軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

178話 元勇者の底辺冒険記その3

森の中を死に物狂いで走る。

後方からはゴブリンの群れが追いかけていた。

「ぐぎゃぎゃ!」

「これは僕のだ!」

腕一杯に抱える果実。

これらは奴らの縄張りから得た物。

どうせ肉ばかり食べてていらないだろ。

これは僕が大切に食べてやるよ。

だから見逃せ。

しかし、ゴブリン共の速度は一向に落ちない。

いいさ、海岸まで出られればこちらのもの。

お前らは海には近づけないんだよな。

砂浜へ出ると、ゴブリン共は森の境目で足を止めた。

あっはは、ざまぁみろ。

僕を捕まえられなくて残念だったな。

しゃくしゃくと果実を囓って見せてやる。

「ぐぎゃぎゃ!」

「いで、やめろ、ぶち殺すぞ!」

ゴブリン共は石を投げた。

どすん。

大木が飛んで来て地面に刺さる。

僕は落とした果実を急いで拾い上げ、住居へと逃げた。

この地へ来て一週間。

砂浜にある自作の小屋から海を眺める。

ぐぎゅるるる。

ひもじい。

レベルさえあれば、いくらでも肉が得られるのに。

ここに生息する魔物は全てが僕より強かった。

それも桁違いに。

スライムでさえ僕を餌として襲う。

笑えない冗談だ。

もちろん地道にレベル上げはしている。

スライム程度なら、今の僕でも頑張れば倒せるのだ。

そのおかげでレベルは170台に入っていた。

でも足りない。

せめて200にならないと。

200になればゴブリン共も倒せる、はず。

ごろんと転がる。

ふと、部屋の隅に見慣れないものがあるのに気が付く。

キノコだ。

しかも薄茶色でつやつやしている。

鑑定で確かめると『食用可』と書いてある。

僕はそれを火で炙って食べることにした。

「――いけるじゃないか。うん」

キノコは炙っただけでも美味しかった。

歯触りも悪くない。

も、もう少し食べておこうかな。

キノコはまだ数本生えている。

よく見れば小さいキノコも無数にあった。

こいつらを育てて定期的に収穫すれば、ここでも食いつないで行くことができる。

二本抜いて火で炙る。

ん、この一本少し色が濃いな。

まぁ大丈夫だろう。

ぱくり。

「う゛う゛ぅ゛」

猛烈にお腹が痛い。

腸がぎゅるぎゅる音を立てて動く。

どうしてだ。ちゃんと食用のキノコだったんだぞ。

それともその前に食べた果実が腐っていたのか。

鑑定でキノコを見ると、恐ろしい事実を知ることとなる。

食用と、よく似た毒キノコが一緒に生えているのだ。

僕を騙したな!

キノコのくせにふざけやがって!!

「ひぎっ」

不味い。

漏れそうだ。

僕は立ち上がって、海でするか森でするか砂浜でウロウロする。

砂浜でするのはさすがに恥ずかしい。

他人の目がないとしても、オープンすぎるのはちょっと……。

森は襲われる可能性が高い。よし、海だ。

限界が近づいている為、足を大きく開いて歩くことができない。

波打ち際に着いて、僕はあることに思い至る。

このままだと服が濡れる。

でも、脱いでいる余裕もない。

どうする。どうする。

やっぱり止めよう。森に変更だ。

引き返して森に入った。

あああああああああああああああ。

ゴブリンを斬る。

残りの三匹は後ずさりした。

ようやく倒せるところまでレベルを上げた。

今の僕はLv200台、ゴブリンなら余裕で殺せる。

ははは、ざまぁみろ。

僕に仲間をやられて悔しいだろ。

「ぐぎゃ!」

「ひぃ」

逃げるのかと思いきや、ゴブリンの一匹が隙を突いて飛びかかる。

首を絞められ呼吸ができなくなった。

や、ばい。

死ぬ。

……。

…………。

………………。

「が、はっ!?」

遠のいた意識が一気に戻る。

あー、くそ、目の前がクラクラする。

視界がぼやけてて、何がなんだか――。

ぼやけていた輪郭がはっきりし始め、目の前にまだゴブリンがいることを知る。

だが、ゴブリンは青白い顔でぴくぴく痙攣していて、体中に黒い触手のようなものがまとわりつき、先にある管のような物が無数に刺さっていた。

触手は簒奪の鎧から出ていて、どくんどくんと何かを吸い取っているようだった。

《報告:六花蘇生が発動しました。残り四回》

目の前に表示がされる。

絞め殺されてしまったのか。

一回、無駄に死んでしまった。

しかし、この状況はどうなっている。

数分後にゴブリンから管が抜け、黒い触手は鎧の内部へと引き戻される。

「レベルが上がった!?」

ステータスを見ると、レベルが上昇していた。

もしかしてもしかすると、今のは経験値を奪ったってことなのか。

くひっ、くひひ。

簒奪者の鎧、最高じゃないか。

この日より僕は、この森の最上位捕食者となった。

それは森の中で獲物を探している時だった。

僕は妙な気配を感じ取り、木陰へと身を隠した。

「この辺りは穴場で、レベル上げにちょうどいいんだよ。ほどほどに強い雑魚がいて、死の森みたいにベヒーモスとかいないからな」

「盲点だったぜ。こんなところがあったなんて」

声が聞こえ、そっと先を覗く。

二人の男が草を掻き分け歩いていた。

冒険者だろうか、一人は革製の軽装備を身につけ、もう一人は漆黒のフルアーマーを身につけている。

片方はエルフだとすぐに分かったが、もう片方はフルフェイスで容姿は確認できなかった。

恰好から冒険者のように見えるが、正確なところは不明。

とりあえず冒険者としておこう。

情報を聞き出すにはうってつけの相手、どうにか生け捕りにしたいが。

「――誰かいるのか?」

「!?」

エルフが長い耳をピクリとさせて、僕の方へと話しかけた。

やはりエルフの耳は誤魔化せないか。

彼らは聴覚だけならビースト族にも引けを取らない。

ここは大人しく姿を現そう。

「すまない。魔物と勘違いしたんだ」

「なんだ、ヒューマンかよ。無駄に脅かせやがって」

二人の男は安堵したのか僅かに警戒を緩めた。

その隙に鑑定スキルでどの程度やるのか調べる。

ふーん、エルフはLv202、黒い方は312か。

対して僕の方は330。剣と鎧で底上げしなくとも余裕で勝てそうだ。

ジョブもスキルも警戒に値するものはないが、装備はどうだろう。

……普通だな。はっきり言って敵じゃない。

「こいつ顔が良いな。捕まえて奴隷商に売れば、良い金になりそうだ」

「そうか? 金貨十枚が関の山だろ」

「ばっきゃろー、十枚は充分大金だろ。早く捕まえろよ」

「へいへい」

エルフがニヤニヤしながら剣を抜く。

僕はその瞬間、強い風が吹いたことを見逃さなかった。

こいつ、精霊を使う。それも風だ。

以前に精霊魔法を使うハイエルフを見たおかげだな。

いち早く違和感に気が付くことができた。

僕も剣を抜いて構える。

「ヒューマンとまともに戦う訳ねぇーだろ! 精霊!」

びゅ、鋭い風が吹く。

――が、それよりも速く、僕は地面を蹴って距離を詰めていた。

「びゃっ」

「このセイン相手に、だまし討ちは悪手だ」

切っ先が敵の喉元を斬る。

「ま、まじかよ」

「遅い」

間髪入れずフルアーマーの男に肉薄し、鎧から触手を伸ばし、隙間から突き刺す。

「ひぎぃいい!?」

この触手の先にある管に刺されると、全身が弛緩し、大型の魔物でも動けなくなる。

僕に近づいた時点で君の敗北は決定していた。

う~ん、おいちい。君のステータスは美味だ。

現時点で判明しているのは以下になる。

吸収できるのは経験値とスキル。

ステータスの吸収速度は、突き刺す管の数によって上下する。

擦り傷程度なら吸収の際に跡形もなく治癒する。

もちろん欠点も存在する。

吸収できる経験値は半分程度。

出せる触手は最大十本。

吸収にはかなりの体力を使う(触手を動かすだけなら平気)

ステータスの消化吸収にはしばらく時間がかかる。

しかしながら、得られる大きなメリットに比べれば微々たるものだ。

からん。地面に男のフルフェイスが落ちる。

「君もエルフだったのか」

「たすけて、みのがして……」

「ここが異大陸なのは間違いないようだけど、どうもヒューマンには生きにくい場所のようだ。当分の間、種族は隠蔽で隠しておかなきゃね」

フルフェイスを拾い上げてかぶる。

セインって名前も伏せておくべきかな。

代わりの名前を考えないと。

「君の名前は?」

「え、いど」

「それにしよう。今日から僕はエイドだ」

さぁて、エルフ君。

ステータスを吸いながら、じっくり話を聞かせてもらおうじゃないか。

君達の国の話を。

きひっ。