軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

アオイの名案④

「それでは、ドラゴンを呼んでみたいと思います」

そう口にしてから、合図である火の魔術を空に向けて放った。どこからでも見えるように巨大な火球を上空で打ち上げたのだが、何度か練習したおかげで僅か十数秒程度で空に黒い影が現れた。

かなり上空にいるのだが、その巨体故に翼を広げて飛んでいるだけではっきりと分かる。そして、それは生徒達から見ても同様だったらしく、空を見上げて騒ぐ生徒がどんどん増えていく。

中には逃げ出しそうな生徒もいたが、今のところ実際に離れた生徒はいない。それを確認してから、ドラコには空から降りてきてもらった。合図を送ると、練習した通りにゆっくりと地上へ降りて来る巨大な黒い影。

「お、降りてくるぞ……!」

「だ、大丈夫なのか!?」

「グレン学長も、アオイ先生もいるから、多分……」

そんな声も聞こえてきた為、すぐにでもドラコは私のペットであると伝えたかったが、今はまだその時ではない。ドラゴンは静かに地上に降り立つと、グレンと私の前で翼をたたむ。

大人しくその場で動かないドラゴンの姿を見て、慌てふためいていた生徒達も徐々に落ち着いていく。

「う、動かないぞ……」

「……それにしても、なんて巨体だ」

生徒達がドラゴンを間近で見てそれぞれ驚きや戸惑いを口にする。そんな中、言葉が少なめだった教員達も実際にドラゴンを目の前にして少しずつ口を開き始めた。

「……中型だが、成竜だな」

「上級教員二人。一般教員なら五人で止められるか?」

「いやいや、私を入れないでくださいよ? 戦闘は得意じゃないので」

興味深そうにドラゴンを観察する教員。何かあった時のことを想定して思考する教員。ドラゴンの脅威に対して逃げ腰になってしまっている教員。反応は違うが、それでも生徒達よりはずっと冷静だった。まぁ、生徒の中にもフェルターのように全く動じていない者もいるが。

グレンはそんな教員や生徒達の様子を横目で確認しつつ、目の前に座るドラゴンを見上げた。近くで見上げているせいで顎の裏側しか見えていないだろうが、ドラゴンの種類や大きさを確認しているのかもしれない。

「……ふむ、アオイ君のことだから最上位のドラゴンを呼んでくるかと思って内心焦っておったぞい。まぁ、この辺りの山脈や森林の規模だとまず生息しておらんから、十分過ぎるほど立派なドラゴンじゃが」

グレンは独り言のようにそう言って、ドラゴンの周りをウロウロと歩き回る。ドラコも足元を移動するグレンを不思議そうに見下ろしていた。

まるで熱帯魚か何かの品評でもしてるかのようなグレンの台詞もどうかと思ったが、とりあえず、本題に入ることにする。

「グレン学長。それでは、予定通りにドラゴンの見学会をしましょう」

「おお、そうじゃった! よし、それでは皆、ドラゴンに実際に触れてみるのじゃ! 安心して良いぞい! このドラゴンに危険はないからのう」

と、グレンは笑いながら皆に声を掛けた。ドラゴンを間近で見てテンションが上がったのか、グレンは先ほどまでの不安そうな様子から大きく態度を変え、ウキウキした様子で笑っている。その様子を見て安心したのか、生徒達の中からこちらに歩いて来る者も現れる。

「お、おい! 行ってみよう!」

「ドラゴンに触るなんて、本当に……!?」

「急げ! すぐに皆来るぞ!」

と、高等部の生徒達は喜んでドラゴンの下へと殺到してきた。十分な実力を持つ高等部の生徒達は恐怖よりも好奇心が勝ったようだ。あっという間にドラコの周りを高等部の生徒達が取り囲み、尻尾や足に触って驚きの声をあげている。

「これは、本当に鉄の鎧並みだぞ……」

「確かに、これなら剣や槍でも傷つけられないっていうのは納得だね」

「斬撃だけじゃないぞ。魔術にも耐性があるからこそ最強の生物と呼ばれているんだ」

生徒達はドラコの表面を覆う鱗に触れ、実際にドラゴンの表皮がどれだけ頑丈かと話し始めた。その様子を横目に、ストラスやエライザ、スペイサイド達が私の方へ歩いて来る。

「……アオイ。本当に大丈夫なんだろうな?」

「ドラコちゃん、良い子にしてますね!」

「ドラコ? それが名前ですか?」

三人はすぐ近くに来てそんな反応をした。

「はい。ドラゴンのドラコです。噂にもありましたが、少し離れた森林エリアに住んでいます。暴れないように言っているので、心配はありませんよ」

そう告げると、三人はそれぞれ納得したようだった。いや、ストラスはいまだに疑惑の目を向けてきている気がするが、一応口出しはしないでくれるらしい。

「アオイ先生!」

「大丈夫そうですね!」

遅れて、今回の作戦の手伝いをしてくれたシェンリーやアイル達も現れる。ドラコを学院内に呼ぶ為に練習を手伝ってくれた面々だ。

「はい。皆さんのお陰です。それに、急遽助力をお願いしたのに了承してくれたコート君も……」

そう言ってアイル達の後ろに視線を向けると、苦笑して肩を竦めるコートの姿があった。

「まぁ、僕は皆の代わりに質問をしただけですからね。大したことじゃありませんよ」

「いえ、本当に助かりました。お陰で良い流れでドラコを呼べたと思います」

改めて礼を述べると、コートは爽やかに笑って相槌を打つ。そんなやり取りをしていると、ロックスとフェルターが仏頂面でやってきた。そして、ロックスが目を鋭く細めて口を尖らせる。

「ちょっと待て! 俺には声すら掛からなかったぞ!?」

「……俺もだ」

ロックスとフェルターは怒ったようにそう言った。そんな二人の抗議に私は思わず目を丸くしてしまう。

「だって、ロックス君は私の噂を聞いて笑っていたでしょう? それに、フェルター君も声を掛けようと思ったらいませんでしたので」

「ぐぐぐ……!」

「ぬ……」

二人は私の言葉に口を噤み、何も言えなくなってしまった。