軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

今は役立たずだが  18

あれから五日。気が付けばあっという間に時間が経っていた。

村、というより小さな集落だ。たった三日だというのに、全員と話をすることが出来た。

「あ、ラーシュ」

「お出かけ?」

「はーい。ちょっとそこまでー」

「気を付けてねー」

よく井戸の周りで雑談をしている二人の女性に声を掛けられ、笑顔で手を振って返事をする。二人とも二十代だが、子供が三人と四人という子沢山だ。ちなみに子供の年齢は僕と同じか少し上ばかりということで、もう大人に連れられて狩りに出ている。信じられない英才教育である。

色々と村で生活してみて、多くを知ることができた。

獣人達の村には名前もなく、簡易的な建物ばかりで、歩く道もきちんと舗装されていない。生活していくなら、生活インフラを整えるべきだとは思う。しかし、それが出来ないのだ。

理由は簡単で、大型魔獣の出現である。広大な森の中に集落を作るなら避けることのできない脅威だが、驚くべきは獣人達のポテンシャルだ。中型の魔獣や小型魔獣の群れなら獣人達は退けることができるという。村の人数は百人前後。極まれに百二十人を超えることもあるようだが、ほとんどが百人程度に落ち着くらしい。

対して、中型魔獣を普通の騎士団で相手するなら千人欲しいところである。精鋭ならば二百人程度でも相手することができるだろうが、安定して防衛することは難しい。それを百人程度の獣人達が防衛しているのだ。

だが、大型魔獣は流石に逃げることしかできない。なので、常に大型魔獣を警戒して周辺を探索しており、次に村を作る候補地も数か所準備してあるようだ。

物凄く過酷な遊牧民やジプシーといった雰囲気だが、この魔獣だらけの森で生き残るというのはとんでもないことだ。しかし、結果として老人や子供達が多く犠牲になっており、村には十歳から四十歳までの者ばかりである。また、そんな生活環境のせいか、村人達の職業適性はほとんどが戦士らしい。職業適性の鑑定には教会かそれに準ずる場所で行う必要がある為、鑑定はせずに身体能力の成長具合や何のスキルを覚えたかで判断しているようだ。

「お、ラーシュ君。森の奥は危ないぞ」

「イリーニャ。気をつけてな」

「はーい」

「ありがとうございます」

村の端に行くと、最高齢の男性二人に声を掛けられた。イリーニャと返事をしつつ通り過ぎる。

聞いたところによると、彼らは奴隷にされていた獣人達らしい。村で生まれた者も多いが、森近くの村で奴隷として働かされていた獣人が逃げ、幸運にも村に辿り着いたパターンもあるとのこと。そんな背景を知り、僕は貴族であるという出自を隠すことにした。

なので、この村ではただのラーシュ君である。何か肩書を付けるとしたら美少年、神童、麗しき天才児くらいだろうか。うむ。

そうしたことで、最初は警戒していた獣人達も徐々に僕に心を開いてくれた気がする。いや、まぁ一人ずつ声を掛けて雑談していると二、三日で打ち解けていただろうか。こちらが心配になるほど純粋な人々である。

森の入り口に立つと、イリーニャが少し心配そうに周りを見た。

「……ラーシュ様。こちらには狩りをしている人もいないようです。別の場所にしたほうが……」

「う~ん……村の人は皆、異常に強いからなぁ。僕がとどめを刺せないんだよねぇ。効率的なレベリングには向いていないから」

「れべるんぐ、ですか?」

ゲーム用語を出すとキョトンとするイリーニャ。そう、当初はゲームの世界に入ったのではないかと錯覚していたが、現実は違った。似ているのは職業適性とスキルのみであり、他は全く違う。魔獣に関しても似た存在はいるが、まったく知らない魔獣が大半のようだ。

なので、経験値の蓄積と現在のレベルを推測するのが難しい。そんなこともあり、とりあえず効率を考えて多めに狩りを続けるだけである。

村の周囲全てが森ということもあり、有用なポイントは幾つも発見していた。小型魔獣が通りやすく、かつ奇襲が可能な場所だ。理想は二、三発は一方的に攻撃できる場所がベストだ。

「頼りにしてるよ、イリーニャ」

振り返って声を掛けると、イリーニャは拳を握って頷く。

「が、頑張ります!」

と、イリーニャは元気よく返事をする。頼りにしていると声を掛けたが、実際にイリーニャは重要な戦力である。なにしろ、最低でもイリーニャはレベル三十を超えている。その証拠に、軽傷を治す治癒の小奇跡に加え、風の守りを覚えているのだ。本来なら途中で中奇跡を取るか恵みの雨を取得する場合が多いが、まだスキル取得の方法を検証中だ。

スキルの取得はゲームと全く同じというわけではない。法則性は何となく掴めそうだが、まだ時間がかかるだろう。仮にすぐに取得できるとしたら、イリーニャにはエリア内の複数人を治療する恵みの雨を取得してもらいたいところだ。これに関しては要研究である。

ただ、イリーニャがレベリング中に覚えた風の守りは物凄く有難いスキルだ。対象は一人だが、多くの物理攻撃を防ぐことが出来る強力なスキルである。一つの職業で最低でも八十以上のスキルがある中では、まず間違いなく取得するスキルといえた。

自分自身も理想とするスキル構成を目指しているが、イリーニャも最高の聖職者、そしてギルド戦特化の司祭、モンクに育成するというのも良いだろう。

そう考えると、今の環境は素晴らしいのかもしれない。危険は増えるが、レベリングに最適な状況だと言える。

「……下手をすると、獣人の村の全員をレベリングして精鋭百人のギルドを作ることもできるってことかな?」

これは、とんでもなくワクワクしてきたぞ。