軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第115話 騎士団長の涙

とりあえず、解体済みの肉で軽く焼肉パーティーをし、近場の村から戦力として駆けつけてくれた助っ人の皆さんに手土産分のお肉を一塊ずつ配りその日は解散という事にした。

だが、まだまだ獲物は沢山あり、残った騎士団の方々と、泊まる覚悟で派遣されて来た中心地チームと東の集落のメンバーにて、ゴーレム君の肩口の魔石ライトの光の下で解体や保存の為の塩漬け作業などを続けていた。

ちなみにであるが、ゴーレム君でスタンピードに向かい発進する時に、景気付けに叫んだ「ジェロニモ!」というセリフがゴーレム君の名前だと集落の方々に思われたらしく、今さら、

『いや、ゴーレム君ですよ』

とも言えずに、

『まぁ、戦いながらアパッチの雄叫びっぽい奇声もあげていたし、ジェロニモでも良いか』

という事で、僕の愛機は誰にも知られずにしれっとジェロニモに改名する運びとなった。

解体待ちの魔物の肉を狙って肉食魔物もだがスライム達なんかが群がらない様に騎士団の方々による見回りもはさみつつ朝まで交代制で解体作業を続けているが、

『助っ人全員で取りかかっても、まだ地竜だのイボイノシシの親分みたいのも血抜き作業をしただけで転がっているからなぁ』

と、まだまだ終わりの見えない解体作業にも飽きてきた頃に、朝日と共にゾロゾロと東の集落にコーチャーのあちこちからスタンピードを蹴散らしたジェロニモや倒された魔物の山の見物ついでに魔物の解体を手伝いにきてくれた他の集落の方々が到着し、彼らは手際よく魔物の皮を剥ぎ、骨から肉を切り出しながら、

「この鉄のデカいのが、こんなに倒しちまったのか?」

などと、スタンピードから集落を守ったチームにその時の話を聞きながらテキパキと作業をしている。

僕はその光景を見て、

『この分なら今日中に解体作業が終わるかな?』

などと思っていると、東の集落の里長さん達が、

「昨日からお世話になりっぱなしで申し訳ありません。 後の作業はこちらで、引き受けますので、どうか皆様は集落の中でお休み下さい」

と里長さんが、集会場を僕たちの宿として貸してくれ、

「一番働いて下さった英雄の皆様まで殆ど寝ずに作業をさせていたなど集落の皆が笑われてしまいますので」

というお言葉に甘えて、僕たちは丸太の壁の中で少し休む事にしたのである。

避難用に降ろした旅の荷物も馬車に積み直されて、ブドウパン達馬魔物チームも集落の中の牛魔物用の柵の中でのんびりとゴハンを食べており、

『これは何から何まで、ありがたい』

と、集落の方々のもてなしに感謝しつつ、全員解体作業で血みどろ状態の僕たちは、

「では先ずはお風呂からだな!」

と馬車からタルを降ろし、リーグさんとバルディオさんが慣れた手つきで目隠しテントを広げてくれると、ダグさんがタルを水生成魔法で満たしてくれ、あとはカサールの町の隠れた名物である魔石式湯沸かし棒をブチ込めば簡易シャワールームの出来上がりである。

湯船となる大型のタライでもあれば旅先でのんびり風呂も楽しめるのであるが、短時間で旅のメンバー全員をサッパリさせるには沸かしたお湯で体を洗うだけになってしまう。

体の芯から温まりはしないが、それでもカサールより少し暖かいとはいえこの地方の冬の寒さを凌ぐのには大変重宝している。

僕がシャワーを浴びて着替えると、ノリスさんが、

「集会場に寝床を用意してあります」

と教えてくれ、マイラさんは、

「汚れた衣類は私たちが洗います」

と、集落の奥様達と洗濯まで買って出てくれたのである。

なので僕はマジックバッグから、

『急にお湯に入りたい時に早焚き用の2本目を持って来て良かった』

と、予備の魔石式湯沸かし棒を取り出して、マイラさんに、

「洗濯用の水も沸かして使って、水は冷たいだろうから」

と手渡して、ダグさんに、

「お風呂上がったからまた水をお願いね」

と次の人分の水生成を頼んでから、

「お先に失礼します」

と皆に頭を下げて集会場へと入り自分の寝床にインして眠る事にしたのである。

しかし、仮眠から深い眠りに落ちていく手前で、昼前頃にアンドリューさん達冒険者チームの、

「だから、我々の主殿はお休み中だと言ってるだろ」

とか、

「自分の国の民が世話になったのに、その功労者を呼びつけるとか正気か?」

という声と、

「いや、しかし、陛下が待っておられるのだ」

と困った様な声に起こされてしまったのである。

「なんだ?」

と呟くが、徹夜での作業て疲れている事もあり、ボーっとした頭のまま、

『面倒臭そうだから、まぁ、良いかな?』

と僕は条件反射的に二度寝をかまそうとしたのである。

しかし、

『ん…陛下?』

と寝ぼけた頭に引っ掛かるワードに僕は完全に目が覚めてしまい、

「仕方ないなぁ」

とモゾモゾと寝床から抜け出して集会場の玄関口に出ると、昨日の騎士団長さんが、僕を見つけ、

「おぉ、勇者ジョン殿!」

と何やら変なアダ名で僕を呼ぶので、

「あっ、人違いです。 お引き取りを」

と冷たくあしらい、アンドリューさん達に、

「皆もしっかり休んだ?」

などと質問していると、騎士団長さんは、

「昨日会いましたよね? モリブです」

と悲しそうな顔で見つめてくるので仕方なく僕は、

「もう何ですか? 陛下もお肉が欲しいのなら騎士団長さんから直接里長さんに相談して下さいよ」

と、それなりに相手をしたのである。

するとモリブ騎士団長さんは、

「かなり頑張って陛下に東の集落の来年の年貢を軽くしていただく様に進言すると、『勇者ジョンとやらを連れてきたら』という条件でして」

と、言うのだ。

どうやら彼は年貢を安くする為に城で僕の話を大袈裟に伝えたらしく、

『そんな奴が本当に居るのなら連れて来てみせよ』

ぐらいの感覚で僕は呼び出しを食らったみたいで、このゴタゴタを心配して集まった集落の奥様方からも、

「馬を全力で走らせれば数時間だし、馬車でのんびり来ても半日と掛からないのだから集落の惨状も見る為に王様が来るべきでは?」

と詰められて、板挟み状態のモリブ騎士団長さんが何だか可哀想になり、僕は、

「も~、分かりましたよ! 行けば良いんでしょ」

と半ばヤケクソ気味に答え、里長さん達に、

「何か国王陛下から呼び出しが有ったらしくて、地竜を一匹ほど手土産に出来たりします?」

と相談に向かうと、

「倒されたのはジョン殿ですので」

と快く譲ってくれたので、

「これを王様に渡して来年の年貢やらスタンピードから集落を守る件を取り付けてくるよ。 あと、そこの騎士団長さんも年貢の件でかなり頑張ってくれたらしいから優しくしてあげて、このまま冷たく接してたら多分泣いちゃうから」

とだけ伝えると、

「そんな事まで言わなくても」

と既に半泣きの騎士団長さんに、

「アレだよ。 あの未解体の地竜が陛下のだから運搬ヨロシク!」

と丸投げした後に、

「バルディオさん、アンドリューさん達と一緒に僕と城まで行ってくれる?」

と、聞くとバルディオさんは、

「城攻めですか? 主要な騎士団をこの地に足止めしている間に一気に城を落とす計画とは、流石です主殿!」

などと、分かりやすく騎士団長さんを驚かす。

どうやらバルディオさんも頑張ってくれた人間を呼びつけるというこの国の王様とやらにカチンと来ていたらしく、要らぬ殺気を放ちつつ悪い笑みを浮かべたままアンドリューさん達冒険者チームと荷馬車に乗り込み、オロオロしている騎士団長さんを一旦無視して、ダグさん達には、

「悪いけどダグさんはマイラさん達と、頑張ってる皆さんに炊き出しをヨロシク!」

とお願いし、リーグさん達には、

「ガーで辺りの警戒とノリスさんと一緒に集落の皆さんにもお湯で体が洗える様にしてあげて」

と指示を出した後に、僕も、

「一応、城で暴れるかも知れないからっ!」

と聞こえる様にジェロニモをマジックバッグに収納する頃には、騎士団長さんは、

「本当に止めてください。 小さい国なんですから…」

とポロリと涙を流していたのであった。