軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

逆鱗  19

そんなこんなで狩りをしつつ、獣人達の能力を把握しようと観察をしてみた。しかし、いや、やはりというべきか。実際に戦っているところを見ないと実力は分からない。

仕方がないので、自分から聞いてみることにした。

「ミケルさん、ロルフさん。職業適性って何かな?」

話しやすそうなところに聞きに行ってみると、二人は顔を見合わせつつ答えてくれた。

「俺らは弓使いだな」

「鷹の目使えるしな」

どうやら二人は揃って弓使いらしい。聞くと、ミケルは命中精度特化型で気配察知も得意らしい。ロルフは逆に連続で撃つのが得意なので、防衛では特に活躍しているようだ。

「……ミケルさんはレンジャー向きで、ロルフさんはハンタータイプかな。構成次第ではソロでもギルド攻城戦でも活躍できるし」

そう呟きつつ二人のスキル構成の理想形を想像する。一人で小さく頷いていると、怪訝な目で見られてしまった。

次に声を掛けたのはアーベルである。ちょうど狩りから帰ってきて小型魔獣を捌いていたので、少し遠目から声を掛けてみた。

「アーベルさん」

「む? ラーシュか……ちょっと待っていろ」

アーベルは低い声で返事をしつつ、小型魔獣の首に大ナタのようなゴツイ刃物を振り下ろして切断する。初めて会った時がこの瞬間だったら物凄く怖いだろう。まぁ、いまだに笑顔を見たことが無いので不愛想な職人っぽい雰囲気はあるが。

頬の返り血を手の甲で拭いながら、アーベルはこちらに歩いてくる。

「どうした?」

返り血を浴びたムキムキマッチョの獣人が僕を見下ろしながら歩いてくるのだ。ちょっとモフモフ気分にはなれそうにない。

そんなことを思いつつ、尋ねてみる。

「アーベルさんは戦士ですか?」

完全に見た目からの予想だ。すると、それに微妙な顔をされてしまった。まさか、この見た目で魔術師だとでもいうつもりか。

そう思っていると、アーベルは腕を組んで首を左右に振った。

「……恐らく、戦士だ。だが、スキルを覚えていない」

「え?」

思わず聞き返してしまう。すると、アーベルは更に険しい顔になった。あまり言いたくなかったのだろう。しかし、毎日狩りに出ていて、どうしてスキルを覚えていないのか。

これは、是非とも確認をしておきたいと思った。

「……一度狩りに同行しても良いですか?」

「何故だ」

「好奇心です」

そう答えると、アーベルは眉根を寄せてイリーニャに顔を向ける。

「……危険だぞ。俺は別に人間のガキが死のうが構わんが……」

「ら、ラーシュ様が怪我をするのは駄目です! 死ぬなんて以ての外ですよ!」

イリーニャが感情的に怒りを露わにし、アーベルは鼻から息を吐いて振り返った。

「……保護者が文句を言っているぞ」

「イリーニャ。心配してくれるのは有難いけど、今は村の戦力を把握しときたいなぁって……」

アーベルに言われてイリーニャの説得をしようとしたが、ぽろっと漏れた本音を聞き、アーベルが眉間に深い皺を作る。

「……何? 村の戦力を把握してどうするつもりだ?」

低い声が更に低くなった。これは、獣人を奴隷にしようとする輩のスパイだとでも思われてしまったかもしれない。せっかく村人たちからの疑いの目も無くなったというのに、ここで変な疑惑が生まれてしまうのは遺憾である。

仕方なく、僕の考えを一部伝えることにした。

顔を上げてアーベルの目を真っすぐに見つめ、誠意を込めて意見を口にする。

「正直、この村はいつ潰れてしまってもおかしくないと思っているんだよね」

「……なんだと?」

一言口にすると、一気に空気は剣呑なものとなった。しかし、それは仕方がない。村がいつ滅んでもおかしくないという事実を理解してもらわなくては話にならないのだ。

無言で威圧感を与えてくるアーベルを見上げ、気合いを込めて答えた。

「……この森の中を何度も移動して、何度も村を作って、犠牲を出しながら必死に魔獣と戦ってきたんだと思う。でも、それだと何かが起きたら村は……」

「黙れ」

村の未来について話そうとしたが、途中でアーベルに遮られてしまった。ここで刺激しても良くないだろう。言われた通り黙ってアーベルの反応を待つ。

こちらが素直に言うことを聞いたことで、アーベルは怒りを抑えるように目を閉じ、数度呼吸を繰り返す。漏れだすような怒気を感じて、イリーニャが僕を庇うように前に出てきた。その様子を横目に見て、アーベルは口を開く。

「……理由を聞こう」

無理やり自分を落ち着かせたアーベルを見て、自分の中でアーベルの評価が上がったことを感じた。恐らく、獣人達を率いる者として強い気持ちを持っているはずである。そんなアーベルにとって、村の未来が無いという僕の意見は聞きたくないものだろう。

だが、アーベルは村の為に聞きたくない意見を聞こうとしている。とても小さく未熟だが、アーベルには確かに為政者としての素質があるのだ。

あ、そういえばテンションが上がって思わず敬語を止めてしまった。まぁ、良いか。