軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第54話 攻略したのだが

何でも初めてはあるものであるが、一人で入ったボス部屋にて、はじめましてのロックリザードさんは、僕の思っていた3倍はロック感強めなトカゲさんだった。

『いや、高い料亭の庭石かよ…』

と、思える岩感しかない背中に、弱点と言われている腹はピタリと地面に密着させている。

手足も器用に隠せて、背中の固い皮膚で攻撃が多い日も安心でしっかりガードみたいな機能付きで、これはボス部屋でなく岩山あたりでバッタリ遭遇したらトカゲ魔物と気付かずに座りそうなぐらい丁度なベンチサイズの岩なのである。

『上のギルドカウンターで教えてもらっていたけど、打撃武器がオススメなの分かるぅ…』

などと思うが、僕にはリーグさんの様にツルハシでアイツの頭をカチ割るような腕力は無いので、

『ウォーターショットで柔らかくしてからのバーストショットとライフルで攻撃、怯んだら接近してランチャーを至近距離で、それでも駄目ならツルハシ…』

とボス部屋の外で散々イメージトレーニングをした流れをもう一度確認してから、

「ヨシっ!」

と気合いを入れ、ウォーターショットの魔道具の杖を握り攻撃を開始したのであった。

結果から言うと、

『案ずるより産むが易し』

と言った感じであり、

「大騒ぎする程ではなかったな…」

などと少し強がりを言いながら、ボス部屋のあちこちに逃げ回りながら次の武器へと持ち替える為に手放した大事な武器達の回収を優先し、

『ある意味ソロ討伐で良かった…ギャアギャアと騒いでしまったな…ボス部屋って防音設計だよね?』

などと、奇声をあげていた自分を恥ずかしく思いながら、リーグさんの時もベルの時も中の音が外まで聞こえたかという記憶を辿っていると、ボス部屋の扉が開き、

「お兄ちゃん終わったぁ?」

とベルの声が聞こえ、僕は、

「うん、終わったよ」

と何事も無かったかの様に涼しい顔で答える。

僕は最後の武器を回収しながら、

「さぁ、リーグさんも一緒に宝箱チェックをしましょう。 あっ、宝箱はベルが開けてごらん」

と二人に提案すると、リーグさんは僕の体に怪我が無いことにホッとし、ベルは、

「ボクが開けて良いの? やったぁ!」

と嬉しそうに走ってくる。

ちなみにベルのボス初回討伐ボーナスの宝箱は、このダンジョンでも一番人気のレアアイテムである【脚力、微上昇】の効果のある腕輪を引き当てたのであった。

前回の祝福の腕輪の様に、

「要らない…」

というかと思ったが、リーグさんから、

「移動速度や蹴りが気持ち上昇するらしいからベルちゃんにピッタリだな!」

と言われ、ベルも

『そうかな?』

と思ったらしく、試しに籠手を外して装着し、僕に、

「どう、お兄ちゃん…似合ってる?」

と嬉しそうに聞くベルに、

「おっ、可愛いな…ベルのイメージにピッタリだよ」

と、シンプルだけどキラリと光る金色の【跳ね鹿の腕輪】というマジックアイテムを褒めると更にベルはご機嫌になったのであった。

『という事で、さぁ見せてくれ…ベルのダンジョン運というヤツを!』

と、僕が出した初回ボス討伐の宝箱からもベルの運を借りてレアアイテムが出る事を期待していると、

「じゃ~ん!」

と言って宝箱を開けたベルのテンションが明らかに下がり、

『どうした?』

と不安になり僕も宝箱を覗き込むと、そこには他の階層で運良くドロップする宝箱のやや当たり枠で、ボスの宝箱から出る最低保障的アイテムの【傷・解毒・体力のポーション三種詰め合わせセット】が鎮座していたのであった。

『物欲を見透かされたか…』

と意地悪なダンジョン君からのプレゼントをポーション保管箱にしまい込み、

「さて、どうする…すぐに帰るか、それとも八階層と九階層で狩りをしてから帰るか…」

と気分を切り替える提案をすると、ベルは、

「もう八階層のアリさんが復活してるよね…金色の居るかな?」

とやる気十分な為に軽く殲滅してから、まだリポップしていないボス部屋を素通りして地上へと帰ったのであった。

地上で戦利品をチェックしてもらい、ギルド職員のお姉さんには、

「無傷のコアは無かったんですか…」

と残念がられ、支店長さんからは、

「ロックリザードの皮が二枚あるからソロ討伐も終わったんだね!」

と早速この日の定期馬車便の手紙にて、

【ゴーレムコアが久々に出ました】

という情報が解禁となり近々一攫千金が狙えるゴーレムコアガチャを回す為にロックマン君達にターゲットを絞った冒険者達が来る予定である。

ダンジョンとしては嬉しい予定だが、僕の本音は、

『そうなると僕がガチャをまわせるのは難しくなるかもな…』

悲しい予定でもある。

それから、今回の素材の買い取り手続き等を済ませて宿に戻ると三人で、

「今後どうしようか?」

という作戦会議を開いた。

見事にタンカランダンジョンを完全攻略をしたのだが、今後増える予定の冒険者達の目が有るとバーストシリーズは使えない…しかし、ゴンザさんの装備はまだまだ完成しない…

『これは困った…』

と考える僕であったが、既に十個ほど修復出来そうなゴーレムコアは手元にあり、

『一個でも騒ぎになるのに十個も同じ町で買い取りには出せないか…魔力の関係から1日に一個ペースで修復しても10日必要だし…』

ということで、明日もう一個だけタンカランダンジョンで無傷のゴーレムコアが手に入った事にして、そのお金を旅費にして、ゴンザさんの装備が仕上がるまで他の町で過ごそうという事になったのである。

その日のうちにゴンザさんに、

「ダンジョンのボスも倒せたので暫く他の町を巡ろうかと…」

と伝えると、

「そうか、こっちは仕上がるのに1ヶ月…いや、出来れば2ヶ月は欲しいからな…」

と、作業の手を止めて暫く考えた後に、

「おっ、そうじゃマーチンから南に半月程のカルセルって町はかなり大きくて、南の獣人族達の暮らす地域から珍しいスパイスやら、家畜市場やらと…まぁ、兎に角賑やかなところだから」

と、オススメされたのである。

この話を聞いたキミーさんが、

「カルセル…」

と何やら引っ掛かる反応をしているのを僕たちが気にしていると、ゴンザさんが、

「あぁ、アレの元旦那のバラッドってのが居るはずだから、気が向いたらワシらは元気だと伝えてくれ、まぁ、アイツも酒は苦手だからまだまだ元気だろう…」

などと言っていたのである。

そして、この会話の流れでキミーさんが50歳の時に結婚して二十数年連れ添い、別れてから三十年ほど経っている事を知った僕は、

『想像以上だった…』

と驚き、ベルは、軽く指を折りながら数を確かめ、

「キミーおばちゃんって…」

と、ナチュラルに失礼な事を言いそうだったのに気がついた僕とリーグさんが、

「ご結婚中はそのカルセルの町で?」

などと、二人で必死に話題を年齢から遠ざけたのであるが、キミーさんは、

「あの頃はワタシも若かった…いや、まだ若すぎたのよね…」

と遠い目をして結婚生活を振り返っていたのである。

『いや50歳で結婚の時点で…若いのか?』

と僕はツッコミそうになるが、300歳まで生きるドワーフ族であれば50歳はヒト族換算でいくと17前後…

『まぁ、若い…か…』

と微妙な気持ちになるが、キミーさんが100歳以上という点については何故か納得出来そうな自分がいた。

『まぁ、100歳でもヒト族換算では三十路女性ぐらいだもんな…見た目はオジサンだけど…』

と、失礼な事を考えつつも、

『ドワーフ族の時間感覚では他の種族と連れ添うのは大変そうだもんな…』

と、ドワーフ族の寿命の長さが羨ましいような、羨ましく無いような複雑な気持ちのまま翌日のダンジョン攻略に向かったのだった。

前の晩に魔力切れで気絶する様に眠っても良い状態でひび割れたゴーレムコアを一つだけ修復し、軽くダンジョンを流して、ボスのロックリザードも三人でサクッと撃破して、

『無傷のゴーレムコアが出たから飛んで帰ってきました!』

という体で冒険者ギルドのカウンターにて戦利品のチェックを受けると、職員のお姉さんが、

「支店長、これは風が吹いてますね!」

と喜び、支店長さんも、

「鉱石と低級ダンジョン最難関という売りだけで燻っていたが…今、納品依頼が熱いゴーレムコアが狙える低級ダンジョンなんてこの国にここだけだし、前回がまぐれで無いと今回の納品で印象づけられる!」

と小躍りをしているので、

『ごめんなさい…ちょっと内緒の裏事情はありますが…きっと今まで倒されなかっただけでロックマン君から無傷のゴーレムコアが出る可能性はありますよね…たぶん…』

と少し心は痛んだが、

『これも旅費の為…』

という事で、翌日納品の手続きに向かったマーチンの町にて冒険者ギルドマスターに、

「いや、有難いんだけど…こんなにすぐに次のを納品されたら国から報酬が出て補てんされる前に、立て替え金でこのギルドが傾いちまうよ…」

とブツブツと嫌みを言われたので、当面の旅費に大金貨一枚だけ貰い、後の九枚は作っただけであまり活用していなかった僕の商業ギルドの口座に国からの報酬が届いてから入金してもらう事にしたのであった。