軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

15話 海を渡る

メラの分体が次の目的地を発見した。

南方に上層で見たのと似た二重螺旋の建物が建っているらしい。

残りの分体にメラが合図を送り帰還をうながす。

無事に分体が合流し、メラと再統合したのを確認すると、海を渡る方法を考える。

(『無限ガチャ』カードで人が乗れる大きさの海棲生物を呼び出してもいいけれど……。一度呼び出すとカードには戻れないし、海を移動するのは少しだけ危険度が高いかな)

レベルの高い海棲生物を呼び出せば、海での戦闘において戦力になるという利点がある。

だが階層を移動する以上次の層には恐らく海はないだろうし、短い間のために『無限ガチャ』カードから海棲生物を召喚するのもどうか、という気がする。

(それなら、ドワーフ達の行動も大分読めるようになってきたし、糸で皆を結んでから空を行った方が速いしより安全かな)

僕はそう呟き、『無限ガチャカード』を取り出し、実行する。

(『SR、飛行』、 解放(リリース) !)

小声で『SR、飛行』を全員にかけた。

これで全員が24時間、空を飛行し続けることが出来るようになる。

小声で使用したのも、下手にドワーフ種に知られると、転移の時のように『マジックアイテムを売ってくれ、研究させてくれ』と迫られるためだ。

よって僕が魔術を使ったとして誤魔化す。

「これで意識すれば空を飛ぶことができます。慣れるまで難しいのと、皆さんの安全を考えてメイの『 魔力糸(マジック・ストリング) 』で結ばせて頂きますね。もし苦しかったり、きつかったりしたら彼女に言ってください」

「了解した、ライト殿」

ドワーフ王ダガンが代表して頷く。

僕達はともかく、ドワーフ種側は飛行初体験のため慣れておらず移動中海に落ちてしまうかもしれない。

そこでメイの『 魔力糸(マジック・ストリング) 』で命綱をつけてもらい移動することを思い付いた。

メイの負担は若干増えるが、これで彼らが海に落ちることも、海中から奇襲を受けても問題無く対応できるだろう。

「それでは行きましょうか。メラ、先頭を頼む」

「ケケケケケケケ! 了解しました、ご主人さま」

目的地を一番把握しているメラが先頭に立ち飛行する。

ドワーフ種達も初めての飛行に四苦八苦しながらも、よたよたと浮かび上がり、僕達へと続く。

100mほど上昇してから、目的地の南へと向かった。

最初こそ危なかったが、10分も飛ぶと、ドワーフ種達も大分慣れたのか若干遅い程度の飛行が出来るようになる。

最初はメイに引っ張られるように飛行していたため、その時に比べれば十分飛べているほうだろう。

(……しかし改めて空を飛んでみると、凄いな……小島も見えなくなって360度海が広がる景色って……)

360度、どこを見渡しても水平線しか見えず陸地がない。

下を見下ろすと、浅い海面にキラキラと星空のように輝く魚の群を発見する。恐らく小魚が集まって泳いでいるのだろう。

天井から降り注ぐ太陽光のような光を、海水が反射するせいで、世界の境界線が曖昧になるほど青色になる。

その光景は非常に美しいが、世界が溶けていくような感覚になり、本能的な恐れも同時に感じてしまう。

ふと、気になる。

(過去、ドワーフ種達に依頼されて遺跡に潜った冒険者達はこの海をどうやって越えたんだろう?)

一つ上の階層を塞ぐ鋼鉄製っぽい蓋が力尽くで破壊されていたことから、恐らくではあるが冒険者達はこの階層に到着はしていたはずだ。

にもかかわらずあの小島には冒険者達の遺体、痕跡、遺留品一つ無かったのを思い出す。

つまり、冒険者はこの人工海に到着してさらに先へと進んだということだ。

まさか準備よく船を用意したわけではないだろう?

もしくは荷物を纏めて泳いで移動したのか?

「ご主人様、アレ! アレを見て! 凄いよ!」

僕が過去冒険者の移動方法を考えていると、ナズナが元気よく声をかけてくる。

彼女が向ける指の先に、白く動く影があった。

「!?」

彼女が興奮するのも分かる。

青い海を切り裂き、巨大な体躯の魚が直立するように姿を現し海面を叩きつける。

目が左右3つずつ並び、頭から尾ひれまで約30mはあった。色は白く、頭を下にして尾を立てて潜る姿はとにかく迫力がある。

僕だけではなくメイ、メラ、スズ、ドワーフ種達も海を潜る巨大な魚に見入ってしまう。

大自然――いや、人工的に作られた世界だが、あまりに巨大で雄大な姿に研究馬鹿なドワーフ種でさえ黙り込んでいた。

僕も思わず美しい姿に目が離せなかった。

(『奈落』に居る皆やユメにも見せてあげたいな……)とつい考えてしまう。

それだけ心を打つ、感動的な光景だったが――巨大な魚が海中で体をくねらせ、再び海面に向かって顔を覗かせる。

同時に僕の背中を嫌な予感が走り抜けた。

反射的に 恩恵(ギフト) 『無限ガチャ』カードを取り出し、解放する。

ほぼ同時に巨大な白い魚の口から巨大な海水が突き刺さる勢いで発射される。

「『SSR 爆豪火炎』、 解放(リリース) !」

戦術級(タクティックス・クラス) の中でも上位に入る攻撃魔術だ。

爆発と火炎の併せ技で大抵の敵に効果がある有用なカードである。

その『SSR 爆豪火炎』を複数枚、時間差で使用し、極太海水槍を相殺した。

「さすがご主人様! 反応が早いぜ!」

「……ッ」

『スミマセン、本来ナラおいラ達ガ対応スルベキデシタノニ、ト』

ナズナが手放しで褒めてきて、スズ&ロックが謝罪してくる。

僕は『気にする必要はないよ』と言うように軽く手を振りつつ、視線を海へと向け続けた。

「敵意を感じたからまさかとは思ったけど、あの巨大な魚も上の階層で襲ってきたストーンゴーレムのように侵入者を排除するモンスターなのか……」

「――名称はシロナガスオオクジラ、レベル4000ですね」

メイが鑑定を使い補足説明をしてくれる。

レベル4000ということは、約3年前『奈落』で戦ったヒドラ以下、『白の騎士団』団長ハーディーと同等以上といったところか。

まさかこんな巨大な魚まで作り出し侵入者迎撃をさせるとは、過去文明人はどれだけの技術力があったのだろう。

そんな過去文明人はいったいどんな理由で滅んだのだろうか?

『オオオオオォォォォォオオオォォォォォッ!』

腹に響くような雄叫びを上げながら、シロナガスオオクジラが再び海中深くへと沈む。

このまま撤退してくれればありがたいのだが……。

やはりそう簡単にはいかないようだ。

「来るぞ! メイ、ダガン達の護衛を頼む!」

「畏まりました」

メイに指示を飛ばすと同時に、シロナガスオオクジラの背中が海中から現れると、無数の穴が空いており、細かい海水の槍を放出する。

口から放つ極太の槍に比べれば威力は低い。

しかし数が多く回避し辛い攻撃だ。

「……ッ!」

スズがすぐさまロックを構えて魔弾を発射!

無数の魔弾が迎撃するが、全て撃ち落とすのは難しい。

僕やナズナ、メラも手伝い迎撃した。

メイが『 魔力糸(マジック・ストリング) 』でダガン達を防御する。

全ての攻撃を防がれたが、シロナガスオオクジラは、『オオオオオォォォォォオオオォォォォォッ!』と再び雄叫びを上げ、絶対に逃がさないと主張したのだった。