軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

08.善人、更に足手まといを倍プッシュ

シルバームーン王国から遠く離れた所。

帝国を挟んで、大陸の反対側に位置するイチチ山。

私はその「山」と戦っていた。

空に飛んでいる私に、山の一部が変形して見える「腕」がプレッシャーとともに殴り掛かってきた。

賢者の剣を構える、真っ向から迎え撃つ。

鼓膜が破れそうな爆音が轟き、衝撃波が空を ゆがめた(、、、、) 。

「さすがペインドラゴン……『山食い』の異名は伊達じゃないね」

感心する私。

ペインドラゴン、それは賢者の剣から聞き出した情報の、目の前にいる敵の名前だ。

元の姿は人間のサイズくらいの大蛇だが、その体はものすごく伸縮性があって、伸びて伸びて伸びまくった結果、山を一つ丸呑み出来るくらいになる。

そうして山を食って、数百年じっとしてそれを消化するという生き物だ。

その皮膚が今は欲しい。

ペインドラゴンが更に攻撃をしかけてきた。

山に見える地面――つまり皮膚がボコボコと穴を開けて、そこから人よりも大きな毒液の玉が次々と打ち込まれて来た。

賢者の剣で防ぐ、打ち払う。

「うわっ」

賢者の剣はヒヒイロカネ製だからびくともしなかったが、打ち払った毒液が一滴だけ体にかかった。

するとみるみるうちに服が溶かされ、一秒もしないうちに毒が広がって、服の半分が溶かされた。

私はサッと服を脱ぎ捨てた、素材袋から即座に新しい服を作って着た。

すごい猛毒だ、触れればただじゃ済まないだろう。

魔力を高める、対物理障壁を強めに張る。

そうしながら賢者の剣を構えて、山そのものになったペインドラゴンと戦った。

更に山が変形して伸びて、腕のように殴ってきた。

勢いはさっきのよりちょっと弱い、これならいける。

真っ向から打ち合わなかった。

賢者の剣で受けて、刀身を斜めにして受け流しつつ、するっと 懐に入る(、、、、) 。

一閃!

賢者の剣を真横に一文字、直径二十メートルくらいにもなる 腕(、) を斬り落とした。

斬られた腕はみるみるうちにしぼんだ。

土と岩と木の根っこを吐き出して、それまでの大きさがまるで嘘かのように、人の指くらいのサイズの皮になった。

ペインドラゴンの本体、ものすごく伸びる皮膚。

これこそが私がほっしているもの、ここに来た目的。

「もうちょっといるね」

ペインドラゴンの伸びる皮膚を素材袋にしまって、再び賢者の剣を構えて、山と対峙した。

霊地フラジャイル、そこに入っていく荷馬車を遠くから眺めていた。

「ご主人様」

私のちょっと斜め後ろから声をかけてきたのはメイドのエリザ。

皇帝でもある彼女は、メイドとして振る舞いつつ、疑問に思ったことを聞いてきた。

「あれは何ですか? ご主人様が夜なべしてまで作った物ですよね」

「薬だよ、傷薬」

「傷薬?」

首をかしげるエリザ。

「そう、傷薬。それを防御の霊地側じゃなくて、攻めてる『反乱軍』側にも送った」

「毒なんですね」

「ううん、ちゃんと傷薬、よく効くよ」

「はあ……」

首をかしげるエリザ。

なぜ私が両軍によく効く傷薬を送ったのか理解できないって顔だ。

そんな彼女に説明する事にした。

「ドロシーに探ってもらった結果、僕の催眠魔法がよく効いてね、両軍はそろって負傷者を多く出している、それもほとんどが軽傷から重傷の間みたい」

「それは……大変ですね」

エリザは眉をひそめた。

皇帝エリザはある程度軍事的な判断が出来るように教育されてきて、本人も勉強をしてきた。

「そ、軍隊において一番やっかいなのが軽傷と重傷の間のひとだ。軽傷なら手当てしてそのまま戦わせればいいし、重傷者は場合によっては切り捨てられる。悲しいけどね」

「治せる人から治す、そういう取捨選択が必要な時もあるって聞いた事がある」

私は頷く。

「軽傷と重傷の間だとね。切り捨てる訳にもいかないし、かといって治そうとしたら時間も掛かるし治すための人手もいる」

「それで加速度的に戦力が低下する――のは分かりますけど、だったらどうして薬を差し入れしたの? しかもよく効くものを」

「良薬口に苦し」

「え?」

「あれはすごくよく効くけど、すごく痛みを増幅するんだ。エリザはすりむいた時、薬を塗ってしみた経験はない?」

「あります」

「それの100倍……ううん、一万倍くらい痛みが強くなる薬」

「うへえ……」

エリザはものすごくげんなりした。

想像するだに恐ろしい薬だ、作った私もちょっと身震いした。

「そこまで痛いとまあ暴れるね、そして暴れたら――」

「そっか! 助ける人とか治す人とかもケガする」

「そういうこと」

にこりと微笑む私。

両方にあの薬を送った、王国の民が自発的な支援――というていで。

痛みがまして負傷者が暴れるが、でもよく効く薬だから使わざるを得ないだろう。

これで、更に両方の戦力が下がる。

「さすがご主人様。一手で詰ませるなんてすごい」

エリザはものすごく感心していた。

普段よりも何倍もって感じで、本気で感心してるって顔をした。

多分うまくいくだろう。

さあ、仕上げだ。