軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第126話 見つめ合う

『どうしよう…ジジイに懐かれてしまった』

目の前でマジックバッグを修復してみせたのが決定打となり、メインジョブを修復師からマジックアイテム研究者にシフトしたヨゼフさんは、

「ワシもその修復師の高みまで連れて行ってくだされ!」

などと叫ぶ様に言い出し、あれから何かにつけて僕に絆の指輪を無言でハメようとして来るのである。

耳が遠くて僕の説明が聞き取れないから仕方ないといえば仕方ないのであるが、ロイド君のレベル上げの目的で中級ダンジョンに潜りクタクタで帰って来て、宿の井戸場を借りて簡易風呂にて汗を流してホッコリしたところで、部屋に戻ると興奮気味の爺さんが鼻息も荒く指輪を僕にハメて来るという全く楽しくないイベントの後にヨゼフさんとの語らいの時間が始まるのである。

基本的に絆の指輪越しの会話なのでテーブルを挟んで無言で座っているだけなのであるが、僕の頭の中ではヨゼフさんの、

『ですから、ラベルの魔力量には逆立ちしても勝てず、使用魔力が減らせればマジックアイテムの修復も出来るのではと王都を離れてワグナへ来たのが20代でして…』

などと、彼の今までの苦労話やらを聞かされ、その後は魔力共有魔道具によるマジックアイテムの修復についての質問責めに合う流れなのである。

『なるほど、魔力を他から補てんしてリペアの威力を無理やり上げると!?』

などと、理解したヨゼフさんに、僕は絆の指輪越しに、

『僕も頑張りましたけど、ルーン文字を使ったミスリル製のマジックアイテムは極軽微な破損で機能しなくなったモノしか直せませんでしたが、ヨゼフさんのマジックアイテムの知識があれば魔力供給魔道具を使わなくてもエルフ族が作った革製のマジックアイテムが修復出来た事を考えると魔力供給魔道具さえあればミスリル製のマジックアイテムも直せるのでは?』

と褒めた後に、僕は、

『では、本日はダンジョンで疲れていますのでこの辺で』

と切り上げようとすると、ヨゼフさんは僕に褒められて興奮しながらも、

『まだ良いではないですか!?』

とすがり付くような潤んだ瞳で見つめてくるのである。

爺さんに頬を染めながら潤んだ瞳で見つめられたとて、

『誰得だよ!』

としか感じないので本音が漏れる前に指輪を外して、あとはルーベルさんにお任せするのであった。

なぜヨゼフさんをルーベルさんにお任せするかというと、ルーベルさんの念話による定期報告により、

『ヨゼフというマジックアイテムを魔力供給魔道具無しで数種類ですが独学で直せるまでになった元王都の修復師団の者を発見しました』

と王都に伝えると、国王陛下から直々に、

「王都で魔力供給魔道具を使ったマジックアイテムの修復の研究と後進の育成に力を貸してくれぬか?」

というお誘いがあり、喜んでそのお誘いに乗る事にしたヨゼフさんは、王都サイドとの今後の打ち合わせをルーベルさんの念話ギフトを介して行っているので、今のヨゼフさんの正式な担当は正確にはルーベルさんなのである。

そして、それに伴いワグナの町ではドワーフ族の鍛冶職人に持って行かれて殆どヨゼフさんの手元に回って来ない魔合金製のマジックアイテムの修復についてカサールの我が家にて魔合金製のマジックアイテムを中心に散々修復した僕から、今後の修復師として復帰するにあたりヨゼフさんは情報を聞き出したいらしく、無言で僕に指輪をハメるという事態になっているのだ。

「疲れたよ…」

と呟いた後に僕は、冒険者宿の部屋で必死に今日の出来事をメモっているロイド君に、

「今日のダンジョンアタックはどうだった?」

と聞くと彼は、

「ダンジョンに潜って二日目ですが毎日成長しているという感覚が有ります。 本当に今まで如何に体を使っていなかったのかと痛感します」

と答えながらもメモする手は止めていないロイド君に、

『やはりロイド君は努力で神童と呼ばれていたのだろう』

と、彼の頑張りに頭が下がる思いであった。

『歳も今の僕と同じ19歳なのに、彼は勉強、勉強で楽しい事も知らないままこれでは青春が勿体無いのでは?』

と考えた僕であったが、同い年で金儲けをメインに浮いた話も無い青春を送っている自分にも『青春が勿体無い…』という特大ブーメランが刺さってしまい、

「ぐふっ」

と小さな声を出しそうになったが、心の中のもう一人の自分が、

『いいモン、なんたって2周目だモン。 青春しなくても生涯年収だけは今の時点でも前世の比じゃないぐらい稼いでるモン!』

などと自分を鼓舞してくれ、前回と同じく、人生二回目となる今回もモテてもいない青春の件を一旦棚上げする事に決めたのである。

さて、ヨゼフさんの店から売り物分のマジックアイテムを購入し、そしてアル君の商売の腕を磨くべく、

『値切りに、値切ってもらおうかな?』

などと考えていたのだが、なんとアル君はヨゼフさんが王都からの迎えが来る事が決まると、彼はヨゼフさんに、

「引っ越しに、地下のマジックアイテムのコレクションの運搬って、さぞかし大変ですよね?」

などと言って、3つばかりヨゼフさんの店に有った壊れたマジックバッグを僕に修復させる事によりダブって店の中に山積みにされていた残りのマジックアイテムを全て貰える約束を取り付けてくれたのだ。

つまり、僕たちは実質マジックバッグ3つを修復する魔石を消費しただけで、あの店のマジックアイテムの山が手に入ったのである。

しかし、革製マジックアイテムとミスリル製のマジックアイテムが殆どであり、ミスリル製品の大部分は僕がまだ修復出来ない物の為に当面は革製マジックアイテムの代表であるマジックバッグぐらいしか直して使えないと思われる。

だが、そのマジックバッグが大変便利でありヨゼフさんから既にどんな機能のマジックバッグだったか教えてもらっていたので、食料用の時間停止機能付きや、大容量のマジックバッグは僕たちのダンジョン攻略の際にとても役にたっているし、

『二日ほど中級ダンジョンの低層で狩りをした魔石で元は取れただろう』

というぐらい順調に敵を倒せている。

まぁ、ダンジョンの低層で狩りをしている冒険者が少なくライバルが少ないのもあるが、ライト兄さんが王家にプレゼンしたバーストランチャーが組み込まれているオンブゴーレム君も、陛下から、

「ロイドを成長させる為なら好きに使えば良い…というか既に作った分は自由に使いなさい。 しかし、追加でそれらの武器を買いたいというのであれば余は止めはせん、安くしておくぞ」

というお墨付きをいただいたので、ロイド君はオンブゴーレムをメインにフルアーマーロイド君状態でダンジョン攻略をしており火力も申し分ないのだ。

そして弟のカイン様と違いギフトは無くても属性の無い無色の魔力はニルバ王国民の平均よりやや多い様で、アクアショットが放てる水撃の杖や、刃先からバーストが放てる突風の短剣ならば1~2発は放てるのである。

しかし、そもそもロイド君は魔力操作の経験が無く、いくら頭が良くて努力家といえど実戦で使うには発動までの時間が掛かりすぎた上に不安定という事で、魔道具のファイアボールの杖を追加で使い、メインウエポンであるオンブゴーレム君の2門のストーンバレットとファイアボールの魔道具の杖という中距離特化の装備に、獣系などの魔物の群れには弾数が限られているがライト兄さんの調合した毒瓶もゴーレム君の足から放てるので1対多数でも戦える。

それにロイド君はすでに攻略中のダンジョンの敵などを予習済みであり敵の名前は勿論、弱点やドロップアイテムのバリエーションなども記憶しているらしく、

「サンドラットです。 砂に潜りながら群れで行動する習性がありますので辺りの警戒をお願いします」

などと、パーティーの中で一番冒険者ランクが下とは思えない的確な指示に加えて、

「水が弱点ですのでダグさんの魔法とジョン君が水撃の杖で動きを封じて下さい、濡れたら砂に潜れないらしいので!」

と討伐に適した作戦まで、本当に頼もしい活躍である。

『あれ、アル君の商人としての経験の為の旅も、ロイド君のレベル上げも僕が何もしなくても順調じゃないか?』

と気がつき、

『いや、僕も爺さんと見つめ合っている場合じゃないぞ! アル君とロイド君と一緒に青春を楽しむって決めたじゃないか!?』

と、焦りながら今日の復習にメモを取るロイド君と、手に入ったマジックバッグに何を買い付けて帰ろうかと商人としての計算をしているアル君を見つめて、

『青春を楽しむと言っても、う~ん、そもそも青春ってなんだろう?』

と、哲学するのであった。