軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

初戦

地面が揺れるような歓声の中、再びマッシュが口を開く。マッシュが発言する、その気配を察した観衆は口を噤み、歓声はあっという間に静まり返っていった。マッシュという人物を良く知らない自分であっても、これがカリスマ性というものかと納得させられる光景だった。

そんなマッシュが最初に戦う者を発表する。

「まずは、こちらからの一人目だ! 初戦、プルトニー!」

そう言うと、キツネのような耳の生えた力強い見た目の大男が前に出てくる。最初の時とは違い、魔獣の毛皮を使った野性味ある鎧の姿だ。

プルトニーは片手を挙げて歓声に応えながらこちらを見た。それに頷き、グレンに目を向ける。

「こちらは誰が出ますか?」

そう尋ねると、グレンが躊躇いつつも口を開く。

「そ、そうじゃのう。何となく最後に近づくにつれて強い者が出てくる気がするからのう。じゃ、じゃあ、わしが最初に……」

「俺がいこう」

グレンの言葉を最後まで聞くことなく、後ろからストラスが出てきた。ストラスはやる気に満ちた表情でプルトニーを睨むように見ている。グレンの台詞を無視したわけではないだろうから、単純に聞こえなかったのだろう。それが分かっているグレンは悲しげにストラスの背を見送っていた。

「では、ストラスさんで良いですか?」

一応、グレンに再確認しておく。すると、小さく頷き返された。

「それでは、こちらは教員であるストラス・クライドが戦います」

マッシュに返答すると、改めて初戦の内容を観衆に報告する。そして、控室へ続く通路の方へ戻っていった。それを見てから、こちらも同じように通路の方へ移動する。

武闘場の中心にはプルトニーとストラスの二人だけが残った。一気に高まっていく緊張感に、観衆も口を閉じ、場は静寂に包まれていく。

戦いの準備が完了した。そう判断したのか、マッシュはにらみ合う二人を眺めながら笑みを浮かべて試合開始を宣言する。

「どちらかが負けを認めるか、戦闘不能になれば終了である! それでは、はじめ!」

マッシュがそう口にした瞬間、弾かれるようにプルトニーが地面を蹴ってその場から姿を消す。

巨躯に似合わぬ俊敏さでストラスの背後に回り込みながら、プルトニーは細長い刺突剣のような得物を手にした。剣で攻撃するつもりかと思ったが、どうやら剣は魔術具のようだ。

プルトニーは剣を構えて口を開き、魔力を集中させる。

「…… 炎の剣(フレイムエッジ) !」

プルトニーが魔術名を口にした瞬間、手に持つ刺突剣の刀身に炎が生まれた。赤く脈打つように揺れる炎だ。そして、その剣を構えた状態でプルトニーが再び口を開く。今度は詠唱のようだった。四小節の詠唱をして、プルトニーは身体強化の魔術を発動する。

その間、ストラスはまだプルトニーの方向へ向き直り、詠唱をしている最中だった。一歩遅れただけで、大きな差が生まれてしまっている。

プルトニーもこれが機だと感じたのだろう。一直線にストラスへ向かって駆けだす。しかし、ストラスは冷静に魔術を行使した。

「 連なる鎌鼬(ワールサーブル) 」

そう口にした瞬間、ストラスの目の前に白い風の刃が発生し、プルトニーへと飛来する。幅三メートルはありそうな風の刃が、弾丸のような速度で次々に撃ち出された。それに気が付き、プルトニーは即座に地面を転がって回避行動に出た。

一瞬の判断だったはずだが、的確だ。炎の剣で防ぐ方法もあるかもしれないが、防げなかった時は致命傷を受ける可能性もあった。しかし、それを最少の動きで回避してみせたのだ。

ただ、連続で放たれた風の刃は完全に躱しきることは出来ず、魔獣の皮の鎧の肩部分を切り飛ばしている。それを一瞬確認し、プルトニーは険しい顔で再び地を蹴る。ストラスの魔術を見て、次の魔術を発動させる前に攻撃をしようと決めたのだ。

瞬く間にストラスの傍まで走り込んできたプルトニー。それに、ストラスは小さな盾を構えることしかできなかった。

だが、その盾は先ほど渡した魔術具だ。そして、ストラスはこの瞬間を待っていた。

プルトニーが炎をまとった刺突剣を突き出してくるタイミングに合わせ、魔術具を発動する。

「 風盾(ウィンドシールド) !」

魔術名を口にすると、盾の正面に風の壁が出現した。本来なら、炎を纏う刺突剣を防ぐことはできないだろう。だが、ストラスは盾の向きを斜めに変えていた。結果、プルトニーの剣は僅かに逸れ、攻撃が外れる。

それで生じた隙。それを見逃さず、ストラスは攻撃に移った。

魔術具で生じた風の壁を消し去り、抵抗が急に失われたプルトニーはその場でたたらを踏むようにして、前方に一歩、二歩と進んでしまう。

次の瞬間、ストラスは魔術具である盾をプルトニーの腹部へ叩きつけながら、口を開いた。

「 風盾(ウィンドシールド) !」

魔術具が完全に接触した状態で魔術名を口にする。すると、プルトニーの腹部で急激に渦巻くような風が発生する。その勢いは凄まじく、プルトニーはその場で風車のように回転してしまい、地面に頭から叩きつけられた。