軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

文化祭後半6 実演販売失敗?

「こ、これはこれはアオイ殿! この学院一番の教員である貴女が、何故ここに?」

「発表をしていない会場に人だかりが出来ていたので、何事かと思いまして……それよりも、その剣についてです」

両手を広げて歓迎してくれたグランサンズ王に申し訳ないが、私の興味は全て剣に向けられている。

「その剣は何でも切れると聞きました。そこに魔術具としても可能性を感じています。良かったら、私の魔術でも試して良いでしょうか?」

「え?」

「…… 独鈷杵(ヴァジュラ) 」

魔術を行使すると、私の目の前に大きな石の像が現れた。上半身だけが浮いた筋骨隆々の迫力のある像だ。単純な物理的攻撃力ならば、最上級の魔術である。

「この魔術で攻撃するので、それを切り裂いてもらっても……」

期待を込めてそう言ったのだが、グランサンズ王は唖然とした顔で高さ十メートルほどの像を見上げ、固まった。周りを見たら、集まっていた観客達も似たような顔をしている。

てっきり、剣の切れ味が見られると喜ばれるとおもったのだが、どちらかというと空気が沈んでしまったかのような錯覚を受ける。

首を傾げつつ周りを見ていると、グランサンズ王が引き攣った笑みを浮かべて剣を指さした。

「お、おお。流石はアオイ殿。凄い魔術だ……しかし、残念ながら今日はこの剣の力を引き出せる最上級の剣士がおらんのだ。ま、またの機会にしてもらえるだろうか」

若干怯えたようにそんな説明すると、グランサンズ王は乾いた笑い声をあげた。

「そうですか……それは残念です。あ、それでは、告知だけして帰りますね」

仕方ない。そう思って私は会場に集まる人々へと振り返る。

「皆様、これから中央広場で生徒達の発表を行います。内容はこれまでになかった新しい魔術のお披露目です。生徒達の発表とは思えない素晴らしい出来なので、是非とも会場まで足を運んでみてください」

生徒達の発表の宣伝をして、深く一礼した。そして、すぐに飛翔の魔術を使って空へと舞い上がる。

「と、飛んだぞ!」

「そういえば、さっきも空から降って来たような……」

ざわざわと騒がしくなった地上に会釈をして、一足先に会場へと向かった。皆が一様に空を見上げているからだろうか。行きは誰にも見つからなかったように思うのだが、戻る時は何度も悲鳴や驚きの声が響いてきた。

どうしてだろうと思って周りを見ると、私の少し後方を先ほど出したヴァジュラが無言で付いてきていた。土の魔術の一種なのだが、知らぬ人が見れば間違いなく新種の魔獣かと疑うだろう。

「忘れていました」

そう呟いてヴァジュラを消し去ると、すぐに地上へと降りていく。学院内は広い広いと言っても所詮は街の中の施設の一つだ。飛翔魔術ならばすぐに端から端へとたどり着く。

「さぁ、先ほどの人達が急ぎで来てくれれば、恐らく開始前には辿り着くと思うのですが……」

呟きつつ地上に降り立つと、先ほどと景色が変わっていることに気が付いた。先ほどとは打って変わって人で賑わっているのだ。それも生徒達の親が近衛兵を連れて集まっているなどではなく、まさに雑多な人々の集まりである。

「……これは、どうしたことでしょう? 僅か数分で、いったい何が……?」

困惑しつつ周囲を見ていると、カリラが不敵な笑みを浮かべて歩いてきた。

「凄いだろ。やっぱ噂は大袈裟なくらいじゃなきゃな。これで発表は大成功だろう?」

得意げにそう言われて、素直に凄いと感心する。人々がどう反応するか、どう行動するかを予測して、実践してみせたということか。カリラにそんな技能があったとは……。

「ありがとうございます。カリラさんも発表を是非見ていってくださいね」

ホッとしながらそう言うと、カリラは目を丸くして曖昧に頷いた。

「あ、ああ。そうさせてもらうよ」

何故か戸惑うカリラに首を傾げつつ、すぐに会場の広場へと向かう。丁度そのタイミングで、生徒達も広場に出てきた。

「うわぁ、人がいっぱい!」

「本当ね」

アイルが感嘆の声を上げて、ベルが同意する。リズは珍しくカチカチと凍り付いたように顔を強張らせていた。

「……き、緊張しますぅ……」

「わ、私も……」

リズが震える両手を合わせてアワアワしていると、シェンリーも同様に不安そうな顔を見せる。とはいえ、シェンリーの方が緊張の度合いは少なそうだ。

一方、まだ対抗意識を見せているロックスとコートの二人はお互いを意識しつつ、会場の状況を冷静に眺めていた。流石は上級生といったところだろうか。他の子たちも大体はそれに大別される状態である。

そして、最後にディーン・ストーンだ。意外にも、ディーンは既に自分の内側に意識を集中しており、生徒や観客にも余計な気は散らしていない様子だった。

もしかしたら、この子は大一番でしっかり集中できるアスリート気質なのかもしれない。そういった人物は勝負に強く、重要な場面で結果を出せることが多い印象だ。

「……なにも心配する必要はありませんでしたね」

一言そう呟いて、会場の方へ目を向ける。

会場には既にロックスの両親も、コートとアイルの父も、シェンリーの父の姿もあった。そして、緊張した面持ちのティスの姿もある。

「さぁ、たっぷりと驚いてもらいましょう。生徒達の成長した姿に」