軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

王都を目指す

晩餐会は楽しく、あっという間に時間が過ぎていった。フェルターがむくれる一幕もあったが、ラムゼイとフィオールの雰囲気もあり、皆が笑顔で過ごすことが出来たと思う。

そして、夜も遅くなってきたから、今日はどこかで一泊するかという話になった。

「ここに泊まれば良いだろう。もとより、そのつもりで準備をしておるぞ」

ラムゼイがそう言ってくれたので、エライザとシェンリーはものすごく喜ぶ。なにせ、この大きな城に泊まるのだ。もしかしたら大きな浴場なども使わせてもらえるかもしれないし、豪華な寝室で眠ることができるだろう。

もうこんな経験はできないに違いない。そんなテンションで盛り上がる二人だったが、その空気に水を差す一言があった。

「いや、もう時間が無い。我々は王都を目指すことにしよう。地図はないか」

オーウェンが真剣な顔でそう言うと、フェルターも無言で首肯する。それに、なんとロックスとハイラムも同意した。

「そうだな。あまり学院を休むわけにもいかないだろうし」

「まぁ、良いんじゃない? でも、馬車の中で寝るの? それは少し辛いかな」

などと言いながらも、どうやら夜間に移動することに文句は無さそうだった。これにはエライザとシェンリーも悲しそうな顔になる。

「え?」

「泊まれないんですか?」

そんなことを呟くが、声が小さくて埋もれてしまっていた。そこへ、追い打ちのようにストラスが頷いて答える。

「そうだな。学院を一週間休むだけでも他の教員に迷惑をかけているから……」

同意しようとするストラスに、エライザが無言で睨む。その視線に気が付いてストラスが首を傾げているが、結局視線の意味には気が付かなかった。

そして、グレンが苦笑しつつ立ち上がる。

「仕方ないのう。まぁ、わしも学院の長じゃからな。先を急ぐとするかの」

困ったように笑いながらそう言ったグレンを横目に見て、エライザとシェンリーも項垂れた。諦めたらしい。確かに、城での一泊は中々できない体験だし、気にはなる。しかし、それよりも古代の魔法陣を調査したいという気持ちの方が強かった。

「……ラムゼイさん。大変すみませんが、どうもすぐに出発することになりそうでして」

皆を泊める準備を行ってくれていたかもしれない。そう思ってラムゼイに謝罪しつつそう告げると、特に気にした様子もなく頷かれた。

「ふむ、そうか。それなら、俺が同行するとしよう」

「え?」

驚いて聞き返すと、ラムゼイは笑みを浮かべて立ち上がる。

「王都に行くのだろう? ならば、俺が直接行くのが適切だ。それに、古代の遺跡に立ち入るなら王家の許可がいるはずだからな」

「なるほど。でも、大丈夫ですか? 領地の仕事があるのでは?」

あまりにもあっけらかんと答えたラムゼイに、むしろこちらの方が不安になって尋ねた。だが、それにラムゼイは声を出して笑う。

「問題ない。一週間程度で帰れるだろう?」

そう言ったラムゼイの後ろで、フィオールが困ったように笑っていた。もしかしたら当主代行はフィオールなのかもしれない。本当に、素晴らしいパートナーである。

そんなことを思っていると、ラムゼイとフィオールが自然な様子で会話を始める。しかし、その内容には思わず首を傾げてしまった。

「さて、それならば準備をしておくか」

「鎧はどうされますか?」

「ふむ。一応持っていこう」

「分かりました」

そんな会話を聞いて眉根を寄せる。

「え? 鎧が必要なのですか?」

そう尋ねると、ラムゼイが苦笑しつつ頷いた。

「念のためだ。まぁ、気にするな」

ラムゼイはそれだけ答えて笑う。若干引っかかったが、ラムゼイに悪意が無いのは分かっていたので、何も言わずに頷いておいた。

王都へ行く準備はすぐに済み、ラムゼイは軽装ながら鎧姿で現れる。どうやら侯爵なのに世話係も誰もつけずに一人で同行するらしい。

「一人で来るのですか?」

一応、確認をしてみた。しかし、それにラムゼイは胸を片手で叩いて豪快に笑う。

「おお。俺に護衛などいらんぞ。それに、アオイ殿とオーウェン殿、グレン侯爵もおるなら十分過ぎる戦力だろう」

と、ラムゼイは少しズレた回答をした。何故か自国の王都へ向かうのに戦闘を意識しているようだ。どこまでもラムゼイらしい回答である。

ラムゼイは腕を組んで口の端を上げ、馬車を見る。

「さぁ、空を移動するのだろう? 馬車に乗れば良いのか?」

上機嫌にそう言ったラムゼイを見て、慌てた様子でモアが挙手をした。

「あ、あの! もし、良かったら、私がラムゼイ様の供回りをいたします!」

と、何故かモアが変な提案をした。それに、思わずフィオールが首を傾げる。

「……モアさんは国境警備隊の隊長でしょう? その間、警備はどうするのかしら」

静かな声での問いかけだったが、妙な迫力があった。職務放棄と思われたのかもしれない。それにモアは涙目で背筋を伸ばし、何か答えようと口を開く。しかし、言葉が出なかった。

そこへ、神妙な顔をしたチーフが現れ、代わりに答える。

「……副隊長のチーフです。私が、隊長不在の間は責任を持って警備隊を取りまとめ、国境の防備を固めます」

チーフがそう告げると、フィオールは少し難しい顔をした。しかし、すぐにラムゼイが笑いながら口を出す。

「おお、構わんぞ。モアは我が国最高の魔術師の一人だ。良い勉強になるやもしれんな」

ラムゼイがそう言って笑うと、フィオールは短く息を吐いて苦笑した。

「……まぁ、良いでしょう。しかし、我がケアン侯爵家にとって最も重要な責務であることは理解して、誠心誠意努めなさい」

「はっ!」

フィオールが許可を出すと、チーフが力強く返事をした。