軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

116 バーミリオンの決意

夜になってユークリッドは、 砦(とりで) に立ち戦場を見ていた。

砦に設置している砲台だと、国境を越えデセウス軍に討ち込むことが出来る。

これを打てば、戦争は長期化する。

「ああ、月が綺麗だ」

戦場にも久しく月の光は届く。

「ここが戦場でなければ、イレーヌをつれて来るのに」

月の光をさけて、二つの影がデセウス軍から出て行った。

バーミリオンとゾーテックである。

戦場から逃げ出すよう、息を潜めて闇に消えていく。

デセウス軍を指揮している総司令には、傷の治療の為に戦線を離れると、言ってある。

デセウス王は野心家で、戦争を停戦させないだろう。

バーミリオンは次期王である、王太子に謁見しようとしているのだ。

シェラビー王女から王太子に連絡を取れるだろう。

今までたくさんの過ちをおかしてきた。過去の過ちは無くならないが、これ以上過ちをおかすわけにはいかない。

戦場は、民が最初に死んでいく。

夜のうちに王都に駆け戻ったバーミリオンが連絡すると、シェラビー王女には午前中に面会することができた。

「お兄様に謁見ですか?」

シェラビーはバーミリオンの身体に巻かれた包帯が痛々しい。

「理由をお聞きしてもいいでしょうか?」

「この戦争で得るものはない。すぐにでも終わらせるべきだ」

「戦争には意味があります」

シェラビーは王女として教育を受けており、簡単にバーミリオンの言葉を肯定することはできない。

「デセウス王国は大量の最新武器で、アトラス王国を掌握できると思ったのかもしれないが、根本的に兵力が違う。

圧倒的にアトラスが多い」

それは戦争前の議会でも何度も言った。

「死傷者は、当初の予想をはるかに超えている。

この戦争が長引けば、民の不満は増長し、アトラス王国の二の舞になるかもしれない」

なにより、とバーミリオンは続ける。

「アトラスの王太子時代、王家は 傲慢(ごうまん) であった。

それは、高位貴族との対立と、民への圧制だ」

そして、神は王家を見捨てた。竜神の姿は、それであろう。

「僕も頼ってきた身であることは分かっていて言う。

この戦争は、勝てない。多くの民を失うだけだ。

負ける前に終わらせるべきだと思う」

バーミリオンが言い切るのを、シェラビーは聞いている。

バーミリオンの瞳が揺らぐこともなく、前を見つめていることに気がついていた。

「わかりました。

お兄様と会えるように手配いたします。

けれど、どうしてお兄様なのですか?

王であるお父様ではだめなのですか?」

「ありがとう、シェラビー。

陛下は野心が強く、きっとアトラスが手に入るまで止めないだろう。

その前に、民の疲弊と暴動の可能性が高くとも」