軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

81話 勇者の計算外その12

バルセイユ王の前で、ハイエルフを散々犯してやった。

あの顔、最高に面白かったなぁ。

今思い出しても笑える。

結局、国王を殺し、ハイエルフも殺した。

少し勿体ない気がしたが、エルフにはいい思い出がないので、近くに置いておく気分になれなかったのだ。

それにあのエルフは手垢が付きすぎて、勇者である僕にはふさわしくなかった。

「バルセイユへの奇襲は成功したのね」

「成功どころか大成功さ。こちらの被害はゼロ、金目の物も全ていただいて、剣の力も存分に試すことができた」

「あら、鎧は試さなかったの?」

リサの言葉に顔が引きつる。

正直、あの痛みとは無縁でありたいと思ってしまったのだ。

剣で事足りるなら使いたくはない。

「セイン、次のお願い事をしてもいいかしら」

「ちょっと待て。僕はお前の主だよな。どうして僕ばかりが動かなくてはいけない」

「これは宣伝なのよ。魔王を従える勇者がどれほど強いのか、世に知らしめないといけないでしょ? もちろん私が出てもいいけど、それだと魔王が恐れられるだけだと思うけれど」

体よく使われている気はするが、リサの言うことも一理ある。

魔王よりも勇者である僕を恐れなければ、意味はないのだから。

加えて城にいるだけではレベルアップはできないのだ。

すでにトールを追い抜いているとはいえ、まだ安心することはできない。

圧倒的差であいつに勝たなければならないんだ。

僕が全てにおいてあいつよりも上だってことを教えてやる。

「聞いてるセイン?」

「ああ、それで次はどこへ行けばいいんだい」

「それなんだけど、暗黒領域にある国々を潰してきてくれるかしら」

「魔族の国を僕に??」

どうやらリサによれば、魔族共は全てが魔王に協力的なわけではないらしい。

むしろ魔王に従うのはごく少数。

中立の立場を表明している国もあれば、彼女を始末しようと考えている国まであるらしい。

実に愚かだ。リサに従わないのは僕に従わないのと同じだ。

勇者と魔王が手を組んだのだから、伏して喜ぶのが普通だろう。

ヒューマン側もだが、魔族も馬鹿が多いな。

「魔王討伐の任を受けたトール達は、必ずどこかを通ってくるわ。いち早く察知するためにも、多くの国はこちらに引き込んでおきたいの」

「以前に言っていた、占術師のジョブを持つ奴に未来予測をしてもらえばいいじゃないか」

「あれは……時間がかかるのよ。一ヶ月位くらい待たないと結果が出ないの」

待っている間に状況が変わってしまうな。

彼女の考えるとおり、あまり使える手段じゃない。

だったら反抗的な魔族共を潰して、暗黒領域を掌握した方が現実的だ。

「トールが向かいそうなのは三つ。順番に可能性の高い国を潰してくれるかしら」

「兵は?」

「もちろん出すわ」

いいね、僕が軍を指揮するのか。

やりたい放題できそうだ。

くひっ。

「それと、アスモデウ国は一番最後にしてね」

「どうしてなんだ?」

「あそこにはムゲンと言う名の歴戦の戦士がいるわ。たぶん、今の貴方でも勝ち目はない。なにせ二人の勇者を退けた旧魔王の幹部なの」

「リサよりも強いのかい」

「私よりは劣るでしょうけど、一筋縄ではいかないでしょうね」

へぇ、レベル800のリサを警戒させるなんて、相当できる奴みたいだな。

でも僕にかかればそいつもすぐに死ぬさ。

その国に行く頃には、かなりのレベルアップを果たしてるだろうしね。

「はははははっ! 勝ったぞ!」

燃えさかる宮殿、そこで僕は王の首を兵士共に見せてやった。

戦く魔族にすこぶる気分がよかった。

宮殿の外では、 僕(・) の(・) 軍(・) が敵兵を取り囲んでいた。

これで落としたのは二つ。

あとはアスモデウ国のみだ。

レベルも急激に上がり150となっている。

剣と鎧の力でレベルは315にまで上昇していた。

とうとうトールでは手が届かない領域に到達してしまった。

200で自慢気にしていたあいつにはなんだか申し訳ないな。くくく。

さっさとそのアスモデウなんとかを、落として凱旋するとしよう。

「ぐはっ!?」

僕は蹴り飛ばされて地面を転がった。

「どうした勇者。まだ前勇者と前々勇者の方がしぶとかったぞ」

「このクソジジイ、ぶっ殺してやる」

「殺せるものならばな。ほれ、はよ来い」

鎧の力を使ってレベルを315にまで引き上げる。

渾身の力で切り下ろすが、ムゲンはするりと躱して見せ、すかさず炎の斬撃を飛ばす。

直撃した僕は大木に背中から叩きつけられ、血を吐いた。

こいつ、レアジョブの魔剣士か!

「トールと比べるとたいしたことないな」

「その名をどこで!?」

「知っていて当たり前だろう。わしの弟子なのだからな」

「ここへ、来たのかっ!?」

トォオオォルゥウウウ!!

また僕の邪魔をするのかぁぁああ!

「おじいちゃん、持ってきたよ」

「うむ、これで一つ厄介な武器を封じることができる」

「なにを……」

ムゲンは男装をした美しい女性からスクロールを受け取る。

きひっ、いいね好みだ。

どうせ勝てないならあの女だけでもいただくとしよう。

「 解(カイ) !」

「!?」

スクロールから光が放たれ、僕の目に直撃する。

《報告:誘惑の魔眼はスキル封じによって封じられました》

な、んだとっ!?

「トールに頼まれていたのだ。魔眼を封じて欲しいとな」

「よくも、よくも僕の目を!!」

「ほれほれ、お前の連れてきた兵が撤退して行くぞ」

振り返れば、ワイバーン部隊が続々とこの地を離れようとしていた。

ちっ、想定以上に守りが厚かったか。

これでは外の兵を引き込むことができない。

ここは退くしかないだろう。

「ジジイ、覚えていろ!」

「年寄りなんで忘れてるだろうな」

「おじいちゃん変な恨み買わないでよ」

「向こうが売ってきたんだ」

バーズウェルに飛び乗り、飛び立つ。

ここにトールが来たのか。

それだけでも収穫はあった。

ひとまずリサの元に戻るとしよう。

トールがアスモデウを通過したことを報告すると、僕はいきなり顔面を殴られた。

「使えない男! 自分がなにをしくじったか分からないの!?」

「どうして殴るんだ。僕が間違ったことを?」

「大間違いよウンコグズ! アスモデウには、この魔王城と繋がる緊急用の転移魔法陣があるのよ! つまりトール達はもう真下に来てるわ!」

馬鹿な。真下だと。

だったらすぐにでも向かわないと。

今こそトールを始末してやる。

「あー、アスモデウを先に攻めさせるべきだったわぁ。計算外。他の二カ国はヒューマンと取引してるから絶対立ち寄ると思ってたのに」

「もう終わったことだろ。それよりもトールを片付けないと」

「……そうね。考えてみればトールは勇者のジョブを持っていないのだから、恐れる必要はなかったわ。どうして警戒なんてしてたんでしょ」

リサはがらりと、憤怒の表情から笑顔へと切り替える。

彼女は僕の前にしゃがみ込んで優しく頬を撫でた。

「ごめんなさいセイン。つい貴方にイライラをぶつけてしまったわ」

「気持ちは分かるさ。僕もトールは目障りだからさ」

「やっぱり貴方は優しいのね。だから大好きよ。一緒に私達の覇道を邪魔する者達を消しましょ」

「リサ」

僕達は口づけを交わす。

……馬鹿な女だ。

今はまだ逆らえないが、いずれレベル差が埋まった時、また今までのように足下に這いつくばらせてやる。

僕こそが勇者。僕こそが正義。僕こそが世界の王だ。

誘惑の魔眼を失ったくらい、ほんの些細なこと。

トールさえ始末できればあとはどうだってできる。

あいつさえいなくなれば、僕は自由なんだ。

「トールを片付けてくるよ」

「気をつけてセイン」

僕は颯爽と城の地下へと向かった。