軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

学院外へ

翌日、改めて学長室に呼ばれて行ってみると、そこにはアラバータとクラウンの二人が先に待っていた。

何か話していたようだが、私が入室すると揃って口を閉じ、こちらを振り向く。

明らかに機嫌の良さそうなアラバータと、対照的に不服そうな表情のクラウン。何故かは知らないが、グレンも同様な雰囲気だった。

「おはようございます」

そう挨拶をすると、三人がそれぞれ挨拶を返してくる。返事をしつつグレンの顔を見ると、何故か微妙な表情でこちらを見ていた。

首を傾げていると、グレンが難しい顔で口を開く。

「……アオイ先生は、メイプルリーフ聖皇国の魔術についてどう思うかね?」

「メイプルリーフの魔術、ですか? まだ感想を述べられるほど詳しくないので何とも言えませんが、興味はあります」

そう答えると、アラバータが笑みを浮かべた。

「興味はある、と! よし! さぁ、グレン殿!? 次の質問を!」

私の回答に何故かアラバータのテンションが上がる。逆にクラウンの顔には明らかに不満そうな色が濃くなった。

私が来る前に三人で何かしらの話し合いがされたのだろうが、どんな内容なのかまではまだ分からない。とりあえず、私の回答がアラバータにとって良い方向に向いていたのは間違いないようだが。

そんなことを考えていると、グレンが眉根を寄せ溜め息交じりに口を開く。

「……ちなみにじゃが、メイプルリーフに一ヶ月ほど行って研究室と学院を見学できると言ったら、どう思うかね。まぁ、答えは分かっておるが」

「行きたいです。各国がどれだけ魔術研究が進んでいるのか自分の目で確認したいと思います」

答えると、アラバータが体を捻りながらガッツポーズを取り、グレンとクラウンが揃って溜め息を吐いた。

「やっぱりのぉ……いや、そう答えると思ったんじゃけどねー。今、アオイ君に抜けられると痛いんじゃよねー。どうしたもんじゃろうねー」

と、グレンは子供のように口を尖らせる。そして、クラウンはがっくりと肩を落として恨めしそうにこちらを見た。

「……この学院に長期間いることが出来たら、他国の魔術をこの目で……」

クラウンがぶつぶつと呟いた内容を耳にして、なるほどと頷く。どうやら、クラウンは私の勧誘を長引かせて、この学院でしばらく魔術の研究をしたかったようだ。確かに、様々な国の魔術師が学院内で研究を行っているのだから、この学院に留まっていれば楽に他国の魔術を研究することが出来るだろう。思惑が外れたから落ち込んでいるに違いない。

そして、アラバータは逆に私をメイプルリーフに連れて行くという目的が果たせると踏んで喜んでいるということか。

「では、私が責任をもってメイプルリーフ聖皇国への旅の準備をしよう。グレン殿、安心してくだされ。アオイ殿の滞在期間は一ヶ月。旅程としては負担の無いように片道一ヶ月で組ませていただく。途中の宿場も全て最高級の宿を手配して……」

上機嫌に話を進めようとするアラバータだったが、そこにグレンがしかめっ面で手を挙げる。急に挙手したグレンに一瞬皆の動きが止まったが、すぐにアラバータが声をかけた。

「……な、なんですかな。グレン殿」

戸惑いつつ用件を尋ねるアラバータに、グレンが苦笑交じりに私を見た。

「悪いんじゃが、メイプルリーフに行くかどうかを決めるのはアオイ君じゃから。ワシに決定権は無いんじゃよ」

「な……!? そんな戯言を誰が信じると!? グレン殿はヴァーデッド王国の上級貴族であり、この学院の学長ですぞ。いくら凄腕の魔術師であろうと、グレン殿が命令したら……」

「無理じゃ」

一般論を語るアラバータの言葉を遮り、グレンが否定の言葉を発する。それにはクラウンも顔を上げて頭を捻った。二人の視線を見返してからグレンは笑って答える。

「なにせ、アオイ君はわしがお願いして学院の教師をやってもらっておるだけじゃからの。嫌になれば学院を去ってしまってもおかしくないのじゃ。ヴァーデッド王国としてもアオイ君ほどの魔術師が他国に行ってしまうのは困るんじゃよ。だから、最終的にはアオイ君がどうするか、じゃ」

そう言われて、二人の目がこちらに向いた。それに一瞬答えあぐねたが、私の答えは決まっていたのですぐに口を開く。

「……私としては、自身の魔術研究の為にもメイプルリーフ独自の魔術は見ておきたいです。後は、せっかくだから生徒も何人か連れていきたいですね」

「生徒を?」

聞き返されて、首肯する。

「メイプルリーフの学院も見ることが出来るなら、授業のやり方なども見ておきたいですね。その際、生徒の視点から気づいたことを教えて欲しいと考えています。私は教師としてメイプルリーフの教育現場を見学し、生徒たちは生徒として学院の良い点と悪い点を見つけてくれたら双方の学院の仕組みや制度を改善することが出来ると思います」

そう答えると、グレンは顎を指でつまみながら唸った。

「ふぅむ、なるほど。どの国も機密保持の為に学院同士の交流も少ないからの。我が学院としてもアオイ君を派遣する意義が出てくるということじゃな」

グレンが納得した様子を見せた為、次にアラバータに顔を向ける。

「そういうことですので、メイプルリーフには私の他にも数名同行してもらうことにします。また、移動の時間を短縮したいので、私たちは別路にてメイプルリーフを目指したいと思います」

「……別のと言われても、我々が通るルートが最短ルートである筈なのだが……」

困惑を隠せずに曖昧な返事をしてくるアラバータ。だが、クラウンの方は目を開いて顔を上げ、興味をそそられたようにこちらを凝視していた。