軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第61話 大所帯

『はぁ~、正直これからどうしよう…』

と現在ガヤガヤと引き取った子供達が楽しそうにしているのを眺めながら自家用の幌馬車二台にてタンカランを目指している。

あの日、カルセルのご領主様に呼び出しを食らったお屋敷では、通信魔道具などで王都やカサールの町と連絡を取り合い【僕】という人物についての会議が開かれた。

流れとしては、カルセルのご領主様が、

「ゴーレムコアを手に入れたから王家に献上しますね…あっ、そうそう、ゴーレムコアを修復出来る野良修復師が居ました」

と王家サイドに通信魔道具で連絡をすると、

「その人材は誰だ?!」

との問い合わせが来て、

「ジョンっていう冒険者ですけど…あっ、冒険者ギルドマスターを呼んで、その冒険者の事を聞きますね」

という事で最初にピンチョスさんが呼び出され、僕の個人情報が駄々漏れた結果、

「カサールの冒険者なんだな!」

と判明しカサール子爵様にも通信魔道具にて王都から問い合わせが飛び、カサール子爵様から、

「えっ、その者なら王都に居る国家錬金術師のエルバート殿の弟子で新型ゴーレムの開発にも…」

などと報告が入り、王都では新型ゴーレムを国の為に作っている師匠や兄弟子の皆さんに、

「ジョンなる者はゴーレムコアの修復まで出来る高位の修復師なのか?」

との問い合わせが師匠達に行った結果、

「まぁ、魔道具なら直せたと思いますが…」

との返事を受けた王都の偉い方々は、どうやら益々僕という人間の謎が深まり、

「まだ、そちらの町に居るなら一度本人に会いたい」

とカルセルのご領主様に王都からの連絡が入り、お屋敷に呼び出されていたピンチョスさんが、

「確か、鍛冶師ギルドを退職するバラッド殿と一緒に町を出ると言っておりました」

と報告の結果として、ご領主様から、

「では、まだ町に居るならバラッドも一緒にジョンなる冒険者を…」

との指示で僕はドナドナされたそうで、ご領主様の周りに何台も並ぶ通信魔道具の前で、

『あぁ、リモートで事情聴取か…少しゴーレムコアで稼ぎ過ぎたかな…』

などと後悔していた僕に、次から次へと質問が飛び、正直に答えた結果として、僕という人間の追放前から現在までの流れがニルバ王国側に把握されてしまったのである。

そして、その後カサール子爵様は、

「なんで、そんな貴重な人材を黙っていた!」

と叱られたり、カルセルのご領主様まで、

「奴隷商人の不正を正すのに協力してもらい奴隷まで丸投げとは…」

と注意されたりと、少し気まずい展開の後に、王都からの通話で、

「カサールに修復師を派遣するからジョン殿からゴーレムコアの修復技術を伝授してくれぬか?」

との依頼があり、僕は、

「いや、家族が17人増えて大変なので…」

と断ろうとしたのであるが、奴隷の方々を押し付けた事を王都の偉いさんに注意されたカルセルのご領主様が、

「カサール子爵殿、確かジョン殿の屋敷をカサールに建てたのであろう? なら、金は私が払うので急ぎで増えた17名と王都からの修復師の住居を購入でも建設でも構わないから用意して欲しい」

と申し出て、王都から叱られたカサール子爵様も通信魔道具の向こうで、

「任せて下され、ジョン殿が戻られるまでに必ず」

などとやる気であった。

とまぁ、こういう経緯で僕は、一般通過追放者から出世してCランク冒険者としてベルの成長を楽しむだけののんびりライフという計画が見事に打ち砕かれ、奴隷を沢山所有し国からもマークされるという、初めましての方に僕の状況を説明するのも面倒な感じになってしまったのである。

しかも、このリモート事情聴取に強制参加していたバラッドさんまで、

『我、天啓を得たり!』

とばかりに、

「これはきっと運命なのですね…では私もカサールに移り住み彼の鍛冶師として…」

などと宣言してしまうというオマケつきで、現在タンカランにゴンザさんが作ってくれた装備を受け取りに向かっているのである。

そして、僕は旅の道中に7人いる大人の奴隷チームの方々から奴隷になってしまった話を面談を兼ねてきいた。

【元商人の男性、テイカーさん】

店の命運をかけた商品を運搬中に盗賊に奪われ借金から奴隷に、

【元大工の男性、ボンドさん】

準男爵家のリフォームを請け負うが、準男爵とやらが「気に入らないから金を払わない」と言い出し喧嘩となり、逮捕からの貴族の一方的な申し出が通り罰金刑まで負わされ、大工道具から何から質屋に入れても払えず破産して借金奴隷コースへ

【元農家の夫婦、旦那のノリスさん、奥さんのマイラさん】

獣人族の国で果樹園などを営んでいたが、小規模なスタンピードと呼ばれる魔物の群れの襲来により収穫前の木々がなぎ倒され、立て直そうと頑張ったが費用はかさみ、最終的には年貢すらも払えずに、成人して嫁いだ子供達を巻き込まない為に夫婦そろって借金奴隷へ、

【裁縫が得意なマチさん】

【料理上手なミントさん】

この2人は住んでいた町こそ違うが冒険者の旦那が依頼を受けた先で死亡し、旦那の依頼の失敗に対する罰金やらで全てを手放しても払いきれずに借金奴隷になった2人であり、同じ境遇から仲良しになったらしい、

【元皮職人の嫁だったリザさん】

この女性は奴隷の皆さんの中でもかなり可哀相な経緯であり、獣人族の国の1つで革細工工房を夫婦で営んでいたのだが、貴族からの依頼でその貴族が倒した魔物で毛皮のマントを作るように依頼されたのだが、その魔物が、なぶり殺され様に傷だらけな状態であり、旦那さんが、

「これでは縫いあとだらけのマントになりますが…」

と申し上げたところ、プライドが傷つけられたのか、【貴族に逆らった】と旦那さんをその場でその貴族に殺されて、旦那さんの葬儀も済まないうちにリザさんは身に覚えの無い借金を背負わされてしまったらしい。

『リザさんだけ微妙に気の毒さが高いな…』

と思ってしまうが、どう声をかけて良いか分からないが皆さん色々とある様である。

あと、気の毒な要素でもあるが、なんやかんやで買われた奴隷商人もあのヤンの野郎だった為に食事もろくな物ではなかったらしく、そんなにぜいたくではない現在の食生活でも、

「ご主人様の奴隷になれて良かったです」

とは言ってくれるのは有難い要素でもある。

そして、大人組の皆さんには僕の追放理由も伝え、

「あの奴隷商人に因縁があっただけで、僕は皆さんを奴隷だと思っていませんし、可能な限り奴隷を使っている奴と周りからも皆さんからも思われたくもないので、僕の家に勤めに来た使用人だと思って下さい」

とお願いし、

『違法奴隷商人の息子が奴隷商人でも始めたか?』

などと思われる事だけは避けたい事を伝えると、皆さんリーグさんの借金奴隷の後輩という事でリーグさんと同じく、僕の呼び方を、【ご主人様】ではなく、

「旦那様」

で統一してくれたのであるが、元傭兵の片足が義足のバルディオさんと犬耳で片目のイデアさんだけは、

「我々は戦争奴隷ですので…」

とよく分からないこだわりから、

「ご主人様」

と呼ぼうとするのだが、特にケモ耳チームからの【ご主人様】呼びはだけは、クソ親父の顔と行いがチラつき僕のハートにチクリと来るので、かなり頑固な2人に必死にお願いしてなんとか、

「主殿」

で我慢してもらえる様にお願いした。

そして次は5人の十代前半の子供組の面談にうつり、五人中、

【14歳のアル君】

【13歳のバート君】

【11歳のデニス君】

の3人の男の子チームまで、

「主殿!」

と、何故か僕を呼ぶようになっているので、訳を聞けば、

「旦那様より強そうだから…主殿って!」

となんとも男の子っぽい理由であった。

子供組の、

【11歳のララちゃん】

【10歳のターニャちゃん】

の女の子チームの様に、

「ジョンお兄ちゃん」

の方が僕としては有難いのだが、

『強そうか…男の子のセンスだよな…』

と、人生二周目で薄まったあの少年の頃の純粋な気持ちを懐かしむ僕が居たのである。

そして、僕は名前すら販売した客が決める為に正式な命名すらされていない三名の幼子を慣れない手つきながらも、

『わぁ、前世では嫁も来ない田舎の独身おじさんだったし、今世では一人っ子だったから子供とふれ合うの初めてかも…』

などと思いながら子育て経験のある皆さんのアドバイスを聞きつつ抱っこなどをしてあやすうちに、ニコリと微笑まれ、

「マ、マ…」

と意図的か、たまたまかママと言われたとたんに、

『ごめんよ…ママじゃないんだ…けど…あれ? もしかしたら母乳出るかも…』

とよく分からない感情と出るはずもない母乳まで溢れ出しそうになり、

『この子達の為なら頑張れる!』

という、よく分からない初めての気持ちまで芽生えたのであるが…

『ちょっと短期間に色々増えすぎじゃないでしょうか…今後の生活の予定と感情の整理が間に合いませんよ』

と、何処に訴えたら良いか分からない不安を抱えている僕であった。