軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第38話 新型ゴーレム

戦争のせいもあり、元よりちょっぴり貧乏寄りのカサール男爵家は今回の件で家を失った町の方々の為の支援の為にお金を使いきっており、新たに素材を購入する事なく師匠と兄弟子の皆さんは町にある資材のみで急造の試作ゴーレムを二体完成させた。

軍務大臣様から派遣された兵士の方々がカサールに到着しゴーレム研究用の資金は届いたが、今からそれを使い近隣の町から素材を購入する時間が無いので、今後の研究に回す為それには手をつけずに、

「盗賊達が方々に散らばる前に!」

と、野宿も大変な冬の移動を避けて身を潜めているであろう盗賊に対して、男爵様はこの冬の間に相手との決着をつける腹積もりらしい。

それに、内通者と知らずに盗賊達の偵察依頼を出していた冒険者ギルドマスターもだが、金を受け取り盗賊に寝返った裏切り者を身内から出してしまった兵士長達も盗賊狩りに燃えている。

冒険者ギルドマスターは、

『冒険者ギルドのメンツにかけて盗賊団を捕らえよ』

との指示が本部から出されており、ギルドマスター本人が自分のお金で本部お墨付きで絶対の信頼がおける最高ランク調査専門冒険者を情報収集係として派遣しており、

「襲撃に参加した盗賊達の動きは把握しております」

と報告があり、兵士長達は、

「あの日盗賊に寝返った奴らは我らの手で…」

と闘志を漲らせており、そして一番鼻息が荒いのは代官として治める町を焼かれたカサール男爵様親子である。

派閥の長である軍務大臣様からの助っ人の兵士が到着したこともあり、

「今居るアジトでぬくぬくと春まで隠れる腹積もりだろうがそうはさせるか!!」

と戦でも始める勢いなのだ。

本来であれば強度のある金属でコックピットを作り、ゴーレム自体も鍛冶屋に頼んだ外部装甲なんかを取り付けた最強ゴーレムにしたかったのであるが、そんな時間も資材もなく、少し勿体なくも感じるが、

「我が家にはこれぐらいしか自由に出来る金属がないから…」

と男爵様がくれたカサール男爵家の頑丈な貴族馬車をバラしてベース素材として、丈夫な木材と矢も跳ね返す強化水晶ガラスの窓を魔鉱鉄のフレームにはめて、パイロットの視界を確保したコックピットを作り、馬車の金属部品を使いゴーレムの手足の骨格とした。

これは石などのみでゴーレムを作った場合は関節を魔力で繋ぐ為に、燃費が悪く、また関節部分が弱くなる事からバルザックさんのゴーレム構想に有った物を僕のプラモ知識からナンチャッテ内部フレームを提案して作ってみた物である。

この試みには、カサールの町の鍛冶屋の職人さん達も盗賊にはカチンと来ているらしく、ノリノリで手伝ってくれたので、急造にしては中々良い感じに仕上がり、その出来映えにゴーレムの調整を手伝って下さるゴーレムマスターのギフト持ちのクリスト様も、

「これで我が友ボールと共に戦えるのか…凄いな…」

と感心されていた。

『ボールって名前なんだ…』

と、お手持ちのゴーレムコアの名前が若干、やられ役としても名高い連邦の丸いヤツみたいなのが心配ではあるが、クリスト様は満足気にこの町に2つだけあるゴーレムコアそれぞれと心を通わせ、コックピットを中心に起動した時の大きさや形を調整し登録してくれていた。

この作業は起動させるコア毎にゴーレムマスターが行えるのであるが、クリスト様も、

「子供の頃に大きさの登録をして以来だからな…」

と手こずってはいたが、失敗しても魔力を溜める魔道具があり1ヶ月ものチャージ時間が必要なくなった為にかなり入念に内部フレームの動きを邪魔しないゴーレムの形を追及し、兄弟子さん達の改良も入り完成したのが、搭乗型戦略ゴーレム【バルザック】試作機の、ボール号と、カサール号である。

師匠の提案で新型ゴーレムの型式名をバルザックさんの名前を後世に残す為に【バルザック】と名付けたのであるが、兄弟子さん達は内部フレームやコックピットシステムを勝手に、

『エルバートシステム』

と言い出して、エルバ師匠は、

「これ…ワシは研究資料を託されただけじゃから…」

とは言って照れてはいたが、少し嬉しそうにされていた為に正式採用され、このエルバートシステムについてはニルバ王国独自の技術として極秘扱いになる予定らしい。

試作一号機であるボール号のパイロットはクリスト様であり、師匠や兄弟子さん達がバルザックさんが発明した魔力充填魔道具を改良した【魔力供給装置】をコックピット内に配置してあるので、パイロットがマジックバックなどに魔石を詰め込み乗り込む事で、内部からゴーレムに魔力を供給出来て魔力切れの心配もなく長時間の活動も可能となる。

それに、魔道具作りが得意な兄弟子さんの閃きにより、ゴーレムサイズの魔道具の杖を持たせるのではなく、腕の骨格となる金属フレーム自体を魔道具の杖に見立て、今回はゴーレムを動かす為の土属性の魔力と同じ属性のストーンバレットの魔術回路が組み込まれている。

普通の魔道具の杖の頭には魔力源となる魔石を入れる部分がついているのだが、その魔石の設置場所をコックピットに取り付けて、さらに大型にしたストーンバレット用の魔石タンクに魔石をセットすれば魔力が腕に続く内部フレームに書かれた回路を辿り、魔石が続く限り何発でもゴーレムの手からストーンバレットの魔法が打ち出されるシステムなのだ。

もっと時間が有れば兄弟子さん達は魔道具として解析されている色々な魔法を試したいらしいが今回はとりあえずストーンバレットのみである。

そして、僕が物々交換でもらってきたゴーレムコアは研究用に人間サイズの小さなゴーレムの設定だったのをクリスト様に調整してもらい、バルザックさんが試作していた通信システムをコックピットに配置したのであるが、今は五パターンの信号しかゴーレムに送れずに、その信号と動作のすり合わせもクリスト様にお願いしたのである。

作業を終えたクリスト様は、

「カサール号は中々物覚えが良いぞ…これは良いゴーレムだ」

と満足そうにしていたので、僕としては、

『ゴーレムに物覚えの良いとか、悪いとか個性があるんだ…』

と少し驚いた。

多分これから研究が進んで送れる信号が増えたり、ゴーレムが動きを学習して、もっと様々な動きがボタン1つで出来る様になりそうであるが、今は、

【正面の敵をロックオン】

【前進 右】

【前進 左】

【攻撃】

【ガード】

という五種類を使い、攻撃コマンドでロックオンした敵を殴ったりは勿論、コマンドとコマンドの複合で違う動きをゴーレムが学習しており五パターン以上のアクションが可能である。

この通信機のボタンについては僕のこだわりを兄弟子の皆さんが汲んでくれ、コックピットにペダルとレバーを配置してくれ、足ペダルに割り振られた右前進と左前進を同時に軽く踏めば【直進】の指示がゴーレムに伝わり、ペダルを離すと【停止】、長押しで【徐々に加速】したり、ロックオンボタンと直進で【敵に接近】や、ガードと前進のペダルの複合で【後退】などと、ボタン毎に、

『この信号はこの動きですよ…』

と、クリスト様がゴーレムに教える作業が大変そうでは有ったが、バルザックさんはその動きをする信号の周波数的な物を探して、実験用のゴーレムと共に手探りで行っていたらしく、エルバ師匠はバルザックさんの研究資料を見つめながら、

「バルザックよ…人嫌いを拗らせておるから…ゴーレムマスターを1人雇うなり仲間にすれば生きている間に研究を完成出来ただろうにのぅ…」

と、残念そうにしておられたのである。

こうしてまだまだゴーレムマスターが指示を出すゴーレムよりは、ぎこちない動きであるがギフトに左右されずに【誰でも使えるゴーレム】がこの世界に完成したのである。

このカサール号にはパイロットである男爵様の、

「男なら拳で…」

みたいな男臭いご希望で、あえて魔道具で魔法を飛ばせる機能は付いておらず、その代わりに両足の内部フレームに重量軽減の魔術回路が仕込んであり、いざと言う時に回路に魔石からの魔力を流すとゴーレムとは思えない移動速度を出せる設計である。

『盗賊達は武装しているとはいえ人間相手に過剰戦力な気もするが…まぁ相手は町を焼き払うような外道だし、男爵様親子が燃えているからな…御愁傷様…』

などと僕は他人事の様に思っていたのであるが、兄弟子さん達が僕に、

「では、ジョンはボール号のストーンバレットアームからヒントを得た試作型魔石タンク式ダブルストーンバレットの杖ね」

とランドセルサイズの木箱を背に負うと両肩からニョキッと、杖と呼ぶには太短い棒が伸び、

『わしゃ、カイさんの乗るキャノンのヤツか!?』

とでも言いたくなる見た目になり、凄く嫌な予感がする僕は恐る恐る、

「これは?」

と、兄弟子さん達に聞くと、

「そんなモン、発案者が近くで見ないと報告にまとめられないだろ?」

と、さも当たり前かの様に僕にも盗賊狩りに同行するよう言ってくるのである。

『いぃー、やぁー、だぁー! こっちとら修復ギフトしかない駆け出し冒険者だよ!?』

と、焦りながら頑張ってごねてはみたものの、

『師匠 > 兄弟子 > 僕』

という力関係には逆らえず、結局盗賊討伐に参加する流れになり、

『それならせめて…』

と、カサール男爵様に、

「倉庫に使ってない全身鎧とかありませんか?」

とおねだりしたが、

「使ってないのは全部ゴーレムの部品になったが?」

と言われ、

『死んじゃう、死んじゃうから…』

と、ダッシュでギャンさんに泣きついてみたのであるが、

「ウチの鉄鎧や金属のガラクタは大概は鍛冶屋で釘に化けたあとだし、使えそうな装備もスラムの若いのが町を守りたいからって、持たせたから無いぜ」

などと寂しい事を言われたのであった。

『はい、詰みました…』