軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

魔法陣の課外授業

「魔法陣か」

「実際に自分で作られる方は初めてですね」

ラムゼイとフィオールが感心したようにそう口にする。それに頷き、改めて平面の魔法陣を空中に描いた。

「そうですね。結局、魔力の操作と詠唱による魔術の方が新しい魔術を覚えるのは早いからでしょう。道具が不要であることも大きいかもしれません」

そう言ってから、平面の魔法陣を指差して話を続ける。

「対して、魔法陣には多くの知識と研究が必要になります。また、持ち運ぶのも難しいかもしれません。特別な素材を揃え、準備をして、更に運用する為の知識も持ち合わせることで初めて使うことが出来る。そんな難解さが廃れてしまった原因かもしれませんね」

簡単に詠唱の魔術と魔法陣の違いを説明してみた。すると、フィオールが片手を挙げて質問を口にする。

「……それでも、無視できない利点があるからこそ、アオイさんは研究をされている、ということですか?」

フィオールが質問を口にすると、奥に座るオーウェンが答えた。

「その通りだ。各国でも国宝、兵器として魔術具を所持しているだろう? 効果は様々だが、魔法陣を用いればそんな魔術具を作ることが出来るのだ」

オーウェンがそう答えると、ラムゼイとフィオールは素直に驚きを表現した。

「なんと、それほどか!」

「それは、ある意味で恐ろしい研究ですね」

興味を持つラムゼイと、真剣な表情で警戒心を持つフィオール。魔法陣というものへの認識が浅いからこその反応だろう。それだけ、ブッシュミルズ皇国でも魔法陣は過去のものなのだ。

「例えばですが、私が所持する魔法陣の一つがこの中にあります」

そう言って指輪を見せると、ラムゼイとフィオールは目を細めて指輪を凝視した。

「……これに、魔法陣が?」

「はい。作成は難しいですが、この指輪に取り付けられた宝石の中に魔法陣が刻まれています。大きくすると、このように……」

答えつつ、再び空中に立体魔法陣を描いてみせる。平面魔法陣を三つ内包した球形の立体魔法陣だ。パッと見では複雑に見えるが、中級相当の魔術である。

「これが指輪の中に刻まれているのか?」

「とても信じられませんね」

二人は好意的ながら、とても信じられないと驚いていた。まぁ、指輪に取り付けられた宝石は直径五ミリもないのだ。それはそうだろう。

なので、空中に浮かせた立体魔法陣を小さくして宝石と同等の大きさにまで縮小した。そこまで見たら信じないわけにはいかないだろう。唖然とした表情ながら、二人は爪よりも小さくなった立体魔法陣を凝視している。

「……驚くべき技術だな。それで、この魔法陣はどのようなものか」

数秒もの間動かなかったラムゼイが、気を取り直すように肉を齧り、そう聞いてきた。

「これは中級上位相当の火の魔術です」

そう告げると、ラムゼイは思わず噴き出した。

「ちゅ、中級相当だと? そんな魔法陣を、今この場で作ったのか?」

驚愕するラムゼイ。その横ではフィオールが目を瞬かせて固まっている。

「せっかくなので、こちらの魔法陣を発動させてみましょう」

そう言って魔力を流し込むと、魔法陣は少しずつ光度を増していく。それを見て、ストラスが少し焦った表情を見せた。

「お、おい」

気をつけろ。そう言われた気がしたので、ストラスに頷き返しておく。そして、魔術を発動させる。

魔力を流し込まれた魔法陣は、先に形作っていたレールに沿うように魔力が流れていき、必要なエネルギーを得て力が具現化していく。魔法陣の上部で炎が生まれ、軽くらせん状に回転しながら空へと打ちあがっていった。

その炎の帯を皆が見上げる中、高さ二百メートルほどまで打ちあがる。そして、弾けた。炎は細かく弾けて空に広範囲に広がり、夕日のように空を赤く染め上げる。シンプルな花火をイメージしたのだが、中々良く出来たと思う。

「おお……これは見事!」

「……綺麗ですね」

ラムゼイとフィオールが空を見上げて目を細める。文化祭でも似たものを見たと思うが、喜んでくれたようだ。

「例えば、今の魔法陣をどこかに設置しておけば、好きな時に魔力を流し込めばこのような魔術を発動させることができます。貴族の方以外でも、例えばお祭りの時などにも活用できるのではないかと思います。他にも光を灯す魔術や水を生み出す魔術、空を飛ぶ魔術など多くの魔術を魔法陣にして、魔術具を作ってしまえば、もっと生活は便利になるでしょう。そして、いつか驚くような魔術が開発されると思っています。だから、私は魔法陣を研究しているのです」

そう言って、二人を見る。すると、ラムゼイとフィオールは感銘を受けたように驚き、微笑んでくれた。

「……なるほど。その魔術への純粋さがアオイ殿の強さの根源ということだな」

「真摯であることは何よりも素晴らしいことだと思いますよ」

二人はそう言って、揃ってフェルターに顔を向けた。

「アオイ殿に師事するのは大変だぞ、フェルター」

「頑張ってね、フェルター」

二人が笑顔でそう言うと、フェルターは腕を組んで舌打ちをする。そして、何故かモアが複雑な表情でフェルター達の様子を横目に見ているのだった。