軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第55話 大都市カルセル

目指すは、特に用事はないが、いろんな物が集まるというカルセルという町に乗り合い馬車を乗り継ぎながら観光も兼ねて僕たち三人は向かっている。

流石は大きな町へと向かう乗り合い馬車なだけはあり、毎回かなりギュウギュウで下手をすると、

「他の馬車にお願げぇしやす」

と満員で拒否される事もある。

『まぁ、大きな町に向かう乗り合い馬車は沢山あるからその日のうちには他の便が見つかるけど…』

とは思うが、三人で移動というのが微妙な所で、

「あと、一人か二人なら…」

という台詞で断られる為に、中継地となる街道が交差する村などで一泊する際に、ベルとリーグさんに、

「なんか、乗り合い馬車は窮屈だし、乗れない事も有るからタンカランに戻る時は馬車を買って移動しない?」

と提案すると、ベルは、

「屋根付きが良い!」

と、マーチンを出る時に乗った馬車が幌の無い荷馬車だった為に、運悪く降りだした雨にほぼ1日中濡れたのがかなりご不満だったらしく、食いぎみに希望を出し、リーグさんは、

「完全に心が通じる魔物…とまでは言いませんが気の合う魔物に馬車を引かせたいですな…」

と、いまだテイマーギフトにて相棒にする魔物を見つけられていない為に、生き物の居る生活に餓えているらしく、

「カサールに帰ったら自分がしっかり面倒を見ますので是非…」

と、懇願されてしまった。

『本当にお世話できる? お散歩も? お母さん手伝わないから自分でするのよ!』

という子犬を拾って来た子供にお母さんが聞くような事を言わずともリーグさんならどんな生き物でも上手に世話してくれるのは知っている。

それに、カルセルまで半月、現地で1ヶ月ぐらい過ごしてからタンカランに戻れば丁度ゴンザさんから完成した装備は受け取れるだろうし、そこからのんびりカサールに向かえば秋頃で、厩舎と魔物牧場付きの家も出来ているだろうから馬魔物を購入するには丁度のタイミングでもあるので、

「よし、買っちゃうか幌馬車と馬魔物!」

と決まったのである。

今の手持ちで買えるかは不安だが、カルセルに居る間にきっとゴーレムコアの残り分が振り込まれているはずであり、

『大金貨九枚…前世では900万ほど…高級馬車や名馬じゃなければ買えるだろう…』

などと考え窮屈な馬車に揺られながら到着したのがニルバ王国と南に広がる獣人族の小規模な国が点在するビスティア地方の国境の町でもあるカルセルである。

獣人族はその昔、沢山の国をまとめ上げた英雄の様な王さまが居たのであるが、ヒト族の国であるリント王国と人種間の問題による大きな戦争を開始したのだそうだ。

その頃のリント王国はこのニルバ王国の内部までの土地を持っていたのをその戦争で今の国境線までの土地を奪われて大敗、

『このまま攻め込まれたら…』

と、リント王国の誰もが不安になっていた時に、ビスティア王国の英雄王は病で亡くなってしまう。

すると、あっという間にビスティア王国は内部分裂を起こして、一部の獣人族は種族戦争に嫌気がさしたヒト族と手を取るという選択をして今のニルバ王国を作り、またあるものは獣人族の中でも細かい種族毎の小さな国をつくった末に、ヒト族を討ち滅ぼす勢いがあった大国ビスティアは滅亡し、今は地図のみにビスティア地方という名前を残すのみとなっている。

という事で、リント王国で獣人族を蔑む風潮がある様に、獣人族の国々にはヒト族を下に見るという文化があるのだが、獣人族との混血が進んだニルバ王国だけは『親戚』みたいな立ち位置となり、現在も仲良く貿易などをしているらしく、リント王国ではまず流通しない大陸の南からの品々がこのカルセルには集まっているのである。

町の入り口で入場料を払い壁の中に入ると、広い土地には異国の雰囲気を感じるテントが並び、様々な屋台が通りに建ち並んでいる。

「わぁ、すごいね」

と、ベルは勿論、僕やリーグさんも初めてとなるカルセルの町にビックリしているのだが、実は本来のカルセルの町はこのエリアの先にある二枚目の壁の中にあるそうで、ここはカルセルの外町と呼ばれる市場的なエリアらしく、大概の物は探せば見つかると言われているかなりゴチャゴチャとしているが活気だけは異様にある場所である。

しかし、野宿やテントを張る事もできるこの外町エリアに宿屋だけはなく、ギルドの建物も二枚目の壁の向こうの中町にある為に安いとはいえ、二連続で入場料を取られるのは少し癪である。

しかもベルに、

「お兄ちゃんだけズル~い…」

と言われてしまっているのは、ゴーレムコアの納品によりCランク冒険者となった僕だけ町の入場料の類いが半額になり、

『ごめんね…三人の中で一番弱いのに…』

と、年齢的にまだ冒険者登録がギリギリ出来ないベルと、素性を出来るだけ隠したいリーグさんには悪いが、正式に冒険者登録をしている僕だけが気まずいサービスを受けているのだ。

そして、そんな僕たちはカルセルの中町に入ると早速宿屋にチェックインすると、三人でまず目指すのは、この暇潰しの旅の一番の目的である、

『キミーさんの元旦那さんのバラッドさんを見る!』

という目的をちゃっちゃと済ませてしまおうという事で、中町だけでもカサールの倍以上ある町を散策しているのだが、「バラッド」なる鍛冶職人の工房がなかなか見つからないのである。

リーグさんが、

「町が広いからでしょうかね…一旦腹ごしらえをしましょう」

と、歩き疲れてお腹も空いてご機嫌斜めなベルの為にダッシュで購入してきてくれた屋台の串焼き肉を渡しながら、彼女を宥めている。

僕も、

「別にキミーさんの元旦那さんを見たからって、どうって事はないんだけど、旅の予定の一発目からしくじるのは気分的に嫌だな…ってだけなんだよな…」

と、既に興味よりも、義務意識のみでバラッドさんなる鍛冶職人さんを探しているのである。

そして結局、

「歩き疲れたから今日は宿屋でのんびりして、明日の朝…まだ探す気持ちが残っていたら探す事にしようか…」

という意見でまとまり、

『そうと決まれば、町を楽しんじゃえ!』

と、三人で宿屋までの道でキャッキャと屋台巡りをしながら歩いたのである。

やはり噂通りこの町は大陸の南との貿易の窓口らしく、今までになくスパイシーな香りが漂う料理の数々が、僕の眠っていた前世の食の思い出を刺激し、

『リント王国はもしかしたら食の文化的にはあまり発展してないのかも…う~ん、我が家が貧乏なだけでスパイスが余り使えなかったのか…いや、学校の食堂の料理も塩とハーブに出汁という今から思えば微妙な物が多かった気がするな…』

などと思いながらも、

『このスパイスを使えばカレーっぽい物も作れるかも…そうなると…あぁ、米も食いたいな…』

と今まで『異世界だから…』と自分に言い聞かせて封印していた前世の食事への気持ちが溢れて泣きそうになってしまう。

スパイスの香りだけで食欲が爆発しそうになる僕は、

『これはヤバい町に来てしまったのでは…これではもう固いパンと塩味ベースのスープには戻れないかも…』

と思いながらも、ベルと二人でモリモリと屋台料理を食べてまわり、リーグさんが、

「見ているだけでお腹が膨れそうです…」

とドン引きしながら宿屋のある大通りに戻って来た時に、

【鍛冶師ギルド】

の看板が目に入り、三人共に足を止めて看板を見上げ、

「あっ…」

とバカみたいな声を出してしまったのであった。

リーグさんが、

「旦那様…ここで聞けば早かったですね…」

という隣でベルが、

「宿屋の隣の隣だよ…」

と呆れ、それを聞いた僕は、

「そう…だね…」

としか言えなかったのだった。

そして、スパイシーなゲップが出そうなほど買い食いを楽しんだ後で少し眠くなってはいるが、

「もう、ついでだからバラッドさんとやらが町に居るかだけ聞いていくか…」

という事になり、カルセルの鍛冶師ギルドなる場所に初めて足を踏み入れたのである。

入り口から中に入ると、感じの良い猫耳の女性職員さんが、

「ようこそ、冒険者の方ですね。 なかなか良い装備を身につけておられるご様子ですが…修理…ではなく装備のオーダーメイドでしょうか?」

と、ギルドに登録してある職人のリストをカウンターに広げて、工房をオススメしそうな勢いに、僕は、

「いえ、実は人を探しておりまして、鍛冶師のバラッドさんという方をご存知ないかと…」

と職員のお姉さんに聞くと、彼女は猫耳をピクピクさせながら小首を傾げ、

「う~ん、たぶん探している人は、私の後ろで書類に埋もれている最中ですよ」

と言って、後ろのデスクが見える様に一歩横にズレると、カウンターの向こうには、

「う~む…」

と、唸りながら書類にサインしているドワーフ族の方が見え、

『髭が有るから男性だが…やはりビジュアルはズングリなオジサンだな…』

と失礼な感想と、

『こんなに近場に居たのか…』

という事実に、歩き回った時間がバカみたいなに思える僕であった。