軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

14話 vsゴブリン

『ガタゴト』と馬車が目的地に向かって移動する。

先頭をモヒカン冒険者達が乗った馬車が、後を追うように行商人ヨールム、エリオ、ミヤが乗った幌馬車が続く。

幌馬車の後部出入口に乗ったミヤが、後方を確認しつつ、昼食時に仲良くなったモヒカン達から聞いたダーク(ライト偽名)の話を嬉しそうに兄エリオとする。

「さすがダークさん、エルフ女王国でも大活躍していたなんて。またお会いして魔術について色々お話ししたいなぁ」

「俺もまたゴールドさんに会って盾や剣の扱い方をもっと教えてもらいたいよ。ダンジョン内部で教わった時は本当に触り程度だったからな……」

ネムムの名前が上がらないのは、別に2人から避けられている訳ではない。

単純に2人と交流が無かったため、話題に上がらないだけだ。

「モヒカンさん達の話じゃ、ゴールドさん達はドワーフ王国首都に向かったって話だからな……。当分、顔を合わせる機会はないだろうな」

エリオ達は現在、 人種(ヒューマン) 王国領内で暮らしている。

ドワーフ王国は、 人種(ヒューマン) 王国からすると真西だ。村の位置的に考えてドワーフ王国より、エルフ女王国国境の方が近いぐらいだ。

一般的な常識から考えて、これだけ距離が遠ければダーク達と再び顔を合わせるのは非常に難しい。

だが、ミヤは落ち込まず明るい声音で告げる。

「でも、モヒカンさん達がわたしやお兄ちゃんが『会いたがっている』って、ダークさん達にまた顔を合わせたら伝えてくれるって約束してくれたし。その話を聞いて、いつか村に会いに来てくれるかもしれないよ!」

昼食の席でモヒカン達曰く、『俺達はまだ冒険者を止めるつもりはないから、ダーク様達と再び顔を合わせる機会はきっとあるだろう。その時、ミヤちゃん達がまた会いたいと希望していたと伝えておいてやるぜ! ひゃっはー』と言ってくれたのだ。

この言葉を思い出しミヤが再び喜びの表情を作る。

モヒカン達の話を聞いて、ダーク達が会いに来てくれるかもしれないからだ。

ミヤの言葉にエリオが頷く。

「そうだな。ダークさん達ならきっといつか会いに来てくれるよ」

「……エリオくん、ミヤちゃん、2人ともモヒカンさん達と仲良くなれた上に、お知り合いの人と連絡が取れそうでよかったですね」

御者台で幌馬車を運転する行商人ヨールムが2人の話に入ってくる。

「自分も2人とモヒカンさん達が話し合う切っ掛けを作れて嬉しいです。……ただモヒカンさん達が、話を聞いていると見た目に反して非常に真面目な冒険者達で、エリオくん達に護衛についてもらったのが完全に無駄足だったのは残念でしかありませんが……」

御者台でヨールムが肩を落とす。

昼食の席で彼らの口からダーク達の活躍について話を聞いた。

一緒に彼らの実績や冒険者としての信念も知ることが出来た。モヒカン達は見た目に反して非常に真面目で、たまに居る格上のモンスターや盗賊などに襲われた際、雇い主を見捨てて逃げる不良冒険者ではないことを理解することが出来た。

ヨールムも行商人として多くの人と関わってきたため、嘘偽りを口にされたらすぐに気付く。

なにより、信頼しているミヤとエリオがここまで懐いたのだ。

少なくとも執拗に警戒する相手ではないと理解した。

だがお陰で、ミヤ達に護衛として付いてきてもらったのが完全に無駄だったということが分かる。

2人に約束した移動費、食費、帰りの費用も全て、必要なかった経費だったということだ。

ヨールムが溜息を吐き、自身に言い聞かせる。

「人の見た目に惑わされてはいけない。今回の件は良い勉強になったと割り切るべきですね……。っと、前で何かあったようですね?」

ヨールムがぼやいていると、前を先行するモヒカン達が乗る馬車の足が止まる。

何か問題が起きたようだ。

馬車から4人のモヒカンが降りて、1人がこっちへと向かってくる。

彼は幌馬車に辿り着くと、すぐに状況を説明した。

「森からゴブリンが10匹姿を現しやがった。馬車で強行突破も考えたが、敵の中に粗末ながら弓を持つ奴が2匹いやがる。強行突破中、間違って矢が馬に当たって倒れたら大事故に繋がるからな。安全を考えたらそれは避けるべきだろう。だから、俺達が戦うから旦那の護衛を頼む」

「……ならわたしとお兄ちゃんが前に出ます。このままヨールムさんの護衛をお願いしても良いですか?」

ミヤが数秒考え込むと、提案する。

このままだとモヒカン達は自分の馬車の護衛に1人。

ゴブリン10匹に4人で挑まなければならない。

だが、ヨールムの護衛を目の前のモヒカンに頼み、ミヤとエリオが前に出れば、5対10になる。

4対10で挑むより、人数差が縮まり安全度が高くなるのだ。

さらにミヤは魔術師のため遠距離のゴブリンアーチャーに対抗することが出来る。

相手がゴブリンでも、アーチャーがいればラッキーヒット一発で殺害される可能性もあるのだ。

『安全を考えれば、下手に出し惜しみするべきではない』とミヤは判断を下す。

「いいのか? 確かに俺達はそっちの方が助かるが……」

「はい、もちろんです。わたし達も護衛としてこの場にいるんですから」

「だな。何より、冒険者なら一番安全度が高い方法を採るべきだ」

「ありがとう、助かる。ヨールムの旦那のことは任せてくれ!」

モヒカンの返事を聞くと2人はすぐさま幌馬車を下りて前線へと走る。

前線でゴブリン達と睨み合っているモヒカン達と合流すると、彼らは一目でミヤとエリオが助太刀に来たと理解した。

モヒカン達も数年冒険者をやっているのだ。

現場の対応変化を理解する程度の場数は踏んでいる。

リーダーモヒカンが短く礼を口にして、指示を出す。

「助かる。互いの動きはまだ知らないから、お互い別々に動く方がいいだろう。ゴブリンアーチャー2匹とゴブリン2匹を頼めるか? 他6匹は俺達がなんとかする」

「了解。それで問題ありませんよ。ミヤ、ゴブリンアーチャーを任せてもいいか?」

「もちろん、任せてお兄ちゃん!」

『ギギギギギギギッ!』

緑の子供程度の背丈しかないゴブリンが、奇声をあげる。

最初はモヒカン達を警戒していたが、これ以上相手の人数が増える前に潰そうとしているのか、突撃してくる。

「――魔力よ、顕現し氷の刃となりて形をなせ、アイスソード!」

ミヤは迷わず最大火力の札を切った。

彼女の周囲に2本の氷の刃が浮かび上がる。

これが彼女の持つ最大の攻撃魔術だ。

「アイスソードよ! 敵を討って!」

2本のアイスソードが弓に矢をかけて放とうするゴブリンアーチャー×2匹へ向かって飛翔する。

とはいえ、いくら高速でもある程度距離がある。

ゴブリンアーチャー×2匹は弓に矢をかけたまま、余裕をもって回避しようとしたが――。

「ブレイク!」

『ギギギッ!?』

先行していたアイスソードの1本が、ミヤの声にあわせて砕け散る!

砕けた氷の礫は細かく、鋭い破片へと変化し広範囲に散らばった。

『グギィイッ!』

破片攻撃でゴブリンを殺害することは出来ないが、目を一時的に潰し、弓の弦を切断する程度は可能だ。

相手の視力を一時的に奪っている間に、残る1本でゴブリンアーチャー×2匹の首を刎ねる!

目が見えない相手なら、たいした労力ではない。

エルフ種カイトとの一戦でミヤは、アイスソード×3本だけで彼と渡り合った。

一時的に善戦し、レベル1500のカイトの一撃を防ぐ――アイスソードを盾に敵の攻撃を逸らすことに成功したのだ。

以後、ミヤはいざという時、もっと戦えるように『アイスソード』を研究、応用方法を考え、時間を見つけては練習していた。

アイスソードを任意のタイミングで砕き、鋭い飛礫にするのも彼女の努力と研究の結果である。

エリオも妹に負けず、迫り来る棍棒を振り回すゴブリン×2匹を相手取る。

「ふッ!」

『ギギギギギッ!?』

最初の1匹の攻撃を回避。

2匹目は盾を使って自身の体ごとぶつかり、ゴブリンを逆に吹き飛ばす。

回避したゴブリンが、吹き飛ばされた味方をカバーするように背後から襲ってくるが、エリオは冷静に向き合い対処した。

彼は無理をしてゴブリンを攻めず、2匹の注意を引きつつ、怪我をしない立ち回りに専念する。

無理をして攻めれば、ゴブリン1匹に致命傷を与えることは出来ただろう。

しかし、その隙を縫ってもう1匹の攻撃がエリオを襲うのは確実だ。

強者なら2匹だろうが、100匹だろうが、気にせず鼻歌交じりで倒すことが出来るだろうが――エリオは自分のことを理解している。

彼は自身の出来ることを把握し、その中で敵が嫌がることを考え実行する。

なぜなら彼は1人で戦っている訳ではないからだ。

『グギィッ!?』

エリオを夢中になって襲っていた1匹が背後から、アイスソードで喉を裂かれる。

ミヤがゴブリンアーチャーを始末した後、アイスソードを戻して兄の援護をしたのだ。

数が減り1対1なら、場数を踏み、武装が整っているエリオが負ける道理はない。

『ブギィッ!?』

勢いよく突っ込んできたゴブリンに合わせて盾を振るう。

体格差もあって、吹き飛ばされたゴブリンに追撃。

手にした剣で倒れたゴブリンの喉を突き刺し、止めを刺す。

確実に絶命したのを確認すると、エリオはミヤへと振り返った。

「ミヤ、援護ありがとう」

「お兄ちゃんもわたしを守ってくれてありがとうね」

長年ダンジョンで冒険者として活動していた2人だけあって、危なげなくゴブリンを退治する。

一方、モヒカン達はというと……。

「ひゃっはー! これで最後だぜ!」

倒れたゴブリンに手斧を振り下ろし止めを刺す。

モヒカン達も上手く立ち回って残るゴブリン6匹全部を倒した。

こうして無事に、誰1人怪我を負うことなく襲ってきたゴブリンを倒しきることが出来たのだった。