軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第46話 今後の課題

リーグさんと波長が合い、かつ役に立ちそうな魔物というのはなかなか居ないらしく、虹の橋を渡ってしまったフォレストウルフの他は、小型魔物や草食の魔物ばかりの『声』が聞こえたらしいが、

「畑の草を食わせるぐらいなら魔物市場で牛魔物を購入したほうが…」

というリーグさんの判断により、わざわざ草食魔物を狩るのは止めて、

「じゃあ、作るのが大変そうな麻痺弾しか今日は用意していないからベルのバーストショットの試し射ちをしたら帰ろう…」

と、どう考えても殺傷能力しかないリーグさんが担いでいるバーストショット改と、僕が持っている使いどころが今一つ分からない上に名前の長いポーション飛ばし砲ではリーグさんの相棒となる魔物はスカウト出来ないだろうと諦めて、本格的に狩をするには通常弾でも作ってもらった方が早そうなので、

『次に仲間になりそうな魔物を見つけたら、草食魔物だろうが小型魔物だろうがとりあえずベルが射ってみる』

という事に決まり森を歩いていたのだが、ベルがいきなり険しい顔で、

「待って、お兄ちゃん…臭いっ!」

と、僕のハートに突き刺さるフレーズを…

『確かに…今日はポカポカしているし、もう数時間森を歩きまわっているけど…そんなに汗臭いですか?』

と僕がショックで固まっているとリーグさんまで、

「ベルちゃんの言う通りですよ」

と真面目な顔で追い討ちをかけてくるのである。

もう泣きそうな僕は、

「ゴメン…ちょっと離れるよ…」

と二人から距離を取ろうとすると、ベルに、

「動いちゃ駄目!」

と叱られて益々訳が分からない僕にリーグさんは、

「多分大きめの魔物です坊っ…いや旦那様…」

と緊張した顔で教えてくれたのである。

どうやらベルの嗅覚が危険な魔物を察知して、リーグさんの魔物の気持ちが何となく察知出来るというテイマーギフトの恩恵により『声』という感覚で大きさも感じる事が出来るらしく、

『危険な香りの大きい魔物の縄張り』

という森の中で一番避けたいエリアに僕たちが踏み込んでしまった事を知ったのだ。

『良かった…僕が臭い訳じゃなかった』

と安堵する反面、

『えっ、どうしよう…どっちに逃げたら縄張りから抜け出せるの?』

などと考え、まだ結論すら導き出せていないうちに、血の様に赤い毛の熊が僕たちの前に現れたのである。

森で狩りをする猟師達の一番の獲物であり最高難易度の敵でもあるレッドベアーだという事は一目で解ったのだが、このメンバーとこの装備で倒せるかは些か疑問である。

しかし、あちらさんは冬眠明けで腹ペコなのか完全にこちらをロックオンしているご様子で、残念ながら今から慌てて僕たちが、

【にげる】

のコマンドを選択しても無理そうな雰囲気なのである。

しかも、ウチの無邪気なベルちゃんが、

「えい!」

と気合いを込めてバーストショットをブッ放した為に完全に試合のゴングが鳴らされてしまい、肩口に麻痺弾を食らったハズのレッドベアーは何事もなかったかの様にこちらに走ってくるのである。

『確かに次の獲物を見つけたら…って言ってたけど!』

とツッコミたい僕だったが、そんな事を言っている場合ではない状況に、

「ベル、距離を取りながら次の弾を装填して」

と指示を出した僕に、リーグさんが、

「自分も一発入れて注意を引きますので旦那様も!」

と、レッドベアーから離れて反撃の準備を整える様に言って来るが、僕のポーション飛ばし砲ではニッチもサッチも戦えそうになく、

『ポーションの代わりに毒薬瓶とか射ち出したら使えそうだが毒薬瓶なんて都合良く持って無いし…』

と、辺りを見ても森の栄養が豊富そうな土ぐらいしか無い、

『ジタバタしか出来ないのなら、精一杯ジタバタするしかないな…』

と覚悟を決めた僕は、リーグさんのバーストショット改での攻撃を食らい、ヤツが動きを止めたのを見て、

『うん、やはり威力は桁違いだな』

と、一番効いている攻撃であるのを確認した後に、

「リーグさんの攻撃が頼りですから、今度は僕が前に出るので準備を!」

と彼に伝え、次の弾の装填が完了しているベルに、

「ベル、一瞬だけアイツの注意を引いたらすぐに距離をとって」

と頼み、僕は近場の土を詰めたポーション飛ばし砲を担いで片手剣を握りしめてレッドベアーに突進する。

ベルの放ったバーストショットの一撃はヤツの脇腹の辺りにヒットし、レッドベアーが少し不快そうな顔をしたのを見た僕は、

『なになに、地味に効いてるの?』

と、少し心に余裕が出来て、確実に格上と思われる敵にも怯まずに立ち向かえたのであった。

といっても僕のヤル事は【熊さん相手の嫌がらせ】であり、あくまでもメインアタッカーはリーグさんなのだ。

イラつくレッドベアーに近づき至近距離で顔面にポーション飛ばし砲での土による目潰しを食わせた後は、片手剣のみでヤツの注意を引き続け、リーグさんが狙いやすくする為の囮役に徹するのみ、

『折れた釘だのガラクタを射ちだしたら結構な攻撃になりそうだが…』

と無い物ねだりをしながらも、

『どうせヤルなら最大の威力で…』

とレッドベアーにギリギリまで近づき、

「お兄ちゃん!」

というベルの心配する声を聴きながらも、

『あっ、ベルの声…よし大丈夫だ、落ち着いている証拠…』

と自分に言い聞かせ、ヤツの鼻先で土ボコリというにはあまりにも強烈な一発をお見舞いすると、僕は

「ひぃぃぃぃ!」

と、少し情けない声をあげながらダッシュである一定の距離をとり、

『どう、効いた?』

とドキドキしながらも、大木の影に隠れて後ろを確認した僕は、仕上げに

「どうしたクマさんよぉ!」

と声を出して、爪を闇雲に振り回しているレッドベアーの注意を引いてみる。

有難い事に、どうやら目潰しはバッチリ効いたらしくイラつきながら僕の声を目掛けて爪での攻撃を止めて突進してくるが、レッドベアーのヤツは森の木々に当たりまくっているのである。

『よし、これならば…』

と木に隠れながら移動しては、大木の影から、

「クマちゃんはまだお目目が見えてないのかな?」

などと煽りつつ僕が一定の距離を保っていると、リーグさんとベルのバーストショットでの追撃が入り、ようやくここで麻痺弾の効果が出始めたのか、レッドベアーの動きが鈍くなりはじめる。

僕は視界も怪しく、動きも鈍くなった獲物を見て、

『よし、今なら!』

と片手剣を構えて、

『あんなデカい熊でも気管に血が混じれば息苦しいだろう』

と、ふらつくヤツの首を狙い剣を深々と突き立てる。

なんだか分からないが

『ヤってやった!』

という手応えと共に離脱しようとした瞬間に悶え苦しむレッドベアーが闇雲に振った手に当たってしまったらしく、僕の視界はグルンと反転したかと思うと木に叩きつけられたようで、体のあちこちから物凄い痛みが押し寄せたのである。

しかし、体は馬鹿みたいに痛いが、レッドベアーはその一撃が最後の足掻きだったらしく、苦しそうにピクピクし始め、

「へへっ…勝った…」

と、何とか生きて戦いを終えた事に満足している僕にリーグさんとベルが駆け寄り心配してくれ、ベルは僕のマジックバックをあさり、あの時の物々交換のサービス品であるポーション保存容器からポーションを取り出して、

「お兄ちゃん、飲んで!」

と、僕の口にねじ込んでくる…しかも3本も…

「ちょ…溺れりゅから、おぼ、ぼ、ぼ…」

と僕が言ってもベルは止めてくれないのである。

目の前で『また家族を失うかも…』という恐怖でプチパニック状態のベルをリーグさんがなだめてくれて、ようやく僕はポーションで溺死するのを免れ、

「ベル、ありがとうね…お兄ちゃんは大丈夫だから…」

と言ってはみたものの、鉄板入りの革の胸当てはザックリとレッドベアーの爪で切り裂かれており、一歩間違えばあの熊さんとあの世までの片道旅行と洒落込んでいてもおかしくなかった事を知り、今ごろになりカタカタと足が震えてしまう僕は、

『これは、家だの畑だの楽しむ前に強くならないと…』

と、魔物がひしめくこの世界で生きていく為に今後の課題として、まず自分を鍛える事を真剣に考えるのであったのだが、

『う~ん、チート能力も無い一般通過追放者からスタートして、なんとか駆け出し冒険者と見習い錬金術師にバージョンアップはしたが…それでも熊さんビンタで死にかけるんだから先は長いな…』

と思いつつも、ベルからギャン盾とメイスを借りて、念のために、

「ビックリしたじゃねぇか!」

という恨みを込めてクマ野郎をシバきあげて、麻痺弾の効果ではなく完全に御臨終したのを確認したのちに、

「さて…これを町までどうやって持って帰るか…」

と、ようやく冷静になり、ここに来て僕たちは一番の問題にぶち当った事を理解したのである。