作品タイトル不明
第103話 反省からの
『ふぅ、危なかった』
と、冷や汗をかきながら豪華な宿屋の一番良い部屋にて開催した第一回マジックアイテム修復祭りを終了した僕は、魔力切れ寸前でフラフラしながらエルバート師匠に、
「どうです?」
と聞くと、師匠は鑑定ギフトを使い、
「うむ、良い物が見られた。 ダンジョン産のマジックバックと魔合金製の瞬足の腕輪に、ミスリル製の突風の短剣の3つが見事に直っておるぞぉ!」
と満足そうに教えてくれ、僕の様子を見たバルディオさんが、
「主殿…」
と心配して駆け寄り僕を座らせてくれたのであるが、正直もう眠たくて仕方ない。
「穴の空いたマジックバッグと変形した腕輪まではまだ大丈夫だったけど、魔力供給魔道具を使っているのに柄の文字の端が削れていただけのミスリルの短剣は、魔力を根こそぎだな」
と、フラフラ状態でボヤく僕に商人のテイカーさんは、
「一回ずつ魔力供給魔道具に魔石を補充してましたのに」
と、言いながら変な汗をかいている僕にコップの水を差し出し、
「旦那様、本日は少し早いですがお休み下さい。 修復の結果については明日の朝にでも」
と言ってくれたので、水を飲み干した僕は、
「ありがとう悪いけど先に寝るよ」
と奥の個別のベッドがポツンと有る無駄に広い部屋へとふらつきながら向かい泥の様に眠ったのであった。
しかし、早く寝たからと言ってもゴーレムコアの修復で鍛えに鍛えたはずの僕の魔力を空っぽ状態から完全回復するのにかなりの時間を必要としたらしく、目覚めた時には窓から差し込む光の感じから、
「ありゃ、昼前か?」
と、僕は呟き、先ほどから鳴り響く目覚ましがわりの自分の腹の虫の音に急かされながら起床し、
「晩飯がコップ一杯の水だったからな?」
と、グウグウと文句を言っているお腹を摩りながら居間に移動すると、バルディオさんが僕を見つけて駆け寄り、
「主殿、良かった」
と、サスサスと僕の体を念入りにさする様にチェックしたのちに、
「いつも、ゴーレムコアの修復をされた後に8時間程で回復されておりましたのに、なかなかお目覚めにならないから心配しました」
と、どうやら安心してくれた様で、落ち着いたバルディオさんに僕が、
「普段は完全に魔力が尽きる前に休んでたからね。 それよりお腹空いちゃったから何か食べ物ないかな?」
と聞くと、居間のテーブルで何やら楽しそうにしているエルバート師匠とテイカーさんが、
「ジョンよ」
「旦那様」
と僕を呼んでいるのである。
『なんだろう?』
と思いながらテーブルに座ると、テイカーさんが昨晩修復したマジックバックから、幾つかの包み紙や袋に入った何かを取り出してテーブルに並べ、師匠が、
「腹が空いているだろうと思ってな…護衛騎士の彼に旨い店を案内してもらって買ってきておいたんじゃよ」
と言うと、部屋の入り口付近で待機している師匠の護衛担当の騎士さんが、ビシッと聞こえそうな程に背筋を伸ばし、
「ま、マジックアイテムを修理出来る噂の修復師殿とは知らず、護衛対象である国家錬金術師殿の弟子の方とばかり、大変失礼を致しました」
と、彼はゴーレムファイトなどの警備には就いて無かった為に僕の存在をよく知らなかったそうで、上ずった声で謝罪し、
「お口に合うか分かりませんが、ダンジョンで腕を研く時に自分が良く食べている屋台や店の料理を購入して参りました」
と、一つ一つのメニューを説明してくれたのだった。
空腹の僕といえど食べきれない量の食べ物は、どれも出来立てホカホカ状態であり、騎士さんオススメの生野菜と鳥のグリルのサンドイッチは、生野菜はシャキシャキで鶏肉は肉汁が垂れる程に温かく、
「ダンジョンでは保存食が中心となりますので、この野菜と肉のサンドイッチがダンジョン帰りの最高の一品でして」
などという騎士さんの説明をBGMに、ソレを口いっぱに頬張る僕は、この瞬間に、
『そうか、時間停止機能!』
と昔の高名な錬金術師が挑戦しても手がかりすら掴めず、古の賢者ですら魔道具としてのマジックバックに再現出来なかった機能の凄さを体感し、この興奮を誰かに伝えたいが口の中がサンドイッチに満たされており、
「モゴモゴ」
と慌てる姿を見たテイカーさんは昨晩同様に水を差し出してくれ、エルバート師匠はニコニコしながら、
「こんな品は実際にダンジョンに潜っている冒険者か貴族しか扱えぬからなのぅ。 ほれ、この串焼きなど昨夜購入したというのにまだヌクヌクしておる」
と、満足そうに魔道具ではないダンジョン産の本当の【真マジックバック】とでもいうべきカバンから取り出した串焼きの包まれた紙を、
「何の肉と言っておったかのぅ? まぁ、忘れたが柔らかくて美味しい肉だったから、驚くのは後にして、先ずは食べなさい。 肉が気になるなら鑑定しようかのぅ?」
と僕に渡してくれたのであった。
「いえ、鑑定しなくても買ってきてくれた彼に聞けば分かりますので」
と、師匠の手を煩わせないように鑑定は遠慮した僕は、それから暫くはモッチャモッチャとフードファイターの様に大食いしたのであるが、結局半分以上は、
「残りはまた今度ね」
と、再び真マジックバックに収納した。
『食べ残しても腐らないし、温かいままなんて、最高じゃん!』
と、マジックバッグの性能は勿論、僕の腹の虫も大満足したらしく昨晩の修復について皆で話し合ったのである。
僕の魔力の失くなり具合と、エルバート師匠や皆の推測から、
『革素材がメインのマジックバックや古代のドワーフが作った装飾品サイズの魔合金のアイテムまでなら安全に修復できるが、ミスリル製の古代のエルフが作ったマジックアイテムの修復は魔力的に注意が必要かも』
という結論に至った。
ラベル先生から教わったリペアの魔法の説明では、欠損した素材を補う時には代わりとなる素材を用意するか、大量の魔力で素材を生成するかの二択があり、そのアイテムへの知識量に応じて使う魔力が減ったりする。
昨日の修復において他の種族より力の弱い古代エルフが物資の運搬の為に作ったであろう真マジックバックは、大きめの穴は有ったが素材として欠損はほとんど無く、有っても革素材であり、主に内部のエルフの技術で作られたルーン回路と言われる特殊な魔術回路が一部壊れた事で機能を停止していたらしく、未知のルーン回路を魔力で無理やり修復するだけで直せた。
そして次なるベルがダンジョンで拾った脚力を微上昇させるアイテムの同系統の上位アイテムである瞬足の腕輪は、混ぜられた魔物素材までは分からない未知の合金ではあるが、うっすらと魔物素材と金属の合金というのは僕の知識としてあり、状態も魔物にでも踏まれたのか変形していて、腕輪に古代ドワーフの名工が刻んだであろうルーン回路モドキまで変形して機能が失われていただけなので、歪みを直しただけで修復が問題なく出来たと判断された。
しかし最後のミスリル製の突風のナイフは、素材も、
『エルフにしか上手に扱えない未知の金属であるミスリル』
という知識程度な上に、
『刺した瞬間に相手を風魔法のバーストでノックバックさせる為のルーン回路』
という同じバーストの魔法でもバーストショットなどの魔術回路とは違うルーンなる未知の技術であるのに、僕は、
「柄の辺りの文字が消えてるだけだし大丈夫っしょ」
と侮り、そのどちらもを魔力で無理やり修復した為に魔力切れを起こしたと考えられた。
『削れたミスリルの部分用の素材も用意してからやるべきだった』
と、今更ながら感じる僕は、
「もしも、この短剣の壊れ方が、もう少し大きかったら気絶して2~3日コースの可能性も有ったんだもんな』
と、魔力供給魔道具の力を過信して無茶をした自分の行いを反省したのだが、その後すぐ、
「はい、反省終了!」
と、反省してばかりいられないので、僕は切り替えて、
「昨日のお婆さんの店に行って、今日はマジックバックを買い占めますよぉ!」
と宣言し、我が家の口座の管理をしてくれているテイカーさんに、
「テイカーさん、お金を商人ギルドで下ろしたいからヨロシク」
とお願いし、バルディオさんには、
「あと買い食い用に時間停止のマジックバックは今日はバルディオさんが担当ね。それと修復に魔石も沢山必要になるからギルドの素材屋にも行きたい!」
と、僕はウキウキで買い物に向かう準備を始めたのであった。