軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

魔法陣の基礎概論2

魔法陣とは何か。どうやって発動しているのか。それが魔法陣の基本だろう。

「魔法陣は平面上での円や多角形、記号や図形を用いて作られ、それに魔力を流して発動するものが初歩となります。この記号や図形は詠唱でいうところの各小節の一部といったところですね。それらを順番に並び替えて、どのように魔力が流れるか定める為に円だったり多角形といった適切な形状で纏める必要があります……」

黒板に描かれた魔法陣を使いながら説明する。

「上級や特級、癒しの魔術など、難易度の高い魔術を魔法陣にする場合は、多層の魔法陣や立体の魔法陣を作成する必要があります。それだけ、多くの記号や図形、魔力の流れの複雑化が発生するということですね」

そう言いながら、わざと八小節で一番簡単な小さな火球の魔術を発動する。小さな火の玉が空中に浮かんでいる光景を皆が黙って見守る。

「今のが丁寧に詠唱をした火の魔術ですね。それぞれ、魔力を変質させて火を生み出し、燃焼を継続させる為に必要な過程ですね」

「……その八小節を魔法陣にすると、こうなるということですか」

コートがそう呟くと、皆が黒板にある魔法陣を眺めた。記号や図形は十を超えており、魔法陣に詳しくない者が見ればかなり複雑なものに見えるだろう。とはいえ、これは基本である。個人的には詠唱の意味を明確に理解して新しい魔術を作り出すことと難易度はそれほど変わらないと思う。

「この詠唱、第一小節では魔力に指向性を持たせます。第二小節で空気中にある分子を活動的にし、第三小節でそれを加速させます。第四小節が燃焼に必要な媒介を作り出し、第五小節でようやく火種が生まれます。第六小節ではその火種に空気を送り込み、第七小節で更に燃焼を促進。第八小節でそれを継続するという流れですね。これらは詠唱による魔術全てに共通すると思っています。唯一除外されるのは癒しの魔術と精霊魔術です。癒しの魔術は恐らく詠唱言語や構成の仕方が違うと思われます。精霊魔術については全く仕組みが分かっていません」

そう答えると、コートや教員達が真剣な顔で何度か頷いていた。一方、初等部や中等部の生徒達の大半は難しい顔で押し黙っている。

少し脱線して難しい話になってしまったようだ。とりあえず、講義へと戻る。

「それでは、皆で火の魔術の詠唱を分解して、記号と図形に変換するところから学んでいきましょう」

そう言って、皆に紙を配って一つずつ丁寧に教えていく。

講義は順調に進み、終わる頃には講義に参加した者全員が火球の魔術の魔法陣を描けるようになった、と思う。

「おお、発動したぞ」

「詠唱せずに魔力だけ吸い取られるみたいで不思議だね」

「火の大きさは皆一緒なのか?」

参加者たちはそれぞれ魔法陣に魔力を流して火球を作り出して議論している。本当は実技の方でそれを行う予定だったが、まぁ、予習ということで良いだろう。

「皆さん、無事に魔法陣を描けたようですね。今後はこの概論を通じて魔法陣の意味や描き方を理解してもらい、実技で実際に幾つかの魔法陣を作って魔術を発動してもらおうと思っています。是非、実技の方にも参加してくださいね」

そう告げると、生徒達から順番に挨拶をして講義室から出て行った。だが、一部生徒と教員達は講義室に残っていた。

「どうしましたか?」

尋ねると、代表してグレンが挙手をして口を開いた。

「講義を聞いていくので精一杯で質問が出来なかったのじゃぞい! 質問をしたいのじゃが!?」

「え? 今からですか?」

驚いて聞き返すと、グレンだけでなく他の者達も頷いていた。

「講義の内容を記憶する為に質問する余裕が無かったな」

「講義が少し早すぎるのでは?」

「もう少し講義内容を分割して長い時間を掛けて教えても良いかもですね」

と、教員集団からダメ出しを受けてしまう。上手く出来たと思っていたが、どうやら講義が早過ぎたらしい。

「なるほど……それでは、次回はもう少しゆっくり講義を進めるとしましょう。それで、質問とは?」

聞き返すとグレンが頷いて答える。

「初等部で受ける最初の講義なら得意な属性を見つける為にテストをするものじゃが、そういったものは予定しておらんのかの?」

そんな質問を受け、首を左右に振って口を開いた。

「魔法陣に必要なものは発動に適した魔力だけです。何が得意で何が苦手、といったものは基本的には考えなくて良いでしょう。もちろん、明確なイメージが必要なものもある為、そういった魔術に関しては得手不得手があるかもしれませんが」

そう告げると、皆が目を丸くして固まる。どうしたのかと思っていると、オーウェンが肩を揺すって笑った。

「普通は苦手な魔術は極端に使えなくなるからな。驚くのも当然だろう」

オーウェンはそう口にして満足そうに頷いている。どうやら、魔法陣の有用性の一つを伝えられて嬉しかったようだ。一方、私はオーウェンのように素直に喜ぶことが出来ず、講義の内容を改善する為に頭を捻ることとなったのだった。