軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第97話 良い機会だから

さて、金持ちの家が迷路の様に並ぶ町を抜け、馬鹿みたいな大きさの城に到着した。

僕は既に、

「こりゃ…町も迷路みたいだったけど、お城の中も地図かなんかをもらわないと迷子になりそう…」

と、この城を含む町全体からの『どうだ!』みたいな無言の威圧感にやられて、

『これはカインお坊っちゃまが王様になりたいから反乱軍に加わってくれって言われてもパスだな…』

と、道中で勝手にある種の忠誠を誓ったカインお坊っちゃまを勝手に裏切る決定をした僕は、

『代わりに魔法師専用のゴーレムとか我が家で設計するか…』

など代替え案を出しながら、城の前の広い庭にて、

「騎士団の方々とゴーレムはあちらで、皆様はこちらへどうぞ…」

などと、テキパキと動くお城勤めのエリート執事さんやメイドさんの案内により、お城の中をグルグルと進み、

「こちらのお部屋をお使い下さい」

と、少し眺めの良い客間に通されたのであった。

僕とテイカーさんとバルディオさんの三人用の部屋らしいが、三人共に、

「広すぎて落ち着かない…」

という感想の部屋である。

しかも、この部屋には担当のメイドさんまで付いてくれており、彼女は、

「旅の疲れを取って頂けます様に、お風呂が準備してあります…その後に夕方まで予定は御座いませんのでどうかごゆっくりと」

などと言ってくれているので、僕たちは、

「では…お風呂に…行きますか…」

と、広い部屋の居心地の悪さに負けて三人でお風呂へと案内されたのである。

しかも、案内された男三人というあまり嬉しくない入浴シーンの現場としては、

『どこの銭湯を貸しきりました?』

みたいな広いお風呂場であり、メイドさんがいうには、これでも城の中では平民用の一番小さい風呂場だというので嫌になってくる。

『多分、貴族用の風呂に入っているであろうカインお坊っちゃまは、もっと凄い湯船で、体を洗う専属スタッフとかいるとかしか思えないな…』

などと、貴族風呂の予想をしながら僕たちが入ったお風呂は、流石は錬金術が盛んなニルバ王国だけあって石鹸なども、

「なんの素材を配合したか知らないけど、泡立ちが凄いな…汚れ落ちはもう一つだけど…」

と、平民の我が家では見たこともない泡立ちと、風呂場中にたちこめる石鹸とは思えない強い香りに三人とも、

「これは…とりあえず高そう…」

と感じて、まだ国王陛下ご本人とは出会ってはいないが、

『こりゃ勝てないな…』

と、既に一人の人間として完全なる敗北を悟らされるのであった。

その後、再び部屋に戻った僕たちは、

『いつまでも金持ちの暮らしにビビってる訳にはいかない!』

と、三人で作戦会議を開き、

「この国の最高水準の暮らしを体験してウチの商売に繋げるチャンスにしよう!」

と、いつまでも高値で販売できる物ではないゴーレムコアからゆっくりと魔力供給魔道具へとシフトしているとはいえ、それでは部門が限られてしまう。

未だに戦争などから完全に復帰出来ていないカサールの新町の住民の為に、参入出来そうな新事業を模索した結果、僕は、

「さっきのお風呂場の貴族用の石鹸なんだけど、香りは凄かったけど、もっと汚れ落ちが良くて香りも押さえ気味にした方が一般受けしそうだよね…カサールの町はライト兄さんが作った魔道具の風呂沸かし棒の産地なんだし、お風呂繋がりでウチも平民向けに石鹸を作ってみない?」

と、贅沢なもので『自宅で風呂に入れる』というだけで満足していたのだが、最近少し石鹸などのクオリティーに不満のあった為に提案してみる。

その提案に興味を持ったテイカーさんに、僕は、

「お城での用事が済んだら、貴族用のお店で石鹸を何種類か購入して、解る範囲で作っている工房もチェックしてくれる?」

と指示を出すとテイカーさんは、商売人の顔になり、

「国の西側近くに工房が無ければカサールで西側の町のシェアを独占し、競合が居れば値段や品質に拘った商品で勝負するのですね…」

と、僕の思考を理解してくれ、バルディオさんは、

「では、主殿…」

と、自分も何かしたくてワクワクしていたので、

「バルディオさんもこの後のお城での生活で、便利だな…とか、ウチでも出来そうだな…って思う物を探しておいてね」

と頼むと、バルディオさんはニコリと笑い、

「お任せあれ!」

と楽しそうにしていた。

そうと決まると広いだけで居心地の悪かった部屋も探索対象のフィールドとなり、メイドさんが気を遣って夕食までの繋ぎで用意してくれたお茶やお茶菓子なども、

「このお茶はメリーさんの煎れてくれるお茶にも負けませんね旦那様…茶葉の銘柄を聞いてメリーさんのお土産にいたしませんか?」

と、テイカーさんがメイドさんに茶葉の産地を聞いたり、バルディオさんが、

「お城という場所に萎縮しておりましたが、主殿…この焼き菓子であれば我が家で食べている物の方が好きかも知れません」

などと、案外グルメな一面を見せてくれ、

「焼き菓子か…良いかも知れないね…お菓子屋さん。 戦争で旦那さんを亡くした奥様達の勤め先にもなるし、子供達も喜ぶかもね」

などと、帰ってから立ち上げる新事業なんかを相談して過ごしたのであった。

そして、夕食時…我々三人は、お城のシェフが作った料理を食べた瞬間に、

「ウチの料理の方がちょっぴり美味しいかも…」

と確信し、その後、部屋に戻った時にテイカーさんは、

「旦那様…前から不思議でしたが、我が家でのレシピはリント王国の物でしょうか…」

と聞いてくる。

するとバルディオさんが、

「若い頃にリント王国にも行った事が有りますが、こちらとあまり変わらないメニューでしたよ…いやむしろ質素と言うか…」

とテイカーさんに教えており、

『ならば、あのメニューの数々は…』

という話題になったので僕は、

「あ~、まぁ、良い機会だから…」

と、僕に前世の記憶が何となく有って、たまに『アレ食べたい!』と思い出した料理を何となくで再現していた事を伝えると、バルディオさんは、

「昔話の賢者様みたいですね…」

と驚くが、

「いや…なんとなく腑に落ちたというか…」

と変な納得をして、テイカーさんも、

「普通の旦那様では無いと思っておりましたが…あれが既に有るリント王国のレシピでないとすると、レシピだけで食べていけますね…」

と呆れながら自分用のマジックバックから紙とペンを取り出し、

「バルディオさん、カサールの家で食べた珍しい料理を思い出しましょう」

と二人で何やら書き出しはじめる。

そして、たまに僕に、

「旦那様、あの黄色くて少しスパイスの効いたスープは?」

などと詳細を訪ね、僕が、

「黄色くてスパイス…あぁ、スープカレーもどきか…あれは中々美味しかったよね。 でも本当は小麦粉でとろみをつけて米にかけるカレーが食べたかったんだけどね…」

などと記憶にある味を思い出しながら説明すると、テイカーさんが、

「スープカレーもどき…という名前で?」

と聞くので、僕は、

「いやいや、『もどき』は要らないよ…でも、まだ改良したりしないと『スープカレー』ですって言えないからね…」

と伝えると、バルディオさんは、

「アレでまだ未完成なのですか!」

と驚き、テイカーさんは、

「帰りにスパイスも買い漁りますのでレシピを完成させましょう」

と、どうやらカレー味がお気に入りの様で、僕も、

「なら、探したい穀物が有るんだけど…」

おねだりするとテイカーさんは、

「むしろ旦那様のレシピの完成に必要であれば農家ごと買い占めますから…」

と、商人としてのセンサーが何かをキャッチしているのか、引くほどバキバキの眼でこちらを見るのであった。