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作品タイトル不明

第四皇子と第三皇女の実力

第四皇子と第三皇女のペアが、第二皇子たちのチームに勝利!

これは、勝負の 行方(ゆくえ) を見守る帝国臣民たちにとって……ことに、決闘が行われたフィールド付近から直に見守っていた貴族たちにとっては、意外な結果であった。

実際、ブックメーカーのオッズにおいては、7:3で第二皇子側の配当が低くなっている。

だが、これも当然のこと。

スクリュースピンペガサス狼牙キックの威力は疑う余地もないが、それ以外の面に関しては、士気高揚を目的として盛りに盛った可能性大、というのが第四皇子の活躍を再現した映像――『勇者武闘タイゴン』への評価。

そもそも、あの動画に登場するジンバニア王立連合のマシーンたちは「線を極力減らして動かしやすくしました」と言わんばかりに単純なラインの、怪獣じみた機体たちであった。

実際にかの連合が主力として量産し運用しているM2――ピノキオのヒロイックな姿とは、似ても似つかぬ代物なのである。

しかも、ペアである第三皇女ディート殿下に関しては、そもそも、M2の操縦技術を有するというのが 宮内(くない) 庁から公式に発表されたばかりの新事実であり、その実力は未知数。

第四皇子が思わぬ人気を博したことに気をよくした皇室が、抜群の美少女として元より名高く、しかも第四皇子とは同年同月同日同時間同分同秒の生まれで関わり深い第三皇女も乗っけてきたというのが、大方の予想であった。

ならば実態は、スクリュースピンペガサス狼牙キックという大技が頼りのパイロットと、パイロットとは名ばかりのアイドル的存在によるデュオ。

対して、第二皇子は元から天才パイロットとして名高く報じられており、先日ついに果たした実戦デビューの映像も、公式に配信されている。

パートナーを組むテセス・ガスパーニ伯爵も、戦死した父の跡を継ぐまでパイロットを務めていた人物なのだから、最低限の実力は保証されていた。

ゆえに、予想された展開というものは、第四皇子が必殺のスクリュースピンペガサス狼牙キックを放つも、空振り。

M2戦の奥深さを知る第二皇子チームが、堅実にして実直な攻撃によって電磁シールドの上からスコアを重ね、撃墜判定を与えるというものだったのである。

だが、現実は違った。

「おお……なんということだ」

「まさか……まさか……!」

「模擬戦闘で、ああもM2が大破するとは……!」

試合を観た人々が……ことに、決闘に触れる機会の多い貴族たちが驚愕したのは、まずこのこと。

第二皇子の乗機として知られるミラン・ドンナー。

ガスパーニ伯爵の乗機として用意された重武装型のドンナー。

両機とも、もはや見る影もない。

ドンナーという機体の象徴であるブラウン管テレビじみた頭部は、どちらもズタボロにひしゃげ、内部の様々なセンサーが露わとなってしまっており……。

激しいぶつかり合いに耐え切れなかった四肢は、付け根の部分からもげ落ちてしまっていた。

試作品の悲しさということか、伯爵の機体を守っていた外部アーマーもすでに剥がれてしまっており、第二皇子の機体と共に、最重要であるコックピット部分の装甲を激しく損傷させてしまっている。

通常、M2というマシーンが、このような壊れ方をすることはない。

電磁シールドで覆われた機体が破壊されるということは、相応の出力を誇る粒子ビームや電磁兵装が直撃したということであり、そうであったならば、内部機構に致命的なダメージを受けた機体は、リアクターの核融合爆発によって消滅するからだ。

つまり、この状態は、そこまでいかぬダメージを、しかも、両機へ継続的に与え続けた結果ということ……。

一体、何があったというのか?

その答えは――武装化。

黒一色の陸上選手を彷彿とさせるボディシルエットと、頭部に備わった四つものカメラアイが特徴的な機体――タイゴン。

ワインレッドカラーがまぶしく、簡単に壊れてしまいそうなほど華奢なデザインの機体に、思わぬパワーを秘めていた単眼のM2――ベレンジャー。

第四皇子と第三皇女の愛機が、相手チームのドンナーをそれぞれ無力化して鈍器にし、打ち合った結果が今の有り様であった。

このような光景を見せられれば、人々の脳裏には、自然と二つの疑問が湧き起こる。

すなわち……。

「どうして、普通に戦わなかったんだ?」

「そうよ、スクリュースピンペガサス狼牙キックなら、一撃で撃墜できていたはずよ」

このことであった。

「いや……スクリュースピンペガサス狼牙キックは、そもそも模擬戦形式の決闘で使うには破壊力が高すぎる。

つまり、第四皇子は元から駒落ちのチェスみたいな戦いを強いられていたってことさ」

だが、どこにでもいる腕組み訳知り顔おじさんの解説によって、後者についてはあっさり解決。

したがって、残る疑問は前者のみとなった。

だが、これにもSNSを通じて解答が出された。

『もしかしたら……イラコ殿下たちは、M2戦闘の新たな地平を切り開きたかったんじゃないか?』

一つ、発想の切り口が生まれれば、そこから次々と思考を膨らませていくのが、人間というもの……。

『そうか……戦闘において、決して途切れることなく存在する質量兵器……。

それは、他ならぬ敵機そのものだ!』

『なるほど!

それが途切れているということは、もう勝負ついてるからという顔になる』

『つまり、敵機そのものを武器として扱えれば、いかなる事態においても武装が尽きる心配はないといえる』

『理論上…… サウザンド・カスタム(一騎当千機) となり得るわけか!』

なんという……説得力のある理論か!

これに感銘を受けた木星鋼人株式会社が、実際に超巨大な左腕が特徴のカスタム機を開発。

理論はともかく、玄人好みの扱いにくすぎる機体となったことから、一機たりとも売れることなく倒産の憂き目に遭ったというのは、まったくの余談である!

『つまり……一見するとよく分からない理由によって謎の同士討ちをしているようにしか見えなかった第四皇子たちは、俺たち帝国臣民に教導をしていたということか!』

『ああ……最初の撃ち合いも、宙間戦闘において、攻撃というものはどこからくるものか分かったものではないという心構えを、おれたちに教えたかったんだろう!』

『あるいは、互いの相手をしながら第二皇子チームも手玉に取れるという実力のアピールか』

『なんという……余裕!

なんという……力量!』

ともかく、重要なのは、不可思議すぎた第四皇子と第三皇女の行動に、合理的な理由付けがなされたということ。

「やっぱり、第四皇子は最強の勇者だったんだ!」

「それと互角の実力を持つ第三皇女も、さすが第四皇子と同年同月同日同時間同分同秒の生まれ!

実質的な双子であるだけのことはある!」

「この二人のペアにかなう相手は、果たして存在するのか!?」

「少なくとも、第二皇子が力量不足だったということは、あるまい!」

貴族としての財力と政治力の限りを尽くしてチャーターされたスペースクルーザー上では、そのような言葉が行き交った。

「それにしても、どうしてこれだけの実力者たちが、表に出てこなかったのだ?」

「やはり、庶子という出自と、皇女という立場から、喧伝しかねていたのではないだろうか?」

「ふうむ……難しいものよ。

だが、かくしてその実力が明らかとなったのは、めでたい!」

こうして、皇族の秘蔵と呼ばれるべき扱いだったのだろう第四皇子と第三皇女の実力は、万人が知るところとなり……。

「堂々たる決闘の末に、第四皇子殿下は敵の姫君を娶る権利を手に入れた」

「ああ……我らも遺恨を捨て、今後の銀河帝国を支えていかねばなるまいよ」

第二皇子を通じ、この決闘を仕組んだ勢力――対ジンバニア強硬派もまた、考えを翻すに至ったのである。

無論、当の第四皇子本人がそれを望んでいるかどうかなど、考慮されるところではない。

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なお、立場を問わず全ての人間がこの模擬戦に対して、一つ疑問に思っていることがあった。

すなわち……。

「「「「「どうして途中から音声が切られていたんだろう?」」」」」