軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

魔術研究室

結局、魔術学院では政治的な部分での話が多くなってしまい、魔法陣や魔術について情報交換する時間が無くなってしまった。

次回は必ず時間を作ろうとバルブレアに言われ、その日は学院を後にする。

ちなみに生徒たちはしっかり学院内を案内してもらったらしく、講義の仕方や内容について話していた。

翌日、今度はクラウン・ウィンザーが私達を迎えに来た。

ちょうど食堂で朝食を終えて雑談をしているタイミングだったから良かったが、開口一番、挨拶もそこそこに研究室に行こうと言い出す。

「おはよう。是非ともアオイ殿に研究室をみせたいと思っていたんだ。さぁ行こう。何から見せようか? まずはやはり癒しの魔術の研究が進んでいるものを見せるべきか。それとも研究中の魔術を見てもらって意見を聞くべきか」

恐らく案内をしてくれようとしていたのだろうが、少々興奮気味のクラウンは途中から自問自答を始めてしまった。悩むクラウンに、私はひとまず落ち着くように告げる。

「クラウンさん、落ち着いてください。皆の準備が出来たらすぐに行きますから」

そう告げると、クラウンは「分かった」と言いながら周りでウロウロと落ち着きなく歩き出す。

テーマパークでアトラクションに乗るのを待っている子供のようだなどと思いながら、私はソワソワするクラウンを眺める。

やがて寝室に戻って準備をしてきた女性陣が戻ってくると、クラウンは今度こそと顔を上げた。

「よし、では研究室に行こうか。まずは、アオイ殿に是非とも水の魔術を見せたいと思う」

「水の魔術ですか?」

「あぁ、以前見た氷の魔術を忘れられなくてな。是非とも研究室の者たちにも見てもらいたい」

「成る程」

そんな会話をしつつ、クラウンが先導する形で研究室へと向かった。

研究室は王城の後方に隠れるように作られていた。全て平屋建てで、半円状をしている。他の建物は大体四角と三角を組み合わせたような形状が多かった為、少々異質だ。

また、半円状の建物の周りには必ず真四角の建物が併設されていた。大きさは半円状の建物の半分ほどだ。クラウンは四角い方の建物を指差して口を開く。

「この建物は各属性ごとの魔術の研究を行う為にあり、中には研究に使った資料なども保管されている」

そう言って、正面にある建物へと向かう。色は例に漏れず真っ白な壁だが、扉だけは黒い鉄板のようなもので出来ていた。

「ここが水の魔術の研究室だ」

クラウンはそれだけ言って、ノックもせずに扉を開ける。

扉の向こう側は薄暗く、外の光が差し込む毎に中の様子が徐々に見えるようになっていく。

正面には長いテーブルがあり、その奥に男女が三人立っていた。三人はテーブルに何かを広げて議論していたようだが、突然扉を開けられて驚いてこちらを見た格好で止まっている。

奥には壁面にびっしりと書物が並んでいるが、全て魔術書だろうか。

これはかなり楽しみだ。

と、そんなことを思っているとクラウンが一番に中に入っていき、室内の男女に声を掛けた。

「おはよう。今日はフィディック学院の上級教員であるアオイ殿を連れてきた。すぐに現在研究中の魔術を見せてくれ。意見を聞いておきたい」

「く、クラウン・ウィンザー!? な、何だ、いきなり……!?」

「フィディック学院の上級教員だと!? 見せるわけがないだろうが!」

突拍子もないことを言いながら現れたクラウンに、二人の男が眉間に皺を寄せて怒鳴る。

そのあんまりな紹介にしてもそうだが、どう考えても無理難題としか思えない指示も問題があるだろう。もしや、クラウンは一日研究室に用事があるとか言っていたのに、何も伝えていなかったのか。

とりあえず、一瞬で険悪な空気を作り上げてしまったクラウンの背中を軽く叩く。

「ちょっと失礼します」

そう言ってクラウンの隣に立ち、テーブル奥に立つ男女を見た。三人は揃ってこちらを不審そうに見ている。

「フィディック学院からきました。アオイ・コーノミナトと申します。こちらは同じく教員のお二人と生徒達です。本日はディアジオ陛下より許可を得て、こちらの研究室の見学をさせていただきたいと思います」

きちんと許可は得ていると伝えてから一礼すると、三人は一瞬言い淀み、顔を見合わせた。

「へ、陛下から?」

「私は聞いてたわよ。ここの研究室とは知らなかったけれど……」

三人はヒソヒソと会話をしてから、揃ってこちらに振り返る。そして、様子を窺うような表情で軽く顎を引く。

「……アオイさん、でしたね。クラウンが同行していることに不安はありますが、陛下の許可があるなら何も言うことはありません。どうぞ、魔術研究室を見ていってください」

ようやく話がまとまったのか、真ん中に立つ女性が見学を認めると言ってくれた。

やはり、筋道に気をつけて丁寧に説明すれば分かってもらえるのである。

そんなことを思いながら、私は首肯してから口を開いた。

「ありがとうございます。では、早速ですが、メイプルリーフ独自の水の魔術を教えていただけますか?」

理解を得ることができたと判断してそう告げると、何故か三人は顔を引き攣らせて動きを止めた。

そして、三人は顔を見合わせてヒソヒソと喋り出す。

「……おい、クラウンと同じじゃないか?」

「本当に陛下の許可がおりてるのか?」

「そう聞いてるけど……」