軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第39話 盗賊の群れ

さて、雪辱戦に燃えるカサール男爵様の元で、新たに仕切り直された盗賊討伐作戦なのだが、一度盗賊に先手を打たれはしたが、通信魔道具や念話のギフト持ちを使った通信網にて、カサール男爵様の義理の息子であるマルダートの町の代官さんや、リント王国側の辺境伯様にまで連絡出来る状態はまだ保っている。

そして、前回と少し違うのは顔に泥を塗られたカサール男爵を心配して力を貸してくれたニルバ王国側の軍務大臣様が兵士を追加で派遣して下さったので、先に派遣されている派閥貴族からの助っ人はマルダートに盗賊が来る事も考えて配置してある事で最初の作戦よりも逃げ場のない包囲網がすでに完成している点である。

盗賊を警戒しつつも各地から無事に到着したマルダートの新しい住人の中からも腕自慢達が盗賊討伐に力を貸してくれるメンバーもおり、カサールの町の襲撃を知ったリント王国側の国境も、

『そんな危ない奴らを国に入れてなるものか!』

と、がっちり辺境伯様の軍が固めて居る為に作戦参加人数は発動前に潰された前回の作戦の2倍以上の人数なのである。

だが前回と同じ作戦では、誰が何処で盗賊達に情報を漏らすか分からない事と、単純な話…

『てめぇら、ただじゃおかねぇ!』

と、完全にプッチンプリン状態で怒りに任せてプルプル震えだしそうなカサール男爵が、

「この戦…ジジイに譲ってくれ」

と言う事で、カサール男爵様とクリスト様親子をサポートし、残りは盗賊達の逃げ道を完全に塞ぐ事に集中するという何とも単純で野蛮な金網デスマッチスタイルで行く事に決まったらしい。

遊撃部隊と化したカサール男爵様達が包囲網内の盗賊の拠点を潰して回るという、前回の追い込み漁の様な作戦よりも更に原始的な作戦ではあるが、そうでもしないと燃やされた町の人たちに顔向け出来ないカサール男爵様の意地の戦いであり、それを実現させる為の新型ゴーレムの試作機である2台のバルザックなのだ。

唯一問題が有るとすれば、因縁の盗賊へのカチコミメンバーに僕が混じっているという点であるが…

『まぁ、盗賊狩りと聞いて、「強くなったから…」と行きたがっていたベルはカサールの町に炊き出し担当として残して来れたのは良かったけど…』

と、複雑な心境の僕は、盗賊を警戒させない様に起動前状態の二体のゴーレムはコックピットと内部フレームだけの形態で引っ越荷物風に擬装し、マルダートに移住する商人や住人の馬車の列に見せた幌馬車にはカサールの町の精鋭達が分乗し街道移動している中に紛れて、現在その精鋭達に挟まれながら僕は戦地へと送られているのである。

「ひゃっは~、ここは通さねぇぜ」

と、盗賊が来た場合は兵士長達やカサール騎士団の方々が幌馬車から飛び出して戦ってる間にゴーレムをゴロンと荷車から滑り降ろして起動させ、街道の盗賊をシバいた後に既に凄腕冒険者が調べあげた近場のアジトに突撃という流れか、

「兄貴、寒くなりやしたね…暖かいスープでさぁ…」

などとアジトにてヌクヌクと暮らしていた場合は起動させたゴーレムにて隣の晩御飯なみにアジトへとアポなし訪問をするだけの荒い作戦において、僕はゴーレムの運用サポートと、この作戦の後に国へ提出するゴーレムについてのレポート用の現場の記録係と、魔術回路などの修復係も兼ねて兄弟子から回路図なども持たされており、エルバ師匠まで、

「普通は錬金術師ではないと理解出来ぬ回路だろうが、この図面通りに直せるとイメージすればジョンなら大丈夫じゃろうのぅ…」

と送り出されてしまった。

『いや、師匠…見習いだから万が一の時に回路が直せるかという問題よりも、僕が最前線に行くという問題の方が…』

とは思うが、兄弟子さん達までも、

「ジョンは冒険者なんだろ?」

「だな…俺なんかホーンラビットすらまともに倒した事ないし…」

などと、『学業エリートの錬金術師』をアピールして、

「だったら、現地での担当は発案者で俺たちの可愛い弟弟子に任せるべきだ!」

などという始末だったのだ。

「あぁ、分かりましたよ! 行けば良いんでしょ、行けば!!」

とヤケクソ気味に来たのは良いが…

『対人戦闘か…』

と、前世の知識から考えると、命が軽い様なこの世界だが、やはり人の命は重い…今まで倒してきた小型魔物なんて比ではない緊張感があり、殺すつもりで向かって来る盗賊に、

『命だけは許してやる…』

と、格好をつけて手加減などして牢屋に送りにする余裕が、僕に有る訳も無いのだ。

しかし『嫌だ、嫌だ…』と思っていても、その時というのはあちらからやって来る様で、

「敵襲!」

の掛け声と共にカサールの町から東に伸びる街道にて盗賊との戦闘が開始されてしまったのであった。

既に前方では金属音が聞こえ、カサール男爵様が、

「えぇい、早く降ろさぬか…」

と荷車からゴーレムが地面に降ろされるのをソワソワしながら待っている。

ゴーレムを起動させる前に内部に乗り込まないと、まだ完璧でないコックピットの出入口の補強の為に地面の土をゴーレムの肉として出入口ごと固める設定で、予算や時間の関係もあり緊急発進が出来る特別な装置もなく、ぶっつけ本番の搭乗はもたつくのも分かるが、あまりに急がせた男爵様の荷降ろし指示に馬魔物を外して荷車を傾けて乱暴に地面降ろしたコックピットを見たクリスト様が、

「父上…焦る気持ちは分かりますが、この角度で乗り込むのは…」

と文句を言いながら横倒しのユニットに無理やり乗り込む姿を見て、僕は、

『搬送用車両も提案しないとな…』

などと思いながらも、自分も両肩に遠距離兵器のあるヒトキャノンの姿になり、

「お二人とも起動後に魔道具のチェックをしてから実戦に向かってくださいねぇ~」

とパイロットのお二人にお願いしたのであるが、やはりお二人とも同じ血が流れている様で、カサール男爵様は、

「殴れたら何とかなる!」

と起動したゴーレムの中からでも聞こえる声で言ったかと思うと、急発進で戦闘エリアに向かい、クリスト様は騎士団からの、

「敵、マッドウルフの一団です」

との報告を聞くと、

「ジョン殿、ベルちゃんの家を襲った輩ですぞ! 参りましょう」

と、ボール号に指示を出したらしく、クリスト様の乗るゴーレムが、

「えっ?」

と一声あげる暇も与えずに僕の尻辺りをヒョイと掬い上げ、僕は何の防御も無い野ざらし状態でゴーレムの手に座ったまま戦闘エリアへと赴く羽目になってしまったのであった。

『ひぃ、死ぬぅぅ!』

とゴーレムの手の上で涙目で声も出せずに固まっていた僕であるが、戦闘エリアに到着すると、コックピットからクリスト様が、

「これは父上だけで十分だな…」

と言う程にカサール男爵様が無双中であり、少しぎこちない動きのゴーレムのはずなのに棒立ちの盗賊達をゴーレムパンチやゴーレム体当たりで薙ぎ払っている。

クリスト様が、

「威圧ギフトとの相性だな…ゴーレムなどという武器を手に入れたのだから対人戦闘ではほぼ無敵か…」

と男爵様の暴れっぷりに呆れており、

「ここは父上に任せて先に我々はアジトに向かうぞ」

と近くの騎士団に声をかけるが、暴れるカサール号の音と、カサール男爵様の、

「がははは! そりゃ、そりゃぁ!!」

と言う雄叫びにかき消され、騎士団の方々が、

「クリスト様、なんと仰りました?!」

と、聞き返すのを見て、

『コックピットに拡声魔道具とか乗せる様に提案しないとな…』

などと僕が戦闘区域にこれ以上近づかなくて良い為にのんびりとそんな事を考えていると、クリスト様が、

「ではジョン殿、参りますぞ!」

と、今度は街道横の山道に向かいゴーレムを動かし始め、

『やばい、このままだと山道の枝の餌食となって目的地に到着する前に怪我をする未来しか見えない!』

と焦った僕は座らされている掌から、コックピットの強化水晶ガラスをコンコンと叩き、

「クリスト様、ゴーレムの動きを見るのが仕事ですので、是非後ろから観察を…」

と、思いつきの言い訳をならべると、

「そうか…では…」

と何故か残念そうなクリスト様に地面に降ろしてもらうことができた。

『助かった…』

などと、安堵する暇も与えられないままその後、僕は騎士団の方々とボール号の後ろから山道を駆け上がり、マッドウルフなる盗賊達に奪われたベルの住んでいた集落に到着したのであった。

『ベルはここから街道を避けて山伝いに何日も…』

などと思うが、どうやら下で行われている騒動に気がつき、数件ある建物の中から、

「攫った娘は捨てて、金目の物だけ持ってずらかるぞ!」

などと慌ただしく出てきたこの盗賊団のリーダーにクリスト様の指示で両手を突き出したボール号の掌から石の弾丸が撃ち出され、

「抵抗すると次は当てる!」

とコックピットから怒鳴るクリスト様の声は、盗賊達の、

「誰だ、てめぇらぁ!」

という声にかき消され、結局武力衝突へと雪崩れ込んでしまった…

『今のは説得からの睨み合いの流れだろうに…ほら…やっぱりコックピットに拡声魔道具の標準装備をしないと…あっ、後で騎士団の人に聞いてみてクリスト様の操作はゴーレムとの念話で出来るから拡声器魔道具が余ってたら持って乗り込んでもらおう!』

などと戦闘は騎士団さんに任せようと、呑気に突っ立っていた僕の横を矢がかすめ、

「えっ!」

と焦って見た先には確実に弱そうな僕を見つけてニヤニヤと弓を構えている盗賊がこちらに狙いを定めており、

「あぁ、コイツらは人殺しを楽しむタイプのゲスか…」

と肌で感じた僕は、恐怖心や、盗賊とはいえ人に刃を向けるという罪悪感よりも、

「こんな感じでベルの両親や集落の皆さんを…」

という怒りが湧き上がり、弓を放つ暇すら与えない様に両肩の杖を起動させ相手にストーンバレットの魔法を撃ち込み、自分から盗賊というゲスの群れに戦いを挑んだのであった。