軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第67話 治ったし直った

バルディオさんとイデアさんの二人が現在凄い事になっている。

カルセルの町にてリモート事情聴取の際に、王都に居るエルバ師匠宛に

「実は、怪我をして義足の方と片目を失明した仲間が増えたので、エクストラポーションを二本作って欲しいと伝言を…」

とお願いすると、

「ゴーレムコアの修復を教えてくれるのなら費用などはニルバ王国が持つので…」

という交換条件を提示されたので、奴隷の皆さんの生活必需品もまだ買いそろえて無い時だった為に、

『お金が向こう持ちなら、ゴーレムコアの修復なんて気合いで誰でも出来るだろうし…』

と、その条件を飲んで、我が家の傭兵親子は欠損部位さえも直すエクストラポーションを飲む流れとなったのである。

エクストラポーションは材料を集めるだけでも大変で、1本の値段もビックリする価格なのだが、結果として僕は、

『あの時、死ぬ気でゴーレムコアを直せば…と、一世一代の覚悟をしてお願いして良かった。 費用も国持ちだったし、あの親子の笑顔はプライスレスだよ…』

などと満足していた。

何より失くした体の一部がニョキニョキと生えて戻るシーンを見れたことは、ある意味一番転生した事を実感出来た経験だったかも知れない。

そんな訳で、身体が治りフルパワーが出せる様になった親子が、

「主殿、少し鈍った身体を鍛え、全力を出す感覚を思い出したいので…」

と、冬場だというのに数日間のカサール周辺狩りの旅に魔物探索役のリーグさんと三人で出かけたのである。

『冬場は獲物が減るし、下手をすると冬眠の必要ない強敵とも数少ない手頃な獲物を巡ってかち合う可能性があるが…』

という僕の心配を他所に、現在我が家の庭には首が切り離されたり、脳天から矢を生やして絶命したレッドベアーやスタンプボアと言った周辺の森の主的な魔物を筆頭にゴロゴロと獲物達が幌馬車から降ろされている最中である。

『もう、あの二人は傭兵として復帰できるし奴隷から解放して…』

などと考えていたのであるが、バルディオさんは、

「イデアよ、これならば主殿の為に全力が出せるな」

と、娘のイデアさんに笑いかけ、

「はい、足手まといにならぬ様にまだまだ努力が必要ですが、主殿に生涯お仕え出来る自信がつきました」

などと、奴隷から解放してもウチの専属傭兵として就職してくれるらしいのは大変有難いとしか言い様がない。

しかし、完全復活した親子という明るいニュースに隠れて、ひとつ我が家には悩みの種が…それは現在、我が家のリビングでは、王都から来た修復師の中でもエリート中のエリートであるラベル先生が、

「ふんぬぅぅうぅあぁ~、な~、お~、れぇぇ!」

と、僕からの、

『ゴーレムコアは気合いで直せました…』

というアドバイス通りに朝から真っ赤な顔で壊れたゴーレムコアを握りしめて叫んでいるのであるが、ウンともスンとも…どうやら全く手応えが無い様子なのである。

『少し子供達が怯えているので明日からは別の部屋でやろうかな…』

と、リビングでナニかが出ちゃいそうな程に踏ん張っているエリート修復師のラベル先生に、

「どうです、一旦休憩を挟みませんか?」

と声をかけた僕であったが、ラベル先生的にもヤメ時を探していたのか、

「ふー、ジョン殿…これは違う角度からのアプローチが必要かと…」

などと、

『気合いではどうにもならん!』

という結論を出したのだと思われ、メリーさんの煎れてくれたお茶を飲んでホッコリしたラベル先生は、

「ジョン殿はゴーレムコアを直す為にどの様なイメージを…アプローチ的にはリント王国式でしょうか?」

などと、普通の修復師には解ると思われる専門的な質問をされるのであるが、

「申し訳ない…修復師になる為の専門的な授業を受ける前に学校を…」

と僕が告げると、ラベル先生はハッとして、

「そうでしたな…申し訳ない…」

と恐縮してしまったので、そこからは、

『ラベル先生の質問に答えれる様に先ずは僕が修復ギフトについて学ぼう』

という事にして、この冬の間に【冬限定、集中修復師講座】を僕がラベル先生から受ける事になった。

さて、基本として修復ギフトの唯一の恩恵であるリペアの魔法であるが、使用するのに【魔力操作】、【魔力量】、【対象となる物体への知識】という3つの要素が必要となるらしく、魔力量がある者を善しとしたリント王国の修復師達は魔力依存で、

『リペア魔法のマジカル要素を活性化させて水魔法が無から魔力で水を生み出す様に、壊れた部分に必要な素材を産み出せるまで魔力をブチ込めば…』

と、乱暴にいうとそんな考え方である一方で、ニルバ王国式は、

『物質を生み出す魔力は極力使わずに、同等の物質を用意してから壊れた箇所のみに繊細な魔力操作で、用意した素材に応じた修復作業を行う』

といった、直す対象の素材や構造を熟知した上で繊細な魔力操作により、直すという事に対して魔力任せではなく、少ない魔力を上手に使った繊細な技術を必要とするらしく、つまり僕のやり方は、

『引く程にリント王国式』

という事が解ったのである。

この事からラベル先生は、

「ジョン殿は簡単な修復ならば何をどれぐらい出来ますでしょうか?」

と僕の魔力量について聞くので、

「裂けただけの衣類なら派手に裂けた物であっても、それこそ眠たくなるまでに今なら40~50ぐらいなら多分直せますよ」

と僕が答えると、ラベル先生は顎が外れる勢いで唖然として、

「その量を直すジョン殿が1個で魔力が失くなりそうになるゴーレムコアの修復が我輩に出来るだろうか…」

と、あからさまに元気がなくなるのを見て僕は、

「では、必要な魔力を少しでも減らせる様にゴーレムコアの事を教えますね…丁度僕の兄弟子のライトさんって人が記憶ギフトでゴーレムコアの研究をしていたバルザックさんという錬金術師さんの研究資料を隅々まで覚えていると思いますので…」

と、焦りながら近くに居たイデアさんに、

「悪いけどライト兄さんを錬金工房から呼んで来てくれますか?」

とお願いしたのであった。

そこから数日は、ラベル先生がライト兄さんの生徒となりゴーレムコアの勉強を続け、

『もう、ゴーレムマスターぐらいゴーレムコアの事は解った!』

となった為に試しに僕のマジックバックに入っている壊れたゴーレムコアの中でも一番軽微な破損の物をラベル先生に渡して、

「ささっ、ラベル先生、コイツに一発やっちゃって下さい」

とリペアの魔法をお願いする。

相変わらず何かが漏れ出しそうな程に、

「ぬあぁぁぁっ、りぃ~、ぺぇぇ、あぁぁぁ~!」

と、引くほどの気合いは入っていたが、なんと講習会の成果が実りラベル先生は見事にゴーレムコアを修復出来たのであった。

しかし、その代償として完全に魔力を持って行かれ、喜ぶ暇さえ与えられずにバタンと気を失い、今はメリーさんに介抱されているというオチである。

一瞬我が家の誰もが、

『力み過ぎて虹の橋を渡ったのか?!』

と焦ったが、白目気味でも満足そうにムニャムニャ言っているラベル先生を見て、

『寝てるだけか…』

と安堵したのだった。

安心して力が抜けた僕は、メリーさんに介抱されて幸せにそうにスヤスヤ眠っているラベル先生を眺め、

「ゴーレムコアの修復は出来たけど、国一番の修復師がコレでは…魔力不足って、どうにかならないかなぁ…」

と呟く僕のとなりでは、ライト兄さんが同じように、

「はぁ~、ゴーレムコアの説明も終わったからな…」

と、凄く残念そうにタメ息をついているライト兄さんの視線の先を僕は、

『何処を見てるんだ? ラベル先生には向かっていないけど…』

と、不思議がって目で追うとイデアさんを見つめているのに気がついたのである。

『ナニよ、それなら早くそう言ってよ! タメ息つく程にイデアさんと逢える口実が無くなるのが残念でしたか?!』

と、そこらの十代とは違い人生2周目の僕はこの瞬間にピンと来てしまい、イデアさんを見つめる彼に、

「ライト兄さん、魔石から魔道具に魔力は供給できますよね…」

と聞くと、ライト兄さんは面倒臭そうに、

「当たり前…ジョンだって錬金術師としての勉強をしたんだろ?」

と、目線を嫌々僕に戻して答えるので、僕は、

「では、ゴーレムコアに魔力を供給したみたいに人に魔力を供給出来ませんか?」

と聞くと、ライト兄さんは、

「う~ん…」

と暫く唸りながら、頭の中にある膨大な資料を引っ張り出して、

「他人の魔力で発動させる契約印や奴隷紋なんて奴もあるし…複数の術者で協力して発動したという言い伝えのある大魔法とかも有るからなぁ…」

と言っていたので、僕は、

「ではライト兄さん…大変申し訳ありませんが暫く我が家専属で新たに作る魔力供給魔道具について知恵を貸してくれませんか?」

と聞くと、ライト兄さんは少し嬉しそうな顔で、

「まぁ、ジョンがどうしてもって言うのなら…」

と強がるので僕は、

「はい、どうしてもです。 毎日イデアさんを迎えに行かせますから寝坊しないでくださいね」

とお願いすると、ライト兄さんはキラキラした瞳で僕に、

「ありがとう…」

と素で感謝してしまい、咄嗟に、

「うん、これは錬金術師としてやりがいの有る研究だ…」

と、取って付けた様な理由をコネて、自分を落ち着かせようと優雅にお茶を飲み始めていたので、思わず僕は、

「イデアさんは、美人さんだし子供達にも優しいからオススメですよ」

とライト兄さんに言うと、彼は盛大にメリーさんご自慢のお茶を吹き出してしまったのであった。