軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

狙い通り? 76

非公式の晩餐会が終わり、リネアとモニカに連れられて王城内を移動する。

「流石はラーシュね。すごく面白かったわ!」

リネアがご機嫌でそんなことを言う。

「うふふ。本当に、皆さん楽しい方々ね」

モニカも優雅に笑う。そんな二人に首を傾げ、生返事をした。

「え? そうですか?」

聞き返すと、リネアが人差し指を立ててにやりと笑う。

「あのお父様が完全に交渉で負けていたじゃない。どの国の王族や貴族が来ても、あんな姿は見たことがなかったわよ」

そんなことを言うリネアに、疑問を持つ。

「良いの? 王家の損に繋がる話だったんだけど」

そう尋ねると、リネアから不敵な笑みが返ってきた。

「大金貨何枚だろうと、テオドーラ王国全体から見れば大したものではないわよ」

と、リネアはこれぞ王族といった返答をする。贅沢者め。パンがなければお菓子をお食べくらいの名言を聞いた気がするぞ。

そんなことを思っていると、リネアは不意に目を細めてこちらを見た。

「……それに、テオドーラ王国にとって、大金貨数枚程度じゃ足りないくらいの利益になると思うわよ? 長い目で見れば、ね」

リネアがそう口にすると、モニカが目を輝かせる。

「あら? 本当に仲良しねぇ。これは楽しみだわ」

何故かワクワクしている様子のモニカ。それにリネアが肩を怒らせる。

「もう! そういう意味じゃないの!」

怒るリネアに、ころころと笑うモニカ。面白い親子関係である。まぁ、我が家と比べれば天と地の差なのは間違いない。羨ましい家族だ。

そんなことを思い、少し切ない気持ちで二人のやり取りを見ていると、そっとイリーニャが僕の手を握ってきた。驚いて振り返ると、イリーニャが優しく微笑んでいる姿が目に入る。

「……そうだね。僕の家族も負けてないよ」

イリーニャにそう告げて、仏頂面のアーベルとお酒が入って陽気になったミケル、ロルフを順番に眺めた。それに頷き、イリーニャが目を糸のように細めて笑った。

「はい!」

イリーニャは元気よく返事をする。その様子を見て、モニカが自分の頬に手を当てて歓声を上げた。

「可愛いわぁ~っ! リネアにもこんな時があったのかしら?」

「なんで覚えてないのよ!?」

モニカの言葉にリネアが目を見開いて突っ込む。面白親子である。

そんな感じで王城の中を案内され、二階の奥へ向かった。

「こっちの部屋をラーシュとイリーニャが使ったら良いわ。そして、その奥の部屋をアーベル達ね」

「はーい」

「あ、ありがとうございます」

返事をして部屋に入ってみる。扉はこれまで見た中では一番簡素だったが、それでも立派な木の扉だ。中に入ってみると、思っていた二倍は広い部屋だった。ダイニングのようなテーブルと椅子が並ぶ部屋があり、奥にもう一室部屋があるようである。

「ベッドは四つあるから、好きなのを使ってね」

部屋の中を探検していると、入り口でリネアがそう言った。

「凄く立派な部屋ですね……」

イリーニャが緊張した面持ちで呟く。確かに、イリーニャ達は侯爵家の実家にいた時も粗末な部屋で寝起きしていた。こんな立派な部屋は初めてだろう。

「凄いな」

「俺たちも部屋を見に行こうぜ」

「落ち着け、二人とも」

興奮してバタバタと廊下を走っていくミケルとロルフ。それにアーベルは眉根を寄せて叱責した。修学旅行かな?

そんなことを思っていると、アーベルが部屋を出る時にこちらを見て口を開いた。

「……後で、また来る」

「あ、はい」

一言だけ告げて去っていくアーベルに、思わず背筋を伸ばして返事する。まさか、僕まで先生に怒られてしまうのか。こんなに優等生なのに。

そんなことを思っていると、モニカが笑顔で手を振った。

「それじゃあ、後は若い人達で楽しく過ごしてね。今度、アイラちゃんとクリスちゃんとも会えたら良いわね」

そう言って、モニカは楽しそうに笑いながら帰っていった。あれこそが真の陽の者か。ゲーマーは殆どが陰の者である為、モニカの後ろ姿は眩しくて直視できない。

「……お母様は相変わらず自由ねぇ」

娘のリネアも困ったように笑い、そんな感想を述べる。そして、こちらに振り向いた。

「それで、ラーシュ?」

「はいはい」

名を呼ばれたので返事をする。こちらの返事に鼻を鳴らしつつ、目を細めて口を開いた。

「ちょっと話があるんだけど?」

「……えっと、それじゃあ、座る?」

そう尋ねると、リネアは何も答えずに椅子の一つに腰かけた。それを見て、対面の椅子に腰を下ろす。イリーニャは僕の斜め後ろに立っているが、横に座るように促した。

二人が座ったことを確認して、リネアは口を開く。

「結局、お父様の質問を上手く逃げたわね」

「ん?」

リネアの言葉に首を傾げて生返事をする。何を言っておるのだ。むしろ、聞かれたこと以上に話していたはずだ。

「他の職業適性については話していたけど、肝心の魔導技師っていう職業については何も答えていないに等しいでしょう?」

そう言われて、ハッとなる。

「そういえば、そうだった」

思わずそう口にすると、リネアは目を瞬かせて呆れたような顔になる。

「……え? 何も考えていなかっただけ? うっかり答え忘れていたの?」

リネアが間の抜けた顔でそんなことを言う。

「はっはっは。まぁ、良いんじゃない? 後で職業適性を研究している研究者の人と話をするみたいだし、その時に話そうかな」

笑いながらそう告げるが、リネアの表情は変わらない。

「呆れた。多分、お父様はラーシュが自分の職業適性については黙秘すると思っているわよ? 勿論、お兄様達もね」

「あ、そうなの? まぁ、僕は自分が強くなる時間が大事だし、それならそれで良いけど」