軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

異常な存在 77

「呆れた。多分、お父様はラーシュが自分の職業適性については黙秘すると思っているわよ? 勿論、お兄様達もね」

「あ、そうなの? まぁ、僕は自分が強くなる時間が大事だし、それならそれで良いけど」

リネアの言葉を聞き、あまり仕事が増え過ぎるのも困るのでそれだけ言っておいた。それに、リネアの目が鋭く尖る。

「結局、答えたいの? 答えたくないの?」

焦れたようにそう言われて、笑みを浮かべる。

「魔導技師のスキルは防御用の簡易基地を作るスキルと、遠距離攻撃や連続攻撃が可能な機銃系スキル。後は、人より小さなミニゴーレムと、人の倍以上大きなゴーレムを召喚するスキルとかがあるよ。そのスキルを組み合わせれば、対人、対魔獣、対軍を相手にしても戦えるだけの強さになる。身体能力的にはあまりパッとしないかもしれないけど、スキルが強い職業適性だね」

あっさりと魔導技師の基本的な情報を開示すると、リネアは再び目を丸くして間の抜けた顔になった。まさか、こんなに簡単に白状するとは思わなかったのだろう。

「……教えてくれるの?」

質問されたので、リネアには正直に答えさせてもらう。

「こんな情報なら何てことないよ。ただし、テオドーラ王国内の商人の職業適性を持つ人たちの訓練をして欲しい、なんて要望は受け付けないからね?」

「へ?」

一言釘を刺しておくと、リネアは予想通りキョトンとした。こちらがそんなことを言うとは、考えていなかったのだろう。

「だって、これまで戦闘では期待できないとされていた商人が強くなる可能性があるって分かったんだよ? まずは、全ての貴族で商人の職業適性を持つ人たちを訓練してくれって話になるよね? そして、その強さが分かれば今度は一般の民で士官希望の人達を集めることになる。そんなことになれば、僕はそれだけで忙殺されて自分のしたいことができないからね」

はっきりとそう告げると、リネアが目を瞬かせ、すぐに口を尖らせた。

「……そうなるとは限らないじゃないの。お父様だって、そんな無理やりラーシュを働かせたりしないわよ」

何不自由しない大国の王女。リネアのそういった部分が垣間見える発言だと感じた。それに笑い、首を左右に振る。

「さて、どうかな……はっきり言って、これまで貴族や騎士としては役に立たないとされ、数にも数えられなかった職業適性だよ? それが使えると分かれば、たとえ大国のテオドーラ王国でも有用な戦力として期待したくなる……と、僕は考えてるけど」

そう告げると、リネアは口を噤み、考え込むように眉根を寄せた。

これは、ゲームの中でも同様である。多くの者が戦士や弓使い、魔導士を育てていた。二人目のキャラクターを作る時に、ギルドの為に聖職者や盗賊が増えていき、最初から裏方を希望した者ばかりが商人を育てる。それが、ゲームが始まって半年くらいまでの状況だ。

しかし、一年も経過した頃、ストーリーイベントで盗賊のスキルが必須の事態が発生した。これにより、最も人数が少なかった盗賊が一気に増えることになる。

この経験はゲームの中での話であり、ゲームであれば攻略情報はどこでも得られることができた。それに、大半のギルドに物凄く詳しいプレイヤーがいたものだ。

だが、この世界は人生が掛かっている割に、そういった知識が広まっていない。それどころか、上級職すら幻のような扱いになっているのだ。まぁ、何の知識もなく命懸けで戦い続けるような人間が少なかったという理由もあるかもしれないが。

「戦士や、弓使いの訓練は良いの? それだって同じことじゃない?」

リネアが改めてそう聞き直す。薄々は勘づいているのかもしれないが、確認の為に聞いているのかもしれない。

「……戦士や弓使いなら、最初から戦えるからね。商人って職業適性は大器晩成だから、強くなるまで物凄く時間が掛かるんだよ」

そう答えると、リネアが首を傾げた。

「じゃあ、貴方はどうやって強くなったのかしら?」

シンプルな質問だが、聞きたいことを明確にする内容だ。やはり、リネアは頭が良い。

「パワーレベリングという手法だね。自分一人では絶対に勝てない相手に、勝てるメンバーで挑む。その際、自分は安全を確保しつつ、攻撃する。それに必要なスキルは遠距離攻撃だけだ。だから、このパワーレベリングという手法で一番困るのは、実は聖職者なんだよね」

そう告げると、リネアが難しい顔で唸る。

「……貴族の子息がやる戦闘訓練と同じね。遠くから弓を使って、少しずつでも戦闘経験を積ませることで強くするやり方ね。ただ、これをしても新たなスキルは得られないし、何年もかけてほんの少し強くなるだけと聞いたわよ?」

と、リネアが訝しむ。確かに、貴族の常識ではそうだろう。だが、そのやり方ではだめだ。

「その職業適性に合った武器を使うこと。あと、必ずスキルを使って戦闘すること。また、人数が増え過ぎると効果が減るので、できたら五人以内。最大でも十五人以内で行わないとね。ハーベイ王国でもそうだけど、何十人も護衛を連れて、戦士の職業適性なのに弓とかでパワーレベリングしても、そりゃ効果は薄いよ」

はっきりと断言する。どう考えても非効率的だ。もし百人前後なんて人数で戦うなら、中ボス以上の相手でないとならない。それでも非効率的だと感じるが、それが最低ラインだ。

「あ、だからラーシュ様は十人以内で魔獣狩りに出かけていたのですね」

僕の説明を聞き、イリーニャが成程と呟く。確かに、イリーニャには熟練度の上げ方や各職業適性の特徴などは教えていたが、パワーレベリングについて詳しく説明していなかったか。

「……つまり、ラーシュは今よりも幼い時から、そんな恐ろしい訓練を積んできたってことね? ラーシュじゃなかったら、頭がおかしいと思われるわよ?」

リネアは唖然とした様子でそう口にする。とはいえ、当時倒していたのは小型の魔獣ばかりだ。それほどの脅威ではない。

「まぁ、僕は僕なりに考えているからね。小さな危険はあっても、命を落とすような無茶はしないよ」

とりあえず、それだけ答えておく。