軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第116話 ドタバタ

まぁ、想像はしていたが、コーチャー王国の中心地はカサールの町より小さく、

「城にて陛下がお待ちです」

などと狼獣人のモリブ騎士団長さんが言っていた城は、

『良くてお屋敷だな』

と、感じる威圧感の無いサイズであった。

僕の乗せてもらっている荷馬車の運転席に座るアンドリューさんもだが、他の冒険者チームやバルディオさんまで、

「あれならば本当にイケそう」

とか、

「取り囲まれる前に突入した方が楽ですね」

などと、僕にまで聞こえる物騒な独り言を呟いているのは、

『王族だろうが失礼な奴なら、解ってるね?』

と、未だに僕たちに労いの言葉もなく、騎士団長に、

『連れてこい』

と、偉そうに指示をだしたその国王とやらに完全にムカついているらしく、皆の独り言が聞こえる位置で道案内の為に同行しながら、冬だというのに変な汗を滝の様に流して馬にパカポコと乗っているモリブ騎士団長さんに、僕が、

「どうしましたぁ、顔色がすぐれませんが?」

と、わざとらしく聞くと彼は上ずった声で、

「い、いえ、大丈夫です」

と、これ以上こちらを刺激しない為か口数が少ないのである。

それもその筈で彼は『連れて来い』という任務を優先して部下の殆どは陛下への贈り物としての未解体の地竜にかかりっきりであり、バルディオさん達から出発の時に飛び出した襲撃の話を、

『自分を怖がらせる為の冗談』

として聞いていたのだが、到着直前の城の庭でもまだ、皆から殺気を感じているらしく、彼なりにグルグルとここまでの事を思いだし、

『彼らは本当に怒っている? 確かに陛下の呼び出しは礼節に欠けるとおもうが、しかし命令は絶対だし…』

などと考えた結果、彼は、

『しかし、他国の為に命を張ってくれた彼らの怒りはもっともだ!』

と、ようやく理解したらしく、

『下手に刺激せずに陛下の元までとりあえず連れていく! でも、あとは知らない』

と、既に遠い目をしているモリブさんに、僕は、

「ほら、みんな昨日から夜通し働いて、やっと眠れた所を叩き起こされて、そして朝もだし、今は昼飯まで食べれなかったんだから、そりゃ~、イライラもするよねぇ」

と、ウチのメンバーの怒りが本物であり、それを知った国王陛下がどう出るかをチェックするという解りやすい関係改善のチャンスを与えたのである。

僕的には、

『まぁ、お昼でも出されてもてなされたりしたら許してやるかな』

などと、落とし処を考えつつ、自称『城』に到着した僕たちは、メイドさんの案内で客間に通され、その隙にモリブ騎士団長達が国王陛下に報告に向かったのである。

普通の平民は城の威圧感で緊張でもして貴族のペースに巻き込まれる所かもしれないが、僕とバルディオさんはニルバ王国にて本物の城を経験しており、冒険者チームも下手をすると依頼で関わった貴族のお屋敷よりも小さなこの城にビビる事もなくデンと構えていると、遠くからドタバタと騒がしい足音が聞こえたかと思うと、

「皆様、この度は我が国の危機を救って下さり誠に有り難うございました」

と、そのまま土下座でもしそうな勢いで深々と頭を下げながら1人のイノシシ顔の男性が入室し、その後ろから、

「陛下、卑しいヒト族にその様な!」

と男性をいさめるゴリラ顔のオッサンが入室し、どうやら陛下らしいイノシシ顔の謝罪姿勢を止めさせようとするが、イノシシ顔は、

「そなたの進言で彼らを呼び出したが、モリブからの話で我は目が覚めた!」

と結局イノシシ対ゴリラの揉み合いを見せられる事になり、そこに猫やら犬やらと集まりだす。

『も~、他所でやってくれや』

と呆れる僕たちであったが、どうやらこの小さいコーチャー王国にも獣人至上派閥やら多種族共存派閥みたいなのが有るらしく、つい先程までは国王陛下はゴリラ達の言う、

『強い者こそ素晴らしく、身体能力的に少し劣る半獣人は勿論、劣等種のヒト族など格下であり、そして、魔力はあるがひ弱なエルフなど論外!』

という力こそパワーな思想だったのであるが、ゴリラの言う通りにヒト族の僕を含む少しは獣人族の血を引いていそうなニルバ王国出身の冒険者達を偉そうに呼びつけてみたものの、モリブ騎士団長の話やらを冷静に聞いた瞬間に、

『いや、強さこそ至高ならば1人で地竜を倒した者こそ称えるべき! それなのに人種だけで見下すような振る舞いをしてしまった』

と、信じていたゴリラの言葉の矛盾に気がつき、己の意思で動いてこの部屋に乗り込んだ国王陛下に、ゴリラとその一派は遂に、

「陛下がご乱心された。 民の為に我らが立ち上がる時だ!」

などと言い出して、騎士団が手薄なこのチャンスに国王陛下を倒してクーデターでも起こすつもりらしく、バルディオさん達が僕を守る為に武器に手をかけたのを、

「あっ、良いから」

と静止した僕は、マジックバッグからニュルンと愛用のバーストランチャーを取り出して、

「とりあえず落ち着こうか?」

と麻痺毒の瓶を装填してゴリラの顔目掛けて発射すると、まさか外野から攻撃が来るとは思っていなかったゴリラは瓶の命中にて中身の効果ではなく瓶の固さで物理的に気を失い、周りの子分達も割れた瓶から飛び散った麻痺毒でうずくまり、そしてお屋敷の広さに対して目一杯無理した客間とはいえ、やや狭かったのが災いして、国王陛下達まで毒汁の餌食となり現場は地獄の様な惨状になっている所に、顔も体型もマーモットなメイドさんが、

「皆様、何か軽く召し上がれる物をと思いまして」

などとワゴンを押し入ってきて、この現場を見た後に、

「ぎゃあぁぁぁ!」

と、凄い形相で叫びコーチャーの城はサスペンスものの雰囲気に染まったのであった。

焦る僕の隣ではバルディオさんが冷静に、

「主殿、今ならこの国を取れますが?」

と真顔で怖い事を言うので、僕は、

「そういうの良いから。 とりあえずモリブさん達と協力して陛下達を安全な場所に運んで解毒しないとね」

と指示を出すが、冒険者チームは、

「あのぉ…」

と何やら指をさして僕に報告しようとするのでその指の先を辿ると、モリブさん達まで痺れてワナワナと倒れており、

僕は踏まれたアリさんみたいにビリビリと痙攣しているモリブさん達に、

「本当に使えないなぁ」

と文句を言いながらも僕は、この大惨事の原因である事も忘れて後処理作業に加わる事にした。

そして現在、スタンピードの件やらクーデターの件を陛下から感謝されつつも、僕達は、完全に自信を失くして、

「麻痺していましたが、声は聞こえてました。 はい、どうせ使えない騎士団長ですよ」

と、いじけるモリブさんを慰めつつ、

「城は今回のクーデターの処理で色々バタバタしており、もてなしも出来ないのが申し訳ない」

と、国王陛下にも頭を下げられて、再び東の集落に帰る事になったのである。

結局、城に行っただけとなった僕たちは、完全に元気の無い騎士団長に連れられて集落に到着し、代わりに騎士団の方々は今は落ち着きを取り戻しつつある城へと帰ったのである。

しかし、中心地からの助っ人の方々の半分以上は町に帰らずに、集落に留まり、

「明日、塩漬け肉を運ぶ為の迎えの馬車が来る予定だからもう一晩残るよ。 あと、炊き出しの手伝いもさせてくれるかい?」

などと、炊き出しの味を気に入ったらしく、レシピを覚えて自宅でも再現しようとしているので、お手伝いに来てくれた方々の為に、僕は、

「では、ダグさん今晩は皆で作ったカレーにしようよ、結局バタバタでご飯食べ損ねたからね。 スパイスを使いきってもカサールへの帰り道で買えるから」

と提案したのであった。

すると、冒険者チームからは、

「あの白い穀物の旨いヤツですか?」

と、期待の声が聞こえ、

『そうだ、農業に強いコーチャーの誰かなら、リィースって穀物の産地を知ってるかも知れない!』

と閃いた僕は、ダグさんに、

「リィースを炊いて見せて、皆から色々と食材についての情報を集めよう!」

と、鍋ごとに違う作り手のカレーを数種類作り、皆で味比べなどを楽しみながらビスティア地方の食材について聞いて回ると、

「あまりニルバ王国にも出荷されない凄く辛い香辛料が母の生まれた南の国にあるよ」

と聞けば、

『激辛カレーもつくれるな…』

などと夢が広がる有力な情報の中に、遂に、

「あの、このリィースを作っている地方の生まれなのですが、こんなリィースの調理法も見たことないもので、気になりまして…それに、この掛かっているスープのレシピって教えて頂けませんか? レシピ料なら払いますので」

と恐る恐る聞く教会のシスターさんは、今回スタンピードで亡くなった住人の弔い担当で派遣されてきたのであるが、誰も亡くなっておらず弔い作業の代わりに助っ人の皆さんの身の回りのお世話を頑張ってくれていた狐っぽい女性である。

彼女はリィースを主食にしている地方の出身であったが、地元でも臭みを取る為にたっぷりのお湯で茹でてザルにあけるという調理法しか知らず、鍋での炊飯にも興味津々で、しかも食べた事のないカレーライス…いや、カレーリィースに感動して、何とかレシピを地元に持ち帰りたいらしく僕たちにお願いしてくる。

なので僕は、

「商業ギルドに登録してあるから商売で使うのならお金が必要だけど、自宅で楽しむ分には一緒に頑張ってくれたお礼に詳しいレシピは教えてあげるますが、その代わりと言ってはなんですが…」

と、交換条件として彼女からリィースの事について詳しく聞く事が出来たのである。

しかも、カレーリィースを気に入った東の集落の方々が、

「たまに回ってくる穀物でかさ増しにしか使ってなかったが、こんなに旨いのなら作ってみようかな?」

と、踏み荒らされた小麦畑にかわり米の栽培にもチャレンジしてくれるらしく、

「沢山収穫出来たら僕にも売って下さい!」

と、僕は旅の裏目的の種籾をすっ飛ばして契約農家までおさえる事が出来たのであった。