軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

文化祭14 各家庭の話

寮を出て、中央の広場へと向かう。教員の発表は十時と十一時からである。時間は丁度良いくらいだが、アイル達はどこにいるだろうか。発表を見るためだけなら何処か散策しているのかもしれない。

そう思って出店の様子を窺うと、ネヴィス一家の若者がパンを揚げていた。中々美味しそうだが、朝食を食べたばかりで食べられそうにない。

「ちょっと良いですか?」

「へい! 一個鉄貨一枚で……アオイの姐さん!? な、何か御用ですかい!?」

声を掛けると、ひょろっとした若者は目を剥いて驚いた。鬼が出たような驚き方に若干の不満があるが、今はそれはおいておく。

「あの、朱色というか、少し赤めのピンク色の髪をした女学生を見ませんでしたか? ほかに金髪の少女と水色の髪の少女が一緒に行動していると思います」

そう告げると、若者はすぐに頷いた。

「ああ、あの騒がしい……いや、可愛らしい三人組ですね! 三人でパンを買っていきましたよ! 確か、南の広場に行ってからまた此処に戻ってきたら丁度良いとかなんとか……」

「南の広場……分かりました。ありがとうございます」

礼を言ってから、私は南の広場へ移動する。時間がないので飛翔魔術を使うことにした。二階の屋根ほどの高さで止めて学院内を飛び回ったのだが、地上では私を見つけた子供が歓声を上げたりして騒いでいた。

一、二分で南の広場に到着すると、そこには革鞄を取り揃えた出店の前で騒ぐ三人娘の姿があった。

「アイルさん、リズさん、ベルさん」

三人の名前を呼びながらすぐ傍に降りると、まずはリズが私に気が付く。

「アオイ先生!」

「やっと来たんですか!」

「遅いですよー!」

途端にきゃあきゃあと騒がしくなる。その様子に苦笑しながら、軽く一礼した。

「おはようございます。申し訳ありません。遅れてしまいました」

そう告げると、アイルがお気楽な調子で笑い、片手を振った。

「大丈夫ですよー。昨日、お父様に聞きましたから。夜遅くまでお父様達と食事していたって」

「アイルのお父様? じゃあ、コート・ハイランドの議員達と?」

「違う違う。各国の王様とか、その辺りですよね?」

ベルが質問すると、アイルが眉をハの字にして否定し、こちらに確認をしてくる。

「あ、はい。そうですね。とはいえ、私から見たらロックス君のお父さんやフェルター君のお父さん。アイルさんのお父さん、という感覚ですが」

そう答えると、アイルは困ったように笑う。

「そんな感じで話が出来るのはアオイ先生だけですよー! 他の先生だったら絶対緊張して喋れなくなるような偉い人ばっかりでしょ? まぁ、私のお父様は代表議員の一人だからそうでもですけど」

と、アイルが苦笑すると、リズが首を左右にブンブンと大きく振った。

「アイザック様は上級議員筆頭ですし、代表議員に一番長く在籍してますからね! 他の国の公爵様と同じくらい偉いと思います!」

と、私を見ながら熱弁する。どうやら、コート・ハイランド連邦国の階級制度は複雑らしい。上級なのか代表なのか、制度がよく分からない反応に困ってしまう。

コート・ハイランドのシステムに頭を悩ませていると、アイルが「あ」と声を出して顔を上げた。

「そういえば、今年はバレル君のお父様が来てたんだって」

「バレル君の? えっと、カーヴァン王国、でしたか?」

そう尋ねると、アイルは目を瞬かせた。

「アオイ先生、会ってないんですか? ロレット・ブラック公爵ですよ! 王弟であり、北の広大な土地を持つ大領主ですからね。お父様が話をしたかったけど、まだあまり会話出来ていないんだって凹んでました」

「ああ、ロレットさん。そうですね。同じブラックという名前でした。あれ? しかし、ロレットさんからバレル君の話は出ませんでしたね」

そう答えると、アイル達が揃って顔を見合わせる。

「……まぁ、バレル君の家は色々あるみたいだしね」

「後継者争いかぁ……私の家は関係ない話だからなぁ」

「大変だよね」

と、三人はこちらが聞く前にブラック公爵家の状況を教えてくれた。しかし、内容は明らかに外部の者が立ち入って良いものではない。

「それは難しい問題ですね」

なので、私はその程度の感想に留めることにした。すると、アイルは思い出したように手を胸の前で叩く。

「あと、カーヴァン王国といえばディーン君のお母様も見学に来ているそうです」

「ディーン君の? それは一度挨拶をしておきましょう。最終日に発表もありますからね」

そう告げると、リズが片手を上げた。

「あ、ディーン君なら中央広場で見ました! ディーン君と同じ緑色の髪の女の人が隣にいたから、あの人がお母さんかな?」

「そうじゃないの?」

と、リズの言葉にアイルが返事をする。

今回生徒達が発表する雷の魔術は、ディーンが主役といっても過言ではない。余程イメージが鮮明に出来ているのか、ディーンが最も雷の魔術は上手に出来ているのだ。ただ、本人に自信がないのが気になる。

家庭ではどのような生活態度なのか、是非聞いておきたいところである。

「では、皆で向かいましょう。そろそろ、中央広場で発表もありますからね」

そう告げると、三人は揃って良い返事をしたのだった。