があり、魔術を使うまでも無かっただけです」

「信じられるか! あれだけ接近戦が強い魔術師が居てたまるか!」

(? あれ、前にもクローと似た台詞を言われたような気が……)

彼の叫びでつい別の事を考えてしまう。

そんな僕にリリスが話しかけてきた。

「ではダークさんに実際、魔術を使って頂きましょう! それで魔術師と証明できる筈です。ダークさん、お手数ですが一つ魔術を使ってくださいませんか? 出来れば皆に分かり易い派手で強いのをお願いしたいのですが……」

「派手で強い魔術ですか?」

クローや他兵士達を納得させるためにも、リリスの提案は理に適っていた。

拒否する理由もないため、彼女の提案に乗っかる。

「では、なるべく派手で強い魔術を使いますね。少し大きな音が鳴るので皆さん、気を付けてください」

僕は訓練所の空きスペースに向き直る。

リリス、偽ユメは僕の指示に従い両手で耳を押さえた。

クロー、兵士達は胡散臭そうな視線を向けるだけだ。

「爆豪火炎!」

『SSR 爆豪火炎』1枚を解放する。

『ドンッ』と腹に響く衝撃音。

天を焦がすように爆炎が舞い上がる。

炎、土埃、衝撃波が訓練所で舞い踊る。

土煙が落ち着く頃、訓練所の地面が抉れて、クレーターを作っていた。

僕はリリスへと尋ねる。

「リリス姫様、これでよろしいですか?」

「は、はい……よろしいです」

耳を押さえていたにも関わらず、『SSR 爆豪火炎』の衝撃に驚き、リリスが小声&丁寧語で返事をしてしまう。

一方、クロー&兵士達はというと……。

「…………」

クローと一部兵士達は衝撃、爆音、炎などに驚き腰が抜けて尻餅をついてしまっていた。

妹のリリスは弱々しいが気丈にも立っているのに、兄クローや兵士達が腰を抜かしているのはかなり恰好が悪かった。

だが本人達はそれを気に出来るほどの余裕は無く、彼らの表情は未だに魂が抜けたように呆けている。

そんな兄達にリリスが声をかける。

「お兄様、分かって頂けましたでしょうか? ダークさんが本気になれば5人どころか、100人、1000人居ようと変わらないのです。これでもまだ護衛として問題ありますでしょうか?」

「い、いや、いや、な、無い。護衛に問題は無い……」

衝撃から未だ立ち直れず、クローは腰が抜け座り込んだ状態で呂律が回っていない声音で『護衛に問題は無い』と告げた。

つまり、合格を言い渡す。

お陰で名実共にリリスの護衛役を勝ち取ることが出来たのだった。