軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

VSディート 5

「……っとに、うっとうしいったら!

かといって、撃墜しちゃうわけにもいかないし!」

ゴチャゴチャと武装を追加した割に、そのいずれも使いこなせていない重武装ドンナーの火砲を避けながら、毒づく。

先ほどから、イラコが操るタイゴンには遠慮なく精密射撃を加えているが、兄ペーターとその友人が操るドンナーたちに対しては、追い払うのが目的の牽制射しか放っていない。

当然、当てる余裕がないわけではなかった。

むしろ、その逆。

「……その気になれば瞬殺できるっていうのに、そうしないでいるのは、思ったよりフラストレーションだわ」

敵機が放ってきたレールガンの多層構造弾を、ベレンジャーの粒子狙撃銃で 狙(・) 撃(・) しながらつぶやいたのが、その証左だ。

習慣から機体を狙撃モードにしてはいるが、当然、超高速で放たれる弾丸を、目視して命中させているわけではない。

模擬戦の舞台となっているフィールド全体を俯瞰的に捉え、弾が飛んでくる未来位置へと粒子ビームを 置(・) い(・) て(・) い(・) る(・) のである。

単眼型カメラアイを狙撃モードに切り替えるのは、いわば置き撃ちと呼ぶべきそれの精度を高めるためであった。

「本当……ヘタクソな人たち」

兄であるペーターは世間から天才パイロットと呼ばれているだけのことはあり、もう少しは冷静さを残している。

が、テセス・ガスパーニ伯爵という青年の方は凡夫そのものというべき力量であり、完全に手玉へ取られている状況から、一種の恐慌状態に陥っているようだった。

ある意味、平常心でかかってこられるよりも、 性質(タチ) が悪い。

ディートやイラコが行う先読みというものは、相手が放つ殺気の他に、挙動から思考も読むことで行っているため、肝心の思考能力がバグを起こしていると、読みの精度も低下してしまうのである。

もっとも、その精度低下は多少のストレスとして感じられる程度で、間違っても、このベレンジャーに傷をつけるような結果にはならないのだけど。

「こんなヘタクソたちにイラコがやられるところを見るのは、やっぱり癪ね」

性懲りもなくブースターを吹かせようとしたミラン・ドンナーの進路を狙撃銃から放ったビームで塞ぎながら、つぶやく。

イラコも自分も、最終的には兄たちを勝たせるつもりでいるのだから、同じではないか……というのは、理屈でしかない。

自分以外にイラコがやられるというのは、何か嫌なのであった。

まして、自分が先落ちした結果、オッパイに目がくらみ翻意したイラコが、ペーターたちに勝利するような流れとなったら、目も当てられないのである。

あの馬鹿は……生涯寂しく独身でいるところを、たまにディートがからかってやるくらいがちょうどいいのだ。

「だから、千日手をどうにか超えてイラコを倒さない――と」

再びタイゴンに攻撃を加えようとしたところで、幼少期にクリスマスプレゼントとして受け取ったらしい黒いM2が、予想外の行動へと打って出た。

これまで、あの手この手でディートの裏をかき、瞬間移動じみた加速で距離を詰めようとしていた機体が、逆方向へと翻ったのだ。

そうして、タイゴンが接近戦を挑むのは――ミラン・ドンナー!

「お兄様を攻撃するつもり!?

――血迷ったの!?」

あるいは、やはりオッパイに迷ったか。

だって――プールでめっちゃあの王女のオッパイ見てたもの!

どのくらい見てたかと言うと、3000文字くらい使って延々と水着姿の脳内描写をしてそうな勢いだった。

アタシの水着姿には、1200文字くらいしか使ってなさそうだったのに!

「――くっ!

お兄様に当たっちゃう!」

反射的に粒子狙撃銃を向けようとして、断念。

すでにタイゴンは、バレリーナの跳躍じみた動きで、ミラン・ドンナーの背後を取っていたからだ。

今、チャージされた荷電粒子を撃ち放てば、ディートがペーターに撃墜判定を与えてしまう。

もはや、これまでか……!

そんなに巨乳が好きなのか……!

そう思ったが、タイゴンの取った動きは異なった。

粒子小銃を投げ捨てた上、マニピュレーターに新設された電磁式の付け爪を使うこともなく……。

ミラン・ドンナーの背に張り付いて、ヴァリアブル・ブースターポッドの基部を押さえ込んだのである。

そして、いつの間にか開かれていた友軍機用の通信回線から、イラコの叫びが響き渡った。

いわく……。

『スクランブル・ブラザー!』

「スクランブル・ブラザーですって!?」

スクランブルでブラザー。

それはつまり、緊急発進する兄弟という意味である!

「……まるで意味が分からないわ」

『まあ、見ていろ。

力を借りるぜ――兄上!』

そう言うと同時に、ブースターポッド基部を押さえるタイゴンの指が、わずかに突き刺さっていく。

ツインテールにまとめた銀髪が揺れ動く様も、動作の度にひらめくフリルのミニスカートも最高に愛しい妹ことエステの開発した追加武装――電磁格闘爪ラスティネイルが起動したのだ。

と、いっても、模擬戦用の低出力であり、基部とはいえ電磁シールドの干渉がある。

まさに、猫が飼い主の服越しに爪を突き立てたかのごとき行為。

だが、猫は猫でも、この黒い機体はタイゴン……虎の父とライオンの母から生まれるハイブリッドだ。

突き立てた爪は、確かな結果をもたらす。

すなわち、ミラン・ドンナーのヴァリアブル・ブースターポッドを誤作動させ、最大噴射させたのであった。

『――なっ!?

バカな!?』

兄――第二皇子ペーターが、驚愕の声を漏らす。

接触回線を開かれたタイゴン越しに、声が聞こえてきているのだ。

『たかが模擬戦用の電磁出力で、どうしてこんな故障が!?』

『たかが模擬戦用の出力でもこんな誤作動を起こせるくらいに、デリケートな部位なんですよ。

ディートが同じ装備のドンナー使ってた時、かなり研究しましたからね……。

申し訳ないが、そのブースターポッドに関しては、兄上より私の方が詳しい』

『バカな!?』

狼狽する兄だが、事実、ミラン・ドンナーはタイゴン自身のスラスター噴射と合わせ、猛烈な勢いでこちらに突進してくる。

操縦桿の付け根部……つい先日、セカンドバッグに仕込んでおいた隠しカメラで盗撮したエステの水着写真を見やった。

ミニスカート付きワンピースタイプの水着も最高に可愛い妹が設計したこのベレンジャーを受領するまで、ディートが使っていたのは、同じヴァリアブル・ブースターポッド装備のドンナー……。

小賢しい弟ことイラコは、抜け目なくその対策と研究を行っていたということだ。

『これが兄弟の力だ!

名付けて、第二皇子――ブレイクアアアァァッ!』

『お前なんか弟じゃなーい!』

喉を痛めそうなほどのシャウト&悲鳴と共に、ミラン・ドンナーを盾にしたタイゴンがこちらへ迫る。

二機分の推力を合わせ、単純な直線機動力ではこのベレンジャーすらも上回る体当たり……。

しかもこれは……。

「しつっこいわね!

追いすがってくるんじゃないわよ!」

『そうだ! イラコ! 止まれ!』

『ヘヘ……やーだよ!』

自分と兄の言葉なんぞガン無視し、回避機動を取ったベレンジャーに、ブラザージョイント中のタイゴン&ミラン・ドンナーが追いすがってみせていた。

ブースターポッドの基部を巧みに操ることで、乗っ取った兄機を強引に変更させているのだ。

これは――厄介。

なぜならば……。

「撃ったら、盾となってる兄様を撃墜してしまう……!」

そうなったら、こちらチームが勝ちに近付いてしまう!

それでは困るのだ……それでは……!

「……は!?」

その時……視界の端にふと収まったのが、この事態へついていけずオタオタとしている重武装のドンナー。

これだ!

これしかない!

電撃的な直感に身を任せ、ベレンジャーをそちらに躍動させる。

目には目を。

歯には歯を。

向こうが合体ならば、こちらも……合体!

最大機動で重武装型の背後を取り、叫んだ。

「ガスパーニ伯――シイイイィィルドッ!」