軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

次戦

僅かな時間。二人の戦いは高度だったように思うが、時間にすれば一瞬の間である。

その僅かな時間の間に、勝負は大きく動いた。プルトニーは驚くほどの速度で地面に叩きつけられ、受け身も取れずにいたのだ。その衝撃にプルトニーは脳震盪を起こしたらしく、立とうとしても足に力が入らず、何度も地面に倒れ込んでいた。

その様子を見て、ストラスは警戒心を解かずにおり、プルトニーも諦めずに戦おうとしているように見えた。

だが、その二人を見て、マッシュは勝負が決したと判断する。

「それまでだ! 勝者はストラス・クライド!」

マッシュがそう宣言すると、武闘場は驚愕と悲鳴が入り混じり、混沌とした歓声が響き渡った。そして、勝敗が決まってプルトニーが悲痛な顔となる。

あまりにも一瞬のことであり、まだ意識はある。負けを認めたくないという気持ちがあるだろう。しかし、プルトニーは何も言わずにただ地面を睨んで唸ったのみだった。

それを横目に見つつ、ストラスは何も声を掛けずにこちらに戻ってくる。

「……治療をしてやってくれ。意識はあるようだが、身体がうまく動かせないようだ」

ストラスが少し心配そうにそう言ったので、ハイラムに目を向けた。

「ハイラム君」

「え? 嘘でしょう?」

名を呼ぶと、通路から顔を出していたハイラムがギョッとした顔で聞き返してきた。それに首を左右に振って答える。

「本当です。現在のプルトニーさんの状況は脳が衝撃を受けてしまったことによる脳震盪。発熱の恐れなどもあるので、頭を揺らさないようにこちらまで連れて帰り、頭を冷やして休ませてあげてください」

「ま、まぁ、それくらいなら……」

指示を出すと、ハイラムは少し不安そうにしながら武闘場内に入っていく。それを見て、マッシュが腕を組み、ラムゼイに何か言った。すると、ラムゼイが頷いてこちらに向かって声を上げる。

「其の方! 何をしておる!」

大きな声でそう叫ばれ、ハイラムが跳びあがるほど驚いた。不安そうに振り返るハイラムに片手を挙げて応え、ラムゼイの質問に回答する。

「癒しの魔術を使える者がいますので、治療をさせていただきます」

そう答えると、ラムゼイはわざとらしく驚いてみせた。

「なんと! メイプルリーフ聖皇国にしかないとされる癒しの魔術を使える者がいると!? そうか! よく見れば、そこの者はメイプルリーフ聖皇国のハイラム王子ではないか! ならば、お言葉に甘えるとしよう!」

ラムゼイがそう告げ、武闘場は新たに驚きの声が広がっていく。どうやら、ハイラムが治療しやすい状況を作ってくれたらしい。同時に、あっという間に負けてしまったプルトニーの印象を薄れさせようという思惑もありそうな気がした。

なにはともあれ、ハイラムはストラスと一緒にプルトニーを連れて戻ってくる。悔しそうな表情でされるがままになっているプルトニーを見て、少し心配になった。

「運が悪かったですね。次に戦ったら必ず良い勝負になるでしょう」

フォローをしてみる。しかし、それにプルトニーは首を左右に振った。

「……いや、負けは負けだ。ストラス殿を自分でも気づかぬ内に侮っていたらしい……ストラス殿、良ければ、また戦ってくれるだろうか」

プルトニーがそう尋ね、ストラスは無表情に頷き答える。

「いつでも挑んでくれて構わない」

「……ありがたい」

そんなやり取りをして、ストラスは壁の方へ移動した。勝ったのに喜ばずに静かに次の試合を待つストラス。だが、どこか嬉しそうだ。

「流石ですね、ストラスさん。我々も後に続きます」

そう言うと、ストラスはこちらを見て顎を引いた。

「頑張ってくれ。ケガはしないようにな」

それだけ言って、ストラスはマッシュ達の方に視線を向ける。そんなストラスに苦笑しつつ、同じように振り向いた。すると、マッシュは腕を組んで深く頷く。

「……ふむ。初戦はまさかの敗北だった! しかし、次戦は負けんぞ! こちらからはニニックが出る! そちらは誰だ!?」

マッシュが大きな声でそう言うと、グレンがすぐに手を挙げて前に出てきた。

「……さて、そろそろワシの出番が……」

グレンが何か言おうとした矢先、今度はフェルターが口を開く。

「陛下とアオイ、爺とオーウェン殿が戦うならば、俺がニニックと戦おう」

「Oh……」

フェルターが次戦に出ると言い出し、グレンがガックリと肩を落とした。その様子を見て、フェルターが首を傾げる。

「……複数人での同時戦闘ならばマーティンが強いが、個での戦闘ならニニックの方が強いと思っている」

フェルターがそう付け加えると、グレンは勢いよく顔を上げる。

「な、なんと……それはフェルター君の腕を試す良い機会じゃな! うむ! 無理をしてはいかんぞい? 危ないと思ったらすぐに棄権するんじゃぞ?」

と、グレンはフェルターの目を見てそう口にしたのだった。