軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

77話 魔族の英雄と戦士

石材で覆われたシンプルな個室。

窓を開けるとすぐ真下では激流の川があった。

向かいの壁では無数の店と人が見える。

ピオーネが言っていたが、ここの夜景は実に素晴らしいそうだ。

今から非常に楽しみである。

ただ、ワクワクしつつ緊張もしていた。

「男は俺だけ……」

ベッドに腰掛けて先ほどの光景を思い出す。

受付を済ませ部屋に行く途中、裸にタオルを巻いただけの女性と何度もすれ違ったのだ。

しかも向こうは気にした様子もなく、平然と真横を通り過ぎていった。

その時の俺は、さぞ挙動不審だっただろう。

「よし、宿にいる間は一人で出歩かないようにしよう。そうすればトラブルなく無事に過ごせるはずだ。決まりだ」

コンコン。ドアがノックされたので返事をする。

ぴょこ、と顔を出したのはカエデだった。

「ご主人様、ピオーネさんが紹介したい方がいるとおっしゃっていますが、いかがいたしますか」

「会わせてもらうよ」

「では準備ができ次第訪問いたします」

そう言ってから、カエデはなかなかドアを閉めない。

隅々まで部屋を観察しているようだった。

「どうした?」

「いえ、ずいぶん女性部屋と違うなと」

「一緒じゃないのか」

「はい。お花が飾られた華やかなお部屋です」

女性優遇、と謳っているだけのことはあるな。

些細な点でも差を付けているようだ。

だが、俺としてはこれくらいのシンプルな部屋がいい。

無駄にゴテゴテ飾られたのはあまり好みではない。

「このお部屋はご主人様にふさわしくありません。受付に別の部屋がないか聞いて参りますね」

「待て、このままでいいから。この部屋で充分満足してる」

「ご主人様がそう言うのなら……」

カエデは少し不満そうだったが、納得したらしい。

宿なんて気持ちよく寝られればそれで充分だ。

それにこの宿には風呂があるそうなので、俺としては言うことがないくらいすでに贅沢な気分だ。

湯上がりで飲む酒は美味いだろな。

実に楽しみだ。

俺達はピオーネにとある屋敷へと案内された。

ただ、そこは地上にある建物と違い、壁の中に作られたものだった。

しかも谷のかなりのエリアを占有しているらしく、谷の間に架かった橋を経由して行ったり来たりする。

紹介したい人物が暮らすのはそんな場所の下層らしい。

狭い階段を下り、ようやく装飾の施された大きな門の前へと到着する。

「止まれ。何者だ」

「用がなくばすぐに戻れ」

門の前には、衛兵らしき二人の男性が立っていた。

ピオーネが前に出て顔を見せた。

「これはピオーネ様ではありませんか」

「うん。彼らはボクの連れだよ。ところでムゲン様はいらっしゃるかな」

「しばしお待ちを」

衛兵の一人が奥へと入る。

数分ほどして扉が開けられた。

「奥でムゲン様がお待ちです。どうぞお進みください」

「ありがとう」

本宅とでも言えばいいのか、ムゲンの暮らす屋敷は壁の中なのに煌びやかだ。

壁には絵が掛けられ、女性や男性を模した石像が至る所に置いてある。

一番奥の扉では、衛兵が立っていて俺達を見るなり扉を開けてくれる。

「よく来たなピオーネ」

「数ヶ月ぶりでしょうか閣下」

「うむ、もうそのくらいになるか」

謁見の間にてピオーネと俺達は、椅子に座る人物に一礼する。

白髪交じりの体格のいい男性。

服装は平民とさほど変わらないが、紺色のマントを羽織っていることで、彼が貴族であることは一目瞭然だった。

「トール達に紹介するよ。この方はこの国の公爵、ムゲン様だよ。二人の勇者と戦って退けた我が国の英雄なんだ」

「よせよせ恥ずかしいではないか。だが、どうしてもその時の話が聞きたいというなら、しぶしぶ話してやらんでもないぞ」

ムゲンは髭をイジりながらも、自慢話をしたくてうずうずしているようだった。

二人の勇者を退けたってことは、少なくとも二百歳以上ってことだよな。

かつての勇者と死闘を繰り広げた人物と会えるなんて、歴史的ロマンにドキドキしてしまう。

「む、この感じ……看破!」

ムゲンの力によって俺とカエデの偽装が剥がれる。

しまった、ムゲンには看破スキルがあったのか。

露わとなった本当の姿を見て、彼は髭を撫でながらニヤリとした。

「ピオーネよ、まさかヒューマンだと知らず連れてきたのではあるまいな」

「もちろん存じた上で連れて来ました」

「ほう、ならば何故なのか聞かせてもらおう。つまらぬ話だったら孫と言えど、ただでは済まぬと思え」

「承知しておりますお爺様」

お、お爺様!? 孫!?

そんな話聞いてないんですけどピオーネさん!??

「あ、ごめん、紹介が遅れたね。ムゲン様はボクの亡きお父様のお父上なんだ。おじいちゃん、この人達はボクの領地を助けてくれた冒険者で、トール、カエデさん、フラウさんだよ」

「ば、ばかもの、人前でおじいちゃんと言うな。威厳がなくなるだろう」

「でも、おじいちゃんの可愛いところをみんなにも教えたいのに」

「ぐぬぬ、ぐぬぬぬぬ、ピオーネや! わしのピオーネ!」

威厳などどうでもよくなったのか、ムゲンはピオーネに抱きついて頬ずりする。

孫を可愛がるただの好々爺にしかみえない。

しかし、相手は魔族の公爵、しかも並々ならぬ気配を感じる。

それとなくカエデにレベルを聞く。

「あの方、レベルが320もあります。スキルも強力なものばかり、ですがそれ以上に戦闘技術がずば抜けているように感じます。あとはジョブが魔剣士ですね」

「あのレアジョブの!?」

魔剣士――攻撃に魔法を付与する特殊なジョブだ。

通常ならできない睡眠や麻痺などの魔法を、攻撃にのせることができ、一般的には最強クラスのジョブとして認知されている。

欲しい。魔剣士のジョブがあれば、俺も炎の剣が実現できる。

この手でロマンを叶えることができるのだ。

《ジョブコピーしますか? YES/NO》

お? おおお?

そういえばそんなスキルあったな。

YESを押してみる。

Lv 305

名前 トール・エイバン

年齢 25歳

性別 男

種族 龍人

ジョブ

戦士

竜騎士

テイムマスター

模倣師

グランドシーフ

コピー・魔剣士

スキル

ダメージ軽減【Lv50】

肉体強化【Lv50】

経験値貯蓄【Lv47】

魔力貯蓄【Lv38】

スキル経験値貯蓄【Lv38】

ジョブ貯蓄【Lv2】

スキル貯蓄【修復中】

スキル効果UP【Lv50】

経験値倍加・全体【Lv50】

魔力貸借【Lv50】

スキル経験値倍加・全体【Lv22】

竜眼【Lv22】

使役メガブースト【Lv22】

ジョブコピー【Lv22】

超万能キー【Lv-】

権限

Lv5ダンジョン×1 使用中

本当にコピーしている!

こ、これで俺も炎の剣が使えるのか!

しかし、コピーっていくらでもできるのだろうか。

気になったので、フラウの鍛冶師をコピーしてみる。

すると魔剣士が消えて鍛冶師がステータスに記載された。

コピーできるのは一つだけのようだ。

だが、それでも充分に素晴らしいスキルである。

改めて魔剣士をコピーして俺はほくほく顔となる。

「おほん、恥ずかしい姿を見せてしまったな。それでここへきた話を聞かせてもらおうか」

「トール達は魔王を倒しに来たんだ。だから協力してもらいたくてさ」

「魔王を……それはずいぶんと穏やかな話ではないな」

ムゲンの目が俺に向けられ、全身に殺気がのしかかる。

今まで出会った誰よりも冷たく強烈な気配。

以前の俺ならこの場にいるだけで気絶していただろう。

不意に殺気がなくなる。

「わしの殺気に耐えられるのならある程度はできそうだな。よろしい、話を聞くだけ聞いてやろう。協力するかはその後だ」

「ありがとうおじいちゃん!」

「そうだろそうだろ、いつだっておじいちゃんはピオーネの味方だからのぉ」

ピオーネと俺に対する落差が激しい。

本当に協力してもらえるのだろうか。

今からすでに不安だ。