軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第66話 冬の前に

実りの秋とはいえ、新築の我が家には冬の蓄えもなくこれから冬に向けての準備をしなければならず、我が家の皆さんはバタバタと忙しく働いている。

しかし、ありがたい事というか色々あってカルセルにて大人達が我が家のメンバーとして加わってくれたお陰で、

『あぁ、冬の保存食ってそうやって作るんだ…』

と、前世は便利な世界であり、今世は貧乏ながらも貴族の息子で使用人達が冬の支度をしてくれていた為に、追放されてから昨年はカサール子爵様のお家に間借りしてなんとかなったので『冬越し』の知識は、なんとなく知っているが実践するのは初めてだった僕は、みんなの助けで今年の冬に我が家にて飢え死にする事はなさそうである。

それに先日ベルとリーグさんと共に、

「せっかくの新装備だから…」

と、冬場の保存用の肉を求めて狩りに向かおうとすると、傭兵親子のバルディオさんとイデアさんの二人も、

「テイカーさんの買い出しも暫く有りませんし…」

と、護衛任務もないらしく荷馬車担当として狩りについて来てくれ、五人パーティーにて少し町から離れたお肉狙いのライバルの少ない森へと狩りに行ったのである。

しかし、今までも何度か狩りをしたことはあるが、

『狩りってこんなに簡単だっけ?』

と思える程に、リーグさんの魔物の気配が声として聞こえる能力と、彼の新たな相棒であるカラス魔物のガーが自由に空を飛び回り獲物を探し、

『えっ、確か荷馬車担当では?』

と感じる程に、元傭兵親子の能力が素晴らしいのだ。

片目となり【的中】ギフトなる遠距離攻撃の精度を上げる能力が十分に発動しないと言っていたイデアさんだが、弓の腕は一流で、リーグさんが見つけた獲物を遠く離れた場所からバッタバッタと倒してしまう。

『これで、ギフトが完全に使えたら…いや、今でも十分に傭兵でも通用しそう…』

と、僕の素人目には感じるのであるが、一流の傭兵としての働きが出来ない傭兵は生き残れない世界らしく、片足が義足になり【豪腕】という腕の力を一時的に強化できるギフトであるバルディオさんも、

「いざという時に全力で戦えない傭兵なんて雇いたい奴は居ませんし、居たとしても数合わせの捨て駒に使われるのがオチですから…」

と、フルパワーを出せば義足が耐えれなくなるらしく本気を出せない自分をもどかしく感じているらしい。

だが、全力では無いと言いながらも彼は義足の為に機動力は無いがダッシュボアという比較的小型の猪魔物が群れで突進して来るのを一歩も動かず迎え討ち、フルパワーを出さずともツルハシとベルが愛用していたメイスの二刀流にて、秋に舞い散る木の葉の様にダッシュボアを殴り飛ばし絶命させてしまっていたのだった。

『これで義足でなかったらどんなに凄いの?』

と、少し引いてしまう程の獲物を荷馬車に乗せながら僕は、リーグさんに、

「わざわざ人目が無い森に来たけどバーストライフルとかを使う暇もなかったね…」

と、バルディオさん親子の凄さを見学しただけとなり僕としては些か不完全燃焼気味であった。

だけどリーグさんは、

「いえ、ガーとの連携と魔合金の装備での気配消し性能のチェックも出来ましたし…」

と、新装備のチェックと相棒との連携の仕上がりに満足しているらしく、ベルも、

「前より早く走れた…ダッシュボアなら追い付いて斬れるよ」

と、新装備の性能に満足なようでニコニコなのである。

「えっ、僕だけ新装備の意味が…」

と足手まといに成らない為の硬くて丈夫な装備を身に纏っても役に立っていない現実を知り、僕は家までの帰り道で俯く結果になっていた。

とまぁ、そんな事があったその獲物達も皆で解体し、肉はお料理上手なミントさんの手により我が家の冬の蓄えとなり、魔石はランプなどの魔道具の為にストックされ、そして、皮も革職人の奥さんだった多分アライグマ系の獣人のリザさんが、上手に鞣し革などに加工してくれ、裁縫上手のマチさんが

「昔はウチの旦那の装備も手直ししてたからね…」

と、革の鞄などは勿論、

「冒険者になりたい!」

と言っていたアル君、バート君、デニス君の三人のためにダッシュボア皮の胸当てなどもこの冬の手仕事として頑張ってくれるらしい。

装備が完成する春頃には男の子チームの三人は狩りに向かえる様に冒険者登録をし、今はFランク冒険者として、カサールの町の溝掃除や作物の収穫といったお手伝いクエストにて冒険者ランクを上げつつ、

「お金を稼いで主殿に借金を返すんだ!」

と張り切っているのであるが、僕としては、

「借金の事は気にしなくて良いから、貯めたお金で武器を買ったり…そうだ、春にはバラッドさんがキミーさんっていう奥さんと引っ越して来るって手紙が来たから、バラッドさんに武器を作ってもらえる様に無理しない程度に頑張って稼いで…」

と、三人には言っているのである。

しかし、どうやら三名の少年冒険者チームは自分を買い戻してから自分の人生をスタートさせるという目標らしく、

『目標を無くさせる訳には…』

という事もあり、僕から三人には、

『15歳の成人になるまではウチの子として頑張って、成人してから働いて稼いだ分から少しずつ返済』

という事で納得してもらい、一人立ちする15歳までの稼ぎは自分の為に使う事にしてもらったのである。

そして、女の子チームのララちゃんとターニャちゃんは、先日カサールの教会にて正式に命名し神に成長を祈るというお宮参りの様な儀式を受けた幼子チームの二歳の女の子のシルフちゃんと、一歳の男の子のジョイくんに、同じく一歳の女の子のエレナちゃんの三人の面倒を見る約束でお小遣いをあげている。

だけど女の子チームも、

「ベルちゃんが来年10歳になったら一緒に冒険者登録しようね」

などとベルと楽しそうに話していたので我が家は駆け出し冒険者だらけにならないか心配である。

「王都の学校に通っても良いんだよ」

と言ってはみたが、我が家でやっているお勉強で十分と子供チームの皆は判断しているらしく、ギフトを授かる前のベルがそこらの駆け出し冒険者より見事に狩りをこなすのを知って、

『あまり使えないギフトだと親に判断され売られた自分でも…』

などと五人とも子供ながらに考えたらしいのだ。

しかし、僕としては、アル君の【暗視】のギフトや、バート君の【投石】ギフトなんかも十分に役に立つと思うし、デニス君の【火魔法】なんて当たりのギフトだと思うが、魔力が少ないニルバ王国の平民のご家庭では、学校に行かせられないし、行かせた所で魔力が足りずにギフトを生かせられない為にハズレ扱いなのだそうだ。

そして、ララちゃんの【歌声】のギフトは酒場や芝居小屋では引く手数多な能力であり、ターニャちゃんの【体力】ギフトは汎用性の高いギフトの為に、

『このギフトだから親が金に目がくらんだ』

と、彼女たちは自らのギフトを売られた理由と考えているらしく、自分のギフトを好きになれていないそうで、全員、

『ギフトにも他人にも頼らずに生きる』

という目標があるのだそうだ。

しかし親に売られたという辛い体験をした子供たちに、

『諦めないで…』

などと無責任に励ます真似など出来る訳も無く、

『これは日にち薬しかないな…そのうち自分のギフトも含めて回りの人間も好きになれば…』

と、願うしか出来ない僕であった。

そして、そんな日々が過ぎ、風が冷たく感じてきた秋の終わりに一人のお爺ちゃんが我が家に到着したのである。

彼はニルバ王国からの指示で僕という免許もない野良修復師からゴーレムコアの修復方法を教えて貰うべく派遣された国お抱え修復師のラベル先生である。

いや、僕にゴーレムコアの修復を習うのに何故彼が【先生】かというと、ラベル先生はニルバ王国の学校の修復師クラスで、先生を長年勤めてきた修復ギフトのエキスパートだからである。

魔力の量も歴代の先生の中でもトップクラスのスーパー先生だと国からのお手紙にも書いてあり、そのスーパー先生である彼がこんな野良修復師に修復技術を習うなんてきっとプライドが傷ついたはずだろうと考えた僕が、

『ラベル先生と呼ぼう…』

決めたからである。

それに、僕はカルセルからずっと彼が到着するのを待っていたのだ…いや、正確には彼の到着ではなく、彼が王都に居るポーション錬金の名人であるエルバート師匠にリモート事情聴取のついでにおねだりしていたあるものを届けてくれるのを…という方が正しい。

という事で、ラベル先生を滞在時のお部屋を用意してある我が家へと招き、

「では、ラベル先生は長旅でお疲れでしょうから我が家自慢のお風呂にて、まず疲れを取って頂いて…」

と、メリーさんとリーグさんにおもてなし担当を任せると、僕はラベル先生が王都から持って来た手紙等の入った箱から、

「あった、あった♪」

と、ポーション保管箱を取り出して、

「バルディオさぁ~ん、イデアさぁ~ん、お薬の時間ですよぉ~!」

と、二人を呼び出したのであった。