軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第47話 残念な天才

前回、森での狩りで遭遇したレッドベアーの一件から僕たちが学んだのは、

『錬金術師のライト兄さんには細かい指示を出す事!』

という教訓である。

まずバーストショットだが、あれは僕と一緒に作ったので威力に問題は無かったのだが、しかし、問題は麻痺弾の内部の毒である。

僕たちが、

「近くの森で…」

と、リーグさんの相棒となる魔物をスカウトする話を聞いたライト兄さんは、

『近くの森…ホーンラビットとかかな…では体重が5キロぐらいの対象を麻痺させるなら…』

と、勝手に敵を想定して弱い麻痺弾だけを作り僕たちに持たせた為に、レッドベアーが痺れるまでに何発もかかったのだ。

そう、この何でも器用に作れる天才錬金術師のライト兄さんは、壊滅的に想像力というのか、応用力というのか…まぁ、とりあえず全てにおいて少し気が利かないのである。

小型魔物用や中型魔物用などの毒の強さが違う何パターンかの弾を用意してくれても良いし、デフォルトで通常弾でも作ってくれていれば運用の幅が広がっていたのであるが、それを試し射ちの後で本人に遠回しに伝えると、

「え~、それならそう言ってよ…すぐ作れるから…」

という反応であり、バーストショット改の威力の件は、

「いやね…盗賊討伐のジョンの報告に、ゴーレムに弓矢より遠い射程の武器があれば…みたいなのがあったから…」

という理由で、

『なら威力を最大限まで高めたら射程は勝手に上がるよね…』

というコンセプトで作ったらしく、僕には、

「長距離用の試作品だよ」

という説明だけで渡してきたのである。

なので、ただ発射の威力を上げただけのゴリ押し改造の為に、ノーマルのバーストショットより倍以上の飛距離は出ても、砲身を長くしたり、弾に回転を加えて安定させるなどという長距離射撃用の工夫は全くされておらず、いざ長距離の的を狙うと空気抵抗で弾がブレて精度はガタ落ちとなる代物である。

そして、威力を上げたバーストショット改からの派生で、

『遠くの味方にポーションが届けれたら、後衛からの援護の幅が広がるよね』

というコンセプトで作ったアレであるが、

『何故味方にあの威力でポーション瓶を発射しなければ…』

という、そもそも論の時点から狂っている発明であり、

「これは…味方ではなく毒の瓶を大型魔物に叩きつけるとかの方が…」

と、出来るだけやんわりと、

『コンセプトから練り直しでは…』

と伝えると、本人的には、

「作れそうだから作っただけだし、上手い使い方があるならそれで…」

と、作るまでが楽しく、出来た物の改良についてはあまり積極的ではないのか、

『言われた通りに改良はするよ』

というスタンスで自らアイデアを出したりはあまりしないらしいのだ。

なので事細かに、バーストショットの弾の種類、バーストショット改の長距離射撃用の改造案、長い名前をやめてバーストランチャーとかにして【何でも飛ばせる】というコンセプトの武器にする…という注文を伝えると、ものの数日で仕上げる腕はある天才錬金術師なのが、また悔やまれる。

僕としては、

『多分ライト兄さん曰く、今まで一番年下の弟子だから兄弟子さん達に色々と言われていたというのは、【放って置けないから…】という理由で呼び寄せて助手をさせたり、嫁さんが居ないのもあちこちの町で兄弟子さんの助手をしていたからって言ってたけど…単純に本人が気が利かないからでは…』

と感じてしまうが、結局は、

『あれだ…ライト兄さんは目の付け所が壊滅的だから発明家としては駄目だが、こちらが詳しい指示を与えると何でも豊富な知識と技術で叶えてくれる職人だと思えば物凄く有能な人材だな…』

などと、失礼な評価に落ち着いたライト兄さんの作品であるバーストショットに、長距離用バーストショットであるバーストライフルと、砲身に詰めれる物なら何でも飛ばすバーストランチャーの3つが完成し、カサール子爵様にも見せたところ、

「これは素晴らしい!」

との事で、ライトお兄さんも軍務大臣様に報告して国家錬金術師として国で雇うという案が出されたのだが、

「完成した物を国として評価して頂くのは大賛成ですが、ライト兄さんを単品では…」

と、今回の件も含めてライト兄さんの長所と短所をお伝えすると、カサール子爵様もクリスト様も、

「一旦、我が家のお抱え錬金術師として資金などの援助をして、出来た品物を吟味した上で報告をする事に…」

という流れとなり、ライト兄さんの今後の活動にはカサール子爵家がバックについてくれて安泰となったのである。

3つのバーストシリーズは、暫くはカサール子爵家で試験運用された後に正式にニルバ王国に採用される可能性があり、そうなるとライト兄さんは超一流の錬金術師の仲間入りとなるのだが、弟弟子である僕から見ても、

『チヤホヤされたら天狗になるタイプだから…』

と感じる為に、師匠や兄弟子達はかなりライト兄さんを心配して傍に置き続けていたのも解る気がする。

とまぁ、そんな事があった春の日に僕たちはカサール子爵様から、

「家の件だが、ワシに後は任せて、そうだな…秋頃までカサールを出て旅でもどうだ?」

と提案されたのである。

どうやら子爵様的には完成した家を見た僕たちのリアクションを楽しみたいらしく、それまでは他の町に行って待機していて欲しいそうで、

「孫へのプレゼントの腕輪もそうだが、ゴーレムの件も、あとは出世して領地を賜った件と返さねばならない恩が溜まっておるからな…」

と僕たちの希望を聞いて、それらを完璧に叶える家を作ってくれるそうなのである。

という事で、ベルは間借りしているカサール子爵家のお屋敷でお気に入りとなったお風呂を希望し、リーグさんは厩舎と魔物が飼える牧場と、僕はモノ作りが出来る作業小屋でも有れば…という希望を伝えると、カサール子爵様親子に、

「では、後は任せて…」

と町を追い出さる事になったのだ。

ライト兄さんは、

「え~、ジョンが居ないなら俺はどうすんの?!」

とかなりゴネていたが、既にカサール子爵家のお抱え錬金術師の肩書きがある為に町から離れる事が出来ないので、

「今度出来る我が家のお風呂の魔道具をお願いします」

というお題と共に、

【水を溜めた浴槽に入れるだけで適温に暖める】

【決して必要以上に熱くしない安全機能】

【追い焚きする際に肌が触れても安全なカバーを…】

などと、必要以上に注文をつけて、

『これでもすぐに作ってしまうなら…』

と、有ったら便利そうな物を手当たり次第にメモしてライト兄さんに渡しておいたのでお風呂の魔道具は勿論、次にカサールに帰って来た時にどんな魔道具がこの世界に生まれているかも楽しみである。

「わぁ、こんなにアイデアをいっぱい!」

と喜んだライト兄さんから、

『旅のお供に…』

と、生活費の為に仕方なく作ったという新品の魔道具の杖を頂いてしまったのである。

これは既にレシピが確立された品物であり、ファイアボールとウォーターショットという初級魔法が撃て、なんとお値段が大金貨1枚以上する高級品なのだ。

『ライト兄さんな発明品ではないなら安心だ…』

と失礼な事を思ってしまうが、ライト兄さんは、

「旅の資金に困れば売れば良い」

なんて、言ってくれたがこんな便利そうな物は売るはずもなく、カサール子爵様から、

「バーストシリーズのテスターもお願いするが…あまり目立たない様に…我が家の秘密兵器として暫くは内緒だから…」

という依頼も受けているので、人目が多い場所で堂々と使える装備は大変有難いのだ。

そんな訳で旅の準備も済んで行く宛もなくとりあえず旅に出る事にした僕たちであるが、ベルから、

「ダンジョンの続きがしたい」

との希望があり、リーグさんも、

「ダンジョンですか…久しぶりです」

とワクワクしている様子なので、

「では、タンカランダンジョンの攻略をした帰りにはシーズンに入る頃だろうからマーチンの町でグラーナでも狩って稼ぐか!」

という事で、僕たちは乗り合い馬車に乗りタンカランの町へと向かったのであった。