軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

40話 思惟

無事、ドワーフ種ナーノに復讐を遂げる事が出来た。

ナーノに対してスムーズに復讐を終えることが出来たのも、『奈落』の皆、そしてドワーフ王国の協力のお陰だ。ドワーフ王の命令で捕獲の際も人払いが出来たし、他にも様々に協力してもらった。

ドワーフ国王に会談を持ち込むことを提案してくれた 人種(ヒューマン) 王国リリス王女には感謝である。

復讐を果たすことが出来た他に『ますたー』と思わしき敵と戦うことが出来たのも大きい収穫だ。

問題があるとするなら――。

「得るモノは多かったが、その分調べることや謎が増えたね……」

『C』とは?

『C』の隷下、眷属とは?

『ますたー』と思わしき存在もまた『C』という存在を探している?

またヒソミの『手が足りない』ということから、組織、またはそれに準ずる形の集団を形成している?

――本当に考えること、謎が増えたものだ。

『奈落』最下層執務室で、僕は机に座りながら今回の一件の感想を漏らす。

正面にはメイ、アオユキ、エリーが揃っていた。

彼女たちはそれぞれ今回の件について話していく。

「申し訳ありませんわ、わたくしが塵となった ヒソミ(ますたー) を死者蘇生の魔術、 極限級(アルティメット・クラス) で復活させることが出来れば良かったのですが……あそこまで塵となってしまえば難しく、死者蘇生することは出来ませんでしたわ……」

「にゃー」

「ヒソミに関して、捕らえたナーノに念のためもう一度あらゆる手段で問い質したのですが、酒場で初めて顔を合わせて『禁忌の剣製造本』を購入後、屋敷で定期的に荷物を運んでくるだけの関係で詳しいことは分からない、と。エリーにも記憶を確認して頂いたことから、証言に間違いはないかと思われます」

エリーは落ち込み、アオユキ、メイはいつもの調子で答える。

僕は正面を向いてから皆に声をかけた。

「エリー、気にしないで。遺体が塵になったらしかたないよ。死者蘇生の条件は厳しいからね。アオユキも周囲の警戒ありがとう。ヒソミ以外の監視者、『ますたー』らしき存在が居なかったらしいね。メイもナーノにヒソミについて情報を聞いてくれてありがとう」

「ライト 神様(しんさま) ……ッ! 勿体ない……勿体ないお言葉ですわ!」

「うにゃ~」

「お礼など必要有りません。全てはライト様のためですので」

三者三様の反応を示す。

僕はそんな彼女たちに笑顔で頷く。

また今回の一件でドワーフ王国と強固な関係を築くことが出来たのと、僕たちが潜った『大規模過去文明遺跡』で貴重な資料やアイテムなどが多数出てきた。

勿論彼らは研究さえ出来れば良いので、アイテム等や資料については僕達に優先的に欲しいものを渡してくれるとのことだ。さらには、研究結果も全て教えてもらえるという契約を交わしている。

とはいえあの無限ゴーレム階層、人工海、人造 神話級(ミトロジー・クラス) 兵器などに関する資料がメインで、難易度がかなり高いためすぐに研究が進むとは思えないが。

また、僕たちが最も興味を持つ情報―― 竜人種(ドラゴンニュート) 、魔人種が秘匿しているだろう『技術を加速させると本当に世界が滅ぶのか?』、『ますたー以外に危険視する存在』等についてだが。

今回の『大規模過去文明遺跡』を攻略することで、2国に攻め入らなくてもその2種が秘匿している情報やヒントなどが得られるかもと考えていたが……。今の所、それらについての情報らしきモノはなかった。

今後情報を精査、調査しているうちに発見されるかもしれないが。

ただ一つだけ、あの『大規模過去文明遺跡』にあった宗教画……左側にはナズナが戦った『人造 神話級(ミトロジー・クラス) 兵器』である『蛇擬き』の姿が描かれており、その周りに 人種(ヒューマン) 、獣人種、 竜人種(ドラゴンニュート) 、エルフ種、ドワーフ種、魔人種らしき人物達が集まっていた。さらには一部、中心に黒髪の 人種(ヒューマン) らしき人物達が集まり、他種を指揮しているようにも見える。

彼らの反対側には巨大な乱杭歯の口を持つ異形の者が描かれ、モンスターがその口の中から吐き出され、『蛇擬き』+6種族+『ますたー(?)』と戦っている姿が描かれていたのだ。

僕はその絵を見て、ダガンが言った『過去に栄えた文明を持つ古代人など歯牙にも掛けず滅ぼせる神のような存在』――こそ『乱杭歯の口を持つ存在が神……邪神として描かれているのではないだろうか』と推測を立てた。

この絵を見ることが出来、さらには実際に『人造 神話級(ミトロジー・クラス) 兵器』と戦いそれが実際に存在したことを知ることが出来た。さらには僕らが持っているものよりも弱くはあるが多数のマジックアイテム・武具や研究資料を得ることもできた。

『大規模過去文明遺跡』に潜った価値は十分にあったのではないだろうか。

『大規模過去文明遺跡』に居るモンスターが、僕らと比べればたいして強くないというのもあるが。

人工海など珍しい景色もあり、妹ユメや妖精メイド達などを連れて観光がてら皆に見せてあげたいほどだ。

そして考える。

(『ますたー』的存在であるヒソミが言っていた『C』とは、あの乱杭歯の口を持つ邪神のことなのだろうか……?)

『ますたー』を超えているであろう存在が、どこかに存在している可能性が高い。

ヒソミが『ますたー』なのかは未だはっきりとした結論は出ていないが、彼はレベル5000という数値を持っていた。

そんな彼が警戒する存在、『C』。『C』は眷属や隷属者を持っており、僕らを見てヒソミは『C』の眷属なのではないか、と疑ってきた。さらには無自覚の例もある、と。

僕自身『C』などという存在について見たことも聞いたこともないのでその指摘はまったく当たらないのだが、ヒソミは『C』に対してかなりの警戒心を持っているようだった。

『大規模過去文明遺跡』にあった宗教画。

『ますたー』達と『人造神話級兵器』、6種の人々――彼らと対峙しモンスターを吐き出す邪神的存在が『C』なのではないかと言われれば、納得は出来る。

(だが、少し違うような気もする。何が違うとも言えないけれど、違和感というか――)

その違和感がどういうものかうまく説明はできない。だが何かが少しだけ引っかかるような気もする。

――そんなことを考えていると、僕の思考を遮るように執務室にノック音が広がる。

部屋の隅で待機している妖精メイドが、扉を小さく開き用件を聞く。

一度閉じてから僕に伺いを立ててきた。

「ナズナ様が面会をお求めになっていますが、如何致しましょうか?」

「ナズナが?」

「はい、ユメ様に関わる緊急の案件だとか」

「ユメの? 分かったすぐに通してくれ」

時間がある時、僕の実妹であるユメの護衛はナズナに任せている。ユメとナズナは波長が合うのか、ナズナは『奈落』最下層内部で僕を除けば一番ユメと仲が良い。

僕の返答に妖精メイドがすぐに動く。

扉を開くと、ナズナが困った様子で顔を出す。

彼女が切り出した。

「ご主人様、ちょっとお時間いいですか?」

「かまわないよ。ユメに問題が起きたって聞いたんだが、いったいなにがあったんだ?」

「妹様がずっとご主人様に会えなくて、泣き出しちゃったんです……。お忙しいのは知っていますが、少しでいいので会ってあげられませんか? その代わり、頑張ってあたいもご主人様のお仕事をもっとお手伝いして、時間を作る努力をしますから!」

ナズナが眉根を上げて、強敵に挑むような表情を作る。

戦闘ならともかく、ナズナに僕の仕事――冒険者として地上で情報収集、『奈落』最下層運営の事務仕事、メイ達への指示出しなどが出来るとは到底思えない。

別に彼女を軽んじているのではなく、向き不向きがあるというだけだ。

部屋の中にいるメイ、アオユキ、エリーも彼女の発言に微妙な顔をしていた。

僕は微苦笑を漏らしつつ、返答する。

「気遣ってくれてありがとう、ナズナ。確かに最近ずっとドワーフ問題にかかりっきりでユメと顔を合わせていなかったよ。ちょうど話し合いに一区切りがついたからこれから会いに行ってくるよ」

ユメを極秘裏に 人種(ヒューマン) 王国から引き取って以後、ドワーフ問題等があり忙しく、なかなか顔を出す機会がなかった。

寂しい思いをさせてしまったようだ。

僕の返答を聞いて、ナズナが嬉しそうに声をあげる。

「!? 本当、ご主人様! さすがご主人様だぜ! ならあたい、今すぐユメ様の所へ行って『ご主人様に会える』って伝えてくるね!」

ナズナは笑顔で部屋を出て行く。

廊下を走って行く音がここまで聞こえてきた。

向かう先はユメの自室だろう。

あまりの不作法にエリーが頭を抱えて、メイが目頭を押さえて、アオユキがパーカーで視線を切って静かに怒る。

僕は再び微苦笑を漏らし、皆に声をかけた。

「皆、落ち着いて。ナズナはユメを思って行動してくれているだけから、ここは僕に免じて許してやってくれないか」

「――主が仰るなら」

「ライト様のお言葉に従います。ですが、一度、ナズナには礼儀作法についてお話しをすべきだと進言いたします」

「わたくしもメイさんと同じ意見ですわ。ライト 神様(しんさま) の前であんなはしたないマネをするなんて……。本当にナズナさんは……ッ!」

3人の中で一番エリーが頭を抱えていた。

本当に2人は仲が良いな。

話題と空気を変えるため僕が提案する。

「折角だから、皆も一緒にユメの所へ行こうか。最近はずっと忙しかったし、皆でお茶でも飲んでのんびり過ごそう」

「では、すぐにお茶の準備を致します」とメイが告げる。

「にゃ!」と元気よくアオユキがネコ語で答える。

「ナズナさんはお茶会の後、お説教大会ですわね。逃がしませんわよ、ナズナさん……」とエリーが暗黒微笑で漏らす。

僕は執務室の席から立ち上がると、3人を連れてユメの下へと向かう。

今日だけは忙しかった日々を忘れて、のんびりお茶会を過ごすために。