軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

オークションスタート

「おお、フィディック学院の教員と生徒達か。見た顔だな。む、シェンリーもおるか」

「あ、こ、こんにちは!」

ミドルトン、ロックスと一緒に応接室を出てロビーまで戻ると、ストラス達が待っていてすぐにミドルトンが自分から声を掛けた。特に、ロックスが一時期虐めていた対象であるシェンリーのことは名も覚えていたようだ。

「壮健か? 何かあれば言うが良い。学びたい魔術の貴重な魔術書や魔術具はいるか? もし我が国の宮廷魔術師になりたいと望めば王都に邸宅も用意するぞ」

色々と後ろ暗いのか、ミドルトンはシェンリーにやり過ぎとも言うべき優遇の話をした。これにはシェンリーの方が慌てて両手を左右に振る。

「い、いえ! そんな、とんでもないです!」

恐縮した様子で断ると、ミドルトンは真面目な顔で頷く。

「うむ……困ったら必ず頼ってくれ。アオイかグレン侯爵を通してくれれば良いぞ」

「は、はい……ありがとうございます」

ミドルトンは揶揄うでもなく、真剣にそう言った。これにシェンリーも礼を述べつつ頷く。

その様子を気まずそうに見つめつつ、ロックスがこちらに声を掛けてきた。

「狙っている魔術具は今回の目玉だから、オークションの最後までは様子見だな。席だけでも押さえておくか」

「む? 三階の中央に王族用の席があるぞ?」

「いえ、やはり王族用の席に座るのは気が引けますし、前回と一緒で大丈夫です」

ミドルトンの厚意を丁重に断り、オークション会場へと向かう。

「おい。なぜ急に静かになるんだ」

後ろではストラスがワイドやタキーにそんな質問をしていたが、二人はストラスの背中や肩を叩いていた。どうやら、ミドルトンと一緒に移動することになって緊張しているようだ。

一方、グレンはミドルトンがいた方が話しやすいのか、二人で雑談に花を咲かせている。なんだかんだで住む世界が違うということだろうか。貴族社会の一端が垣間見えた気がした。

「では、楽しみにしておるぞ」

会場に入ると、ミドルトンはそう言って三階へと向かっていった。お供の騎士を連れていく姿に、会場の視線がそちらに向かう。

「あれ? ロックス君は三階に行かなくて良いのですか?」

ふと、すぐ横にロックスが立っていることに気が付いてそう尋ねた。すると、何故かショックを受けたような顔で首を左右に振る。

「いや、俺は今回はフィディック学院の生徒としてアオイの手助けをしようと思ってきているから……」

「あ、そうなんですね。では、一緒に行きましょう。手助けしてもらえると助かります」

「う、うむ。任せてくれ」

ロックスは機嫌が直ったのか、足取り軽く歩き出した。皆で二階奥の部屋へ向かうと、都合よくテーブルが二つ空いていた。奥から私、シェンリー、ロックス、コートが座る。グレン、ストラス、エライザが座ったところでワイドとタキーが「あ!」と声を上げる。

「椅子が足りないじゃない! メーカーズはどこ!?」

「あ、お隣さん! 一つ余ってるわよね!?」

「あら、良いの?」

「助かるわぁ!」

椅子が足りないという問題は二人が大騒ぎしながら勝手に解決した。別の街とはいえ、オークションハウスの支配人と副支配人である。まさに恐るべき図々しさだ。

「久しぶりねぇ、参加者席」

「本当ねぇ」

二人はウキウキしながらテーブルに両肘を立てて手のひらに顎を載せて呟く。その様子を呆れた顔で眺めるストラスが印象的だった。

と、その時、会場の一部がざわついた。音がした方向を見ると、前よりも多くの女性を引き連れたロイルの姿があった。七、八人いるだろうか。ロイルは以前と同じ席に行き、先に座っていた四人の人達に何か声を掛けていた。

そして、先に座っていた四人はどこかの席へ移動し、空いた場所にロイル達が座る。

不意に、ロイルと目が合った。

「……ロイルさん、ご機嫌ですね」

こちらを見て片方の口の端を上げる様子を見てそう呟くと、シェンリーが渇いた笑い声を上げる。

「あ、はは……私はちょっと怖い笑顔に見えますが……」

「凄んでいるんだと思いますよ、恐らく」

シェンリーの言葉を補足するようにコートがそう言った。それに首を傾げていると、コートは苦笑しながら再び言葉を続ける。

「相手も魔術具が目当てですから、競り合いに負けるものかと意気込んでいる、ということでしょうか」

「なるほど」

コートの説明は至極分かりやすいものだった。今、ロイルは私を入札のライバルだと思っているのだ。ならば、こちらも正々堂々勝負しようと目で伝えなければならない。

そう思い、出来るだけ笑顔でロイルの目を見返した。

「あ、目を逸らしましたね」

「え?」

笑顔を向けた筈なのに、ロイルはすっと横を向いてしまった。

「……解せません」

何となくこちらの意気込みを無視されたような気持ちになって不満を持つ。それにロックスは大きく頷き、「気持ちは分かる」などと呟いていた。

何となく危険人物扱いされたような気分だが、それに文句を言う前に会場の奥にある壇上に一人の男と六人の女が現れた。オークションの司会を務める男とその補助者だ。男たちは出て来てすぐに会場全体に向けて一礼し、口を開く。

「オークションへようこそ! 本日はなんとミドルトン国王陛下もお見えです! このオークションハウスの収益の一部は王家へ献上されます! 皆さま、どうぞ今回のオークションは全力で参加してください!」

オークション開催での口上だ。一番にミドルトンの紹介をしたが、それ以外は前回と同じような挨拶口上をしていく。

最後に、今回出品された物にも幾つか触れていた。

「……そして、本日の目玉は先週も発表させてもらった希少な魔術具の一つです! さぁ、皆さま。長々と挨拶や説明をしていても退屈でしょう! それでは、さっそくオークションを始めさせていただきます!」

司会は流暢な語り口で簡単に出品される物を説明してから開始を宣言する。

さぁ、いよいよ本番だ。