作品タイトル不明
117 戦争の勝算
シェラビーの手筈で、早々に王太子と面談ができるようになった。
「戦場に行ってるはずの従兄殿が、どういうことだろう?」
会議で何度もバーミリオンと王太子ロドリゲスは顔を会せている。
不審に思っているのが、ロドリゲスの言葉にでている。
「戦場から逃げて来た、と思ってくれていい」
かつてのバーミリオンなら絶対に口にしない言葉を言うと、さすがのロドリゲスも口を閉ざした。
「そこまでか? 開戦したばかりだろう?」
「まだ互角だ。だが、死傷者は双方とも予想以上の数だろう。
ずっと聞きたかったことがある。
デセウス軍の武器が格段に強化されている。それの資金の調達はどうやってしたのだ?
国力をけなしているのではない。
なさけない話だが、王妃である母がデセウスの商人と懇意にしていて、王宮に荷物を取り寄せ、帰りの荷馬車には王家の金を詰め込んでいたのだ」
「商品の代金なら、当然払うべきだろう」
「その商品は、偽造紙幣だ。すり替えたというべきか」
「我が国を疑っているのか!? 国を追われた貴殿を受け入れたのは我が国だぞ!」
「そうだ、母の国だ。僕にもこの国の血がながれている。この国に来るまで思ってなかったさ」
商人が私欲を増やしていると思っていた。まさか国自体が黒幕だったとは。
ロドリゲスは口元にてをやったまま微動だにしない。
同席しているシェラビーも、椅子の背から身体を乗り出して固まっている。
「証拠はない。この国の国家予算を考慮して、大量の武器、兵器の購入額が突出していると思うだけだ。
そして、どうしようもない」
バーミリオンが頭を振りながら、お手上げだとジェスチャーをする。
「これを言ったわけは、その兵器に問題があるからだ。
戦場に身を置いて、初めて理解した。
急激に資金ができたために兵器を購入したのだろう。だが、兵器を扱う軍人を育てる時間はなかった。
そして、軍人の数が足りてない。
だが、大量の兵器があるから勝機があると、戦争に突入した」
戦場で大型兵器は軍人が扱っているが、実戦になって機能を使いこなせないとわかったということだ。
ロドリゲスは大きく息を吐いて、ソファに身を沈めた。
「わかったよ」
頭の中で様々なシュミレーションをしているのだろう、片肘をついて言葉は止まる。
その様子を見てバーミリオンは、偽造紙幣製造、すり替え、と上手くいって武器や兵器を購入したら、勝てると思った気持ちがわかる。
自分の思い通りになると疑わなかった。
少し冷静になれば、間違いに気がつくのに、苦言を言う者を遠ざけ、甘言を言う者を手元に置いた。
「だが、今のアトラス王国は混乱している。勝算は高いと誰もが思った」
それは、バーミリオンもロドリゲスもだ。
だが、兵器を使いこなせないとは思わなかった。たしかにどんな兵器、武器も訓練をして馴染んでいくのだ。
「今は互角と言ったな?」
ロドリゲスが確認するようにバーミリオンを見た。
「今なら、勝てないが、負けていないと?」
「これだけ頭が回るのに、どうして政略の婚約を壊したのだ?」
シェラビーの様子を確認しながら、ロドリゲスが口角をあげる。
「 己惚(うぬぼ) れていたからですよ。
世の中に絶対なんて、そうそうあるものじゃない、って身をもって知りました」
ナーディアは絶対に正妃になると思っていた。
だから、ナーディアと反対なタイプが気になったのかもしれない。
快楽的で、教養もそこそこ、知性もそこそこ、派手好きで気持ちを前面に出すタイプ。