軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

魔法陣の基礎概論

色々と時間はかかったが、ようやく基礎の座学と実技の講義内容が決まった。オーウェンを無理矢理半日拘束して話し合いをした事が決め手になった。

「……講義は一週間に一回で良いだろう」

「いえ、座学と実技の二回です。お手伝いをお願いしますね」

「……分かった」

オーウェンも喜んで協力してくれるようなので安心である。講義内容が決まったからには、善は急げと早速グレンの下へ向かう。ちなみにオーウェンはずっとそわそわしていたので、仕方なく研究室に置いてきた。

「失礼します」

扉をノックして声を掛けると、中から扉が開き、グレンがひょっこり顔を出す。

「おお、アオイ君。もしや魔法陣の……」

グレンは期待に目を輝かせて呟く。先日は二人の魔術バカの会話を聞いていたのだが、そういえばここにも魔術に傾倒し過ぎてしまった人がいたことを思い出した。

「とりあえず、中に入るんじゃよ」

そう言って部屋の中に案内され、対面して座るようにソファーに腰かけた。こちらが話すのをうずうずしながら待っているグレンに苦笑しつつ、本題を切り出す。

「まだ基礎だけですが、講義の内容が決まりました」

「おお、それは良かったぞい! それで、どんな内容なんじゃろう?」

楽しそうに内容を聞いてくるグレン。それに頷いて答える。

「まずは、魔法陣とは何か。魔法陣の基本的なルールを説明しようと思います。次に、簡単な魔法陣の構成、属性ごとのくくりなどですね。最初の基礎概論でそれを学んでから、実技で簡単な魔法陣を実際に作ってみようと思っています。最初に作成する魔法陣は火の初級魔術ですね」

「おお! それは良いのう! 座学で学んだ内容を実技で体感してもらうわけじゃの? とても理に適った教育じゃと思うぞい!」

グレンは講義内容を高く評価してくれた。それにホッとしつつ、もう少し内容を詳しく説明する。

「はい。また、皆が勉強している詠唱による魔術を分解して分かりやすくしてみようかと思っています。詠唱魔術では小節ごとに魔力を操作、変質、発現させます。効果を発揮するまでの過程は形は違えど魔法陣と同じです。なので、基本となる詠唱魔術の小節ごとの効果を説明し、魔法陣のどの部分がそれにあたるかを説明して、分かりやすく出来たらと……」

「ぬぉおお! それは良いぞい! 確かに、通常の魔術を分解して魔法陣に当てはめるというのは物凄く分かりやすいのう! それに、副次効果として詠唱への理解力も向上するじゃろうし、これは良い講義になる予感がするぞい!」

大興奮のグレンである。いや、こちらとしては有難いが、全く新しい講義だというのにあっさり認めて良いのだろうか。

「特に問題はありませんか?」

気になって尋ねてみるが、グレンは親指を立てて輝くような笑顔で首を左右に振った。

「何も問題はないぞい! 今週のうちに講義を始めるかの?」

「いえ、来週からの予定です」

「くぁあああっ! 待ち遠しいのう!」

グレンは両手で空を掴むように何度も握ったり開いたりしながら叫んだ。

そんなこんなで、何とか来週から講義を始められることとなり、知らず知らずの内に自分でも気が引きしまる気がした。

そして、あっという間に翌週となる。

魔法陣基礎概論について自分の講義などで宣伝していたので、同数以上は来てくれるだろうか。そう思って講義室に入った私は、思わず目を見開いてしまった。

そこには全ての席が埋まっている光景が広がっていたからだ。それどころか、奥の壁際や窓側の通路にも何人か立っているくらいである。

「アオイ先生!」

「おはようございますー!」

「楽しみにしてます!」

私の姿に気が付き、一番にアイル達が元気よく挨拶をしてくれた。その横にはシェンリーの姿もある。ロックスやフェルター、コート、ディーン達の姿もある。後は、気になってきたのかストラスやエライザも壁際に立って参加していた。他にも、ヘネシーやフォア、スペイサイドの姿もある。

勿論、グレンとクラウンも最前列の席に座って微笑んでいた。いや、基礎なのだから、二人はもっと後方の席に座っておいてほしいところだが。

ちなみに、ついに初等部からも何人も生徒が講義に参加してくれていた。これが一番嬉しい。まだ講義が始まっていないのに、感無量である。

そんなことを思いながら講義の参加者の顔を順番に見ていると、意外な人物がいて驚いた。

「……え? バルヴェニー君と、ハイラム君?」

ぼさぼさになったウェーブのオレンジ髪の男と、紺色の髪の可愛らしい少年を見て、思わず名前を呼んでしまう。すると、ハイラムが肩を竦めて答える。

「文化祭の時にアオイ先生に興味が湧いたんだよね。それに、国がうるさいから……バルヴェニー先輩も同様でしょうけど、今やアオイ先生は各国の注目の的だし」

苦笑しつつハイラムがそう答えると、バルヴェニーが真剣な顔で首を左右に振った。

「……国は関係ないさ。以前から何度かアオイ先生に会う機会があったけど、毎回質問に答えてもらってないから、諦めて講義に参加しようと決めただけだよ」

「うわ、真面目ですねぇ」

バルヴェニーの言葉にハイラムは笑いながらそう答える。二人のやり取りに若干不安にはなったが、今回は重要な最初の講義である。

気を取り直して、講義を始めよう。