軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

突然の戦い

元老院の議員達の間に重苦しい空気が漂い始める。なぜなら、リベットの眉間に深い縦皺が刻まれたからだ。

「……ラングス。先ほどからの貴様の発言は、全て王家を軽んじる発言だと理解しているか? もし理解しての発言であるならば、余が自ら罰を与えるとしよう。もしそれで命を落とすことがあろうと、己が責任であると理解せよ」

リベットはそれだけ告げると、片手を顔の前に持ち上げた。まるで銃口を向けるように、ラングスの顔に手を向ける。これにはエドラ達も顔面蒼白になって前に出てくる。

「お、王よ! それはあまりに軽率な行動かと……っ!」

「ご子息を殺めてしまうなど、過去にない悪名を残してしまいますぞ!」

「陛下、お待ちください! 我々で、ラングス殿を説得して見せますので!」

エドラ達が群がるようにしてリベットの周りに集まると、苛立ったようにリベットが怒鳴った。

「ええい、鬱陶しい! 退け!」

流石に見境なく魔術を放つようなことは無かったが、それでもいつ詠唱を始めておかしくない様子である。これには、王国の行く末にあまり関係が無さそうなグレン達であっても焦ってしまう。

「お、落ち着いてもらえないじゃろうか。とりあえず、冷静に会話を……」

「いや、アオイが嫌がっているんだから結婚もどうせないだろうと思うが……」

「どうでも良いけど、アオイさんは嫁がせません!」

「あ、アオイ先生がエルフの王女に……あれ? 女王に……?」

若干混乱した様子のグレン、ストラス、エライザ、シェンリーが声を上げる。リベットの激怒に場の混乱は最高潮となった。

そんな中、それまで黙って聞いていた候補者達も動いた。何処か眠そうな表情で、レンジィが口を開く。

「……私は、別にそこの人間とラングスが結婚するのは反対しない。王になるのが嫌ならならなくて良いと思うし、結婚したいならすれば良いと思うけど。お互いが結婚を望むなら好きにしてもらって構わない」

何故か、レンジィは前向きにラングスの主張を受け入れる。これに、リベットは唖然とした顔になった。その主張は良いが、内容には同意できない。なにせ、私の感情が勘違いされているような気がするのだ。どうにかしてまずは私に結婚をする気がないという部分は理解してもらわねばならないだろう。

だが、私が口を開く前に、更に追い打ちをかけるようにアソールが小さく頷いて同意する。

「そ、そうですね。好きな人と一緒になれないのは悲しいです。ぼ、僕は運良くシャーロット嬢と婚約出来たので良かったですが……」

ラングスだけでなく、レンジィやアソールまで王家の伝統を軽視する発言をして、リベットは目を吊り上げて候補者達を睨んだ。

そこへ、オーウェンがしかめっ面で口を開く。

「馬鹿馬鹿しい。別に王家が潰れたところで王国が滅亡するわけでもない。その時は、エルフが主体となる新しい国が出来るだけだ。血筋に拘ってエルフという種族が滅亡する方が大問題だろうに、そんなことも分からないとは」

やれやれ、といった様子でオーウェンが最も過激な発言をした。そこで、ついにリベットの堪忍袋の緒が切れる。

「……分かった。余の教育が間違っていたようだ。ならば、相応の罰を皆に与えて、この場は終わりとしよう」

「お、王よ! どうか冷静になられよ……っ!」

「お、お待ちください!」

「す、少しお時間を……」

先ほどと同じようなやり取りが始まったが、今回はとうとうリベットの魔術の詠唱が始まってしまった。

流石に、これは放置できない。無詠唱で飛翔の魔術を発動し、リベットの暴走を止めにかかることにする。

「飛翔」

口にした直後、対象として指定したリベットの体が一気に空へと舞い上がる。続けて、自分自身も対象に指定して空中へと浮かび上がった。

「へ、陛下……っ!?」

誰かが下の方で叫んでいたが、すぐに聞こえなくなる。

雲の高さと同程度まで浮かび上がって、上昇を止める。すると、怒りに打ち震えるリベットの姿がすぐ目の前にあった。

「やめよ! 人に飛ばされることほど鬱陶しいことは無い! 貴様のしたいことは分かる故、魔術を取り消せ!」

「失礼しました。最低限にしていますので、どうぞそのまま詠唱してください」

「……ちっ」

私の言葉に舌打ちを返すと、リベットは一小節詠唱をして飛翔の魔術を行使する。速度が出るかは分からないが、滑らかな飛行である。ふわりと浮かんだリベットは、明らかに敵を見る目つきでこちらを睨んだ。

「若さゆえ、多少は大目に見てやろうと思ったが、もう止めだ。力の差というものを見せつけてやろうぞ」

呟き、リベットは詠唱を開始する。しかし、戦うというのならば先ほどのような悠長な戦い方はしない。剣道でもそうだが、速さと間合いの取り方で有利不利がある程度決まる。また、挑戦者は機先を制する動きが重要だろう。

これまで培ってきた経験からの持論をもとに、自身の考える最適な選択をして戦闘を開始する。

「…… 水牢(アクアジェイル) 」

魔術名を口にすると、瞬く間にリベットの周囲を水が覆う。火を防ぐ意味も込めつつ、詠唱を阻害するための行動だ。目論見通り、突然水中に投げ出されるような状態になったリベットは詠唱出来ずに口を閉じた。

水牢の中からこちらを睨むと、口を開いて水中で何か呟く。

直後、水牢は中から弾けるようにして破裂してしまった。

「……小癪な真似をする。余に強い魔術を使わせないつもりか? しかし、そんなことで勝てると思われては王の沽券に関わるな」

獰猛な笑みを浮かべて、リベットがそう言った。

そして、片手をこちらに伸ばして口を開く。

魔術名らしき言葉が聞こえた瞬間、風が巻き起こる。目に見えない風の刃が質量を持って迫るのを肌で感じた。

「 風の盾(ウィンドシェル) 」

口にした瞬間、激しい上昇気流が目の前で壁のように吹き上がる。真っすぐにこちらに向かって来ようとしていた風の刃は、その単純な力の指向性、方向性から簡単に向きを変えて弾かれてしまった。まさか防がれると思ってなかったのか、一瞬リベットが硬直する。

リベットが何か言う前に、口を開いた。

「 氷の双刃(アサシンエッジ) 」

口にした瞬間、リベットの左右に巨大な氷の刃が出現する、薄い丸みを帯びた氷の曲剣の刃先はリベットの顔の真横に並んでいる。ロックスの母、レア王妃の魔術具の魔術を模写したものだが、リベットの動揺は明らかだった。

「な……」

迂闊に動けない。そう思ってくれたなら重畳である。

さらに、その間に魔術の重ね掛けをする。

「…… 神炎槍(ファラリカ) 」

僅かに魔力を集中する時間を稼げたことにホッとしつつ、火の魔術を行使する。発動と同時に私の右手の指先から肘にかけて青白い炎が噴き上がる。その炎を制御しつつ、リベットの方向へ向けた。

直後、青白い炎の槍が指先から超高速で伸びる。