軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ラストチャンス?

ストラスの講義での惨状を伝えられて、スペイサイドとエライザが目を丸くして私を見た。気まずい空気の中、私は静かに手元に置いた紅茶を口に運ぶ。

今は講義の合間の休憩時間であり、私たちは校舎の中庭にある休憩スペースで四角いテーブルを囲んで座っている。私とエライザが並んで座り、正面にはスペイサイドとストラスが並んで座っていた。そして、全員の目が私の顔に向いている。

「……それは、擁護できませんね」

スペイサイドが溜め息交じりにそう言うと、エライザがなんとも言えない表情でストラスを見た。

「あ、アオイさんの魔術の選択も問題がありましたけど、ストラスさんも準備が悪かったかと……」

「なに?」

エライザに急にそう言われて、ストラスが驚いて振り向く。エライザは少し怒ったような顔でストラスを見て答えた。

「そもそも、子供達を喜ばせてアオイさんの評判を良くしようとするなら、講義を始める前にアオイさんと打ち合わせしておくべきだったと思います。だって、急に魔術を見せろなんて言われても、私だったら困ってしまいますから」

と、エライザが少し強い口調で告げる。それに、ストラスはウッと呻きながら顎を引き、すぐに項垂れた。

「……確かに。俺の、準備が足りなかった……」

ストラスがそう言って気落ちしたように項垂れると、スペイサイドが片手に持っていたカップを口に運び、一口飲んでから一言告げた。

「準備というか、配慮ですね」

「……ぐぬ」

スペイサイドからの痛烈な一言に、ストラスは眉間に皺を作って唸る。しかし、ストラスを責めるのもお門違いである。

「いえ、ストラスさんは私の為に自分の講義を使って評判を良くしようとしてくれたのです。それにうまく応えることが出来なかった私に非があります。今度は、何とか子供達を笑顔に出来るような魔術を考えてみます」

そう言ってストラスをフォローすると、捨てられた子犬のような目でストラスがこちらを見た。完全に凹んでしまっている。どうしようかと思っていると、エライザが自分の胸を片手で叩いて口を開いた。

「それでは、次は私の講義で同じことをしてみましょう! アオイさんを檻に入れるのは心苦しいので、私がゴーレムを準備しておいて、その前に立ってもらうという形で参加してもらえたら……」

「それもどうなんだ?」

「意味合いはあまり変わりませんね」

エライザの気遣いをストラスとスペイサイドが厳しく批評する。それにエライザが口を尖らせて怒った。

「じゃあ、二人だったらどうするんですか!」

「……悪かった」

「……駄目とは言ってませんよ」

エライザが怒ると二人はすぐに矛を収める。その様子に苦笑しつつ、私の為に皆が考えてくれていることに素直に感謝した。

「皆さん、ありがとうございます。次こそは失敗しないように頑張りますね」

「はい! それでは、皆でアイディアを練りましょう! 午後すぐですから、時間がありませんよ!」

エライザがそう言って陣頭指揮を執ると、皆で頷いて緊急会議を始めたのだった。

いざ、エライザの初等部での講義が始まると、私は緊張で動けなかった。そして、それは初等部の生徒達も同様らしい。

エライザの午後の講義は室内だった。少し広い講義室を使っている為、部屋の端と端に立てばそれなりに距離が出来る。その講義室の奥の壁のところに生徒達が団子のように固まって立っていた。そして、私は入口でエライザのゴーレムを背後に背負って立っている。

前に立つエライザは、私と生徒達の顔を見て少し困り顔で口を開いた。

「お、思ったより怯えられていますね……」

小さくそう呟き、エライザは生徒達に体ごと向き直る。

「それでは、土の魔術の講義を始めます。今日は基礎的なものからですが、分からないことがあったら私かアオイ先生に聞いてください。ちなみに、アオイ先生の後ろのゴーレムは私の土の魔術で作った凄く強いゴーレムです。土の魔術を勉強していけば、様々な建物やゴーレムなどを作ることも出来るようになります。是非、頑張って勉強してくださいね」

エライザがそう言って微笑むと、和やかなエライザの空気で僅かながら緊張の糸が緩んだ気がした。まずは座学で講義を進めていくのだが、エライザの雰囲気は子供達にも伝わるらしく、徐々に質問なども出始めた。

そして、驚くべきことに、一番背の低い女の子が私に質問をしたのだ。

「あ、アオイ先生……先生は、どんな魔術が使えるんですか?」

その質問に、子供たちの目に好奇心の色が浮かぶ。エライザが提案する前に、子供達から予定していた言葉が飛び出したことに驚いたが、すぐに口角を上げて頷いた。

落ち着け。今は小さな規模で、可愛らしいものを作るべきだ。エライザやストラス、スペイサイドの協力を無駄にしてはいけない。

「そうですね……それでは、動物のゴーレムを作ってみましょう。まずは、猫から」

出来るだけ優しい声でそう言って、私は手のひらサイズの猫型ゴーレムを作り出した。