軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

番外編 ユメが居る生活3

僕は一通の招待状を受け取る。

紙に手書きで、本人は丁寧に書いているつもりなのだろうがやや文字がずれており、丸っぽい書き方の子供らしい文字だ。

書いたのは僕の実妹であるユメと、部下であるナズナの連名である。

以前、時間がなかなか取れず『奈落』最下層に保護したばかりのユメと顔を合わせられない時期があった。

結果、慣れない環境過ぎた上に寂しくさせてしまい、彼女を盛大に拗ねさせてしまったのだ。

そのお詫びではないが『何か欲しい物や食べたい物はないかな? ユメが望むモノを何でもプレゼントするよ』と提案した。

この問いに彼女は、『花を育て、料理がしたい』と返答してきた。

僕は実妹のお願いを聞き、花を育てる場所や種なども準備。料理を作る場所と食材、教師役の妖精メイドも手配した。

ユメはこのプレゼントにすっかり機嫌を直し、花を育て、料理の勉強をしていたのだ。

その成果がとりあえず出たので、直筆の手紙で僕をお茶会に誘った――という訳である。

ユメの育てた花を見て、彼女とナズナの手作りの お菓子(料理) でお茶会を楽しむ趣旨らしいが……。

(ユメはともかく、ナズナの料理か……)

実妹ながらユメは意外と器用で基本的に何でもこなす。お陰で 人種(ヒューマン) 王国に運良く拾われた際、見習いメイドとしても無難に仕事をこなしていた。

一方、ナズナも戦闘では非常に頼りになるが……正直、料理は未知数だ。

ユメとナズナは波長が合うのか、仲が良い。

とはいえナズナまでユメに感化されて料理を作るとは……。

(教師役の妖精メイドも居るし、食べられない物は出てこないだろうけど……)

最悪、レベル9999の耐性で乗り切る覚悟を固める。

ナズナは戦闘こそ非常に頼もしいのだが……。

内心で一抹の不安を抱えつつ、僕は指定された時間になると『ユメの植物園』区画へと移動した。

☆ ☆ ☆

「にーちゃん、いらっしゃい!」

「ご主人様、来てくれてありがとうー!」

ユメ、ナズナが元気よく出迎えてくれる。

僕は笑顔を零し、返答した。

「招待してくれてありがとう。今日は『ユメの植物園』やナズナたちの料理を楽しませてもらうよ」

『ユメの植物園』なんてご大層な名前だが、別にそう大袈裟なモノではない。

『奈落』最下層の一区画をユメに割り振り、地上から土を持って移動。植物の種などを与えただけだ。

とはいえ『花壇』と呼ぶには少しだけ規模が大きいため、いつの間にか『植物園』と呼ばれるようになったのだ。

ユメに手を引かれて、まずは植えられた花々を見て回る。

いまいち名前は分からないが、色とりどりの花が咲いている。

地上で見つけて持ち込んだ花、僕の 恩恵(ギフト) 『無限ガチャ』から得た種や苗などから咲いた花々が入り乱れる。

ユメはその中でも一番好きな花を見せてくれた。

「ユメ、これが一番好きなんだ。『胡蝶蘭』っていう名前なんだよ」

「これは僕の 恩恵(ギフト) 『無限ガチャ』から出た花だね」

茎に規則的に白、赤などの花が並んでいる。

見た目が豪華だったため、なんとなく印象に残っていた。

ユメは機嫌良さげに同意する。

「そうだよ。にーちゃんが出してくれたお花っていうのもあるけど、綺麗だから好きなんだ」

「そう言ってもらえると嬉しいよ」

長期間会えなかったせいで拗ねてしまったこともあるユメだったが、非常に機嫌良く元気になっており、僕も嬉しくなる。

会話をしている僕とユメに、ナズナも声をかけてきた。

「ご主人様! あたいも地上で見つけてきた花を植えたんだ! 是非、見ていってくれ!」

彼女に空いた手を引っ張られて次の花へと向かう。

向かった先には――巨大な『花』が咲いていた。

全長約2mで、茎、花びら、葉っぱなど基本的な花要素はあるが、全ては通常より大きい。

花というより植物モンスターにしか見えなかった。

花の中心がぱっくりと割れて、子犬や子猫サイズの動物なら丸飲みにしてしまいそうな迫力がある。

「……これ植物モンスターとかじゃないよね?」

僕は思わずナズナに尋ねる。

彼女は可笑しそうに笑いながら返答した。

「ご主人様のジョーダンは面白いな! どう見ても植物だぞ! 妹様を危険に晒す植物モンスターなんて、あたいが持ち込むはずないじゃないか!」

「ありがとう、ナズナお姉ちゃん!」

「あたいはお姉ちゃんだからな! 妹様の安全はちゃんと考えないと!」

ナズナが大きな胸を張り断言する。

(確かに鑑定する限り普通の植物のようだから大丈夫か……。それに例え危険な植物モンスターでもナズナが側に居れば安全だろうしな)

それにしてもこれほど巨大な植物が存在するとは……。

(植物は薬草、錬金術関係で少し触れた程度だけど、本格的に勉学として学んだらそれはそれで面白いのかもしれないな……)とついそんなことを考えてしまう。

他にもナズナが地上から持ち込んだ植物があり、それも見て回った。

ユメは普通に綺麗な花々を中心としているが、ナズナは妙な植物を中心に集めていた。

これでは『ユメの植物園』というより、『ナズナ植物園』という感じだが、本人達は納得して楽しんでいるので問題は無いようだ。

本当にユメ、ナズナは仲が良いな。

植物園を一通り見終わった後、次の本命であるお茶会を開く。

植物園の中心に開けたスペースがあり、そこに妖精メイド達がお茶会の準備を終えていた。

茶葉はユメが育てたハーブティーで、お茶請けはナズナと2人で手作りしたクッキーだ。

「うん、美味しいよ。この丸いのはユメが作ったやつかな?」

「にーちゃんのために頑張って焼いたんだよ! それで、こっちのがナズナお姉ちゃんが作ったやつ。どう? どう?」

「うん、ナズナのもちょっとだけ形が薄いとこがあるけど香ばしくて美味しいよ。それにこのハーブティーも落ち着くな。ありがとう、ユメ、ナズナ」

「うー、ちょっと焦げて失敗したとこもあるけど、次はもっと綺麗に作ってみせるからな! ご主人様にも妹様にもっと美味しいって言ってもらいたいし。あたいがんばるよ!」

「そう、その意気だよナズナお姉ちゃん。一緒に頑張ろうね!」

3人でテーブルを囲み、お菓子を食べハーブティーを飲みながらたわいもない話をする。

ハーブティーも、クッキーもどちらも普通に美味しかった。

(よかった。レベル9999の耐性、体力、抵抗を頼る事態にならなくて……)と内心で安堵したのは2人には内緒である。

しかしユメとナズナは本当に仲がいいな。

ユメには兄2人しかいかなかったから、姉的存在というのが新鮮なのかもしれない。

「美味しいね、にーちゃん! また皆でお茶会しようね!」

「ああ、そうだね。たまにはこういうのもいいな……」

一時仕事の忙しさから解放されて、リラックスする。

こうして僕は無事、楽しくユメ、ナズナとお茶会を過ごすことが出来たのだった。