軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

文化祭10 懇親会

学院内の応接室。二十人はゆったり入りそうな室内に、各国の代表が揃っていた。

ミドルトン、ディアジオ、グランツの王三人。そして、ラムゼイ侯爵とロレット公爵の二人。

対してフィディック学院はグレンと私だ。コの字になったテーブルに奥から王族、上級貴族と並んでいる。爵位がないのは私だけだ。天井からは豪華なシャンデリアが吊り下げられ、床にも分厚い絨毯が敷き詰められている。なんとなく、場違い感が凄い。

ちなみに、レアはフィオールと女子会を開いているらしい。二人の息子が友人同士の為、話も盛り上がっていることだろう。

そんなことを思っていると外から扉がノックされた。配膳台を押してメイドが入室し、コの字になったテーブルの空いた部分に入ってくる。

そこから各テーブルに料理を並べていくメイドを見て、成る程と一人感心した。料理の配膳をしやすいようにこの形になっているようだ。

気になってメイドの配膳をジッと見つめる。流石はというべきか、メイドの仕草や配膳の流れはとてもスムーズで洗練されている。しかし、この学院にメイドなどいただろうか。

そんなことを考えていると、不意にグレンが口を開いた。

「さて、そろそろアイザック君が来る筈じゃったが、時間も遅くなってきたし……」

懇親会を先にやるべきかどうか、グレンがそんな口ぶりで話し始めた。アイザックという人がコート・ハイランド連邦国の代表だろうか。

そうだとしたら、この一室に六大国の重鎮が勢揃いすることになる。

ある意味、サミットみたいだな。そんなことを思いながらグレンのセリフの続きを待つ。

そこへ、再び扉をノックする音がした。扉が外から開かれて、別のメイドが一歩室内へ足を踏み入れる。

「失礼します。コート・ハイランド連邦国から、アイザック・ウォルフ・バトラー議員がいらっしゃいました」

そう告げて深く一礼し、メイドは扉を開いて立ち止まった。そして、朱色の髪の男が姿を見せる。少し疲れた表情が特徴的な髭の生えた男だ。年齢は四十代か五十手前ほどだろうか。

アイザックと呼ばれたその男は、一度皆に向かって一礼し、室内へと入ってくる。

「お久しぶりです。皆さん」

アイザックは微笑を浮かべて簡単な挨拶をし、私の正面の空いた席に座った。

「アイザック殿。久しぶりだな」

「長いこと顔を見ていなかった気がするぞ」

アイザックの挨拶にミドルトンとラムゼイが返事をする。それに苦笑しながら頷き、それぞれと一言二言会話をして、最初の挨拶はひと段落ついた。すると、アイザックは、私の顔で視線を止める。

「貴女がアオイ・コーノミナト先生でよろしいでしょうか」

「あ、はい。アオイと申します」

答えると、アイザックが微笑んだ。

「いつも息子と娘がお世話になっております。コート・ヘッジ・バトラーとアイル・ヘッジ・バトラーの父親です」

そう言って会釈するアイザックを見て、私はそういえばと頷いた。

「あぁ、コート君とアイルさんの……これはご丁寧にありがとうございます。お二人ともとても真面目で良い子ですよ」

二人の学院での学習態度を告げると、アイザックは苦笑しながら首を傾げる。

「本当ですか? いや、言い訳ですが、親である私が仕事で中々面倒をみることが出来なくて……昨年帰郷した際もまだまだ落ち着きが足りず、学院では迷惑などかけていないか心配していました」

「そんな、お父さん……本当に二人とも真面目で優秀な生徒ですよ。特にコート君は面倒見がよくて、後輩の女学生がイジメにあっているところを助けに入ったりもしてくれました。教員の間でも模範的な生徒として話題にあがります」

アイザックの謙虚な態度に、丁寧に返事をした。初めて教員と父兄らしい会話をした気持ちになり、少し嬉しい気持ちである。

そこへ、自虐的な笑いを浮かべつつ、ミドルトンが口を開く。

「その話は、我が馬鹿息子も関係する話であろう? アイザック殿。また後で、二人で話をさせてもらいたい」

「ああ、いやいや……元気が有り余ってのことでしょうから……」

ミドルトンの言葉にアイザックは恐縮して首を左右に振った。話についていけない面々は顔を見合わせているが、わざわざ赤裸々に語る内容でもない。

グレンが咳払いを一つして、話の流れを一区切りさせた。

「おほん……積もる話もあるじゃろうが、まずは乾杯といこうかの。話はそれからゆるゆるとしたいところじゃが、どうですかの?」

グレンのその言葉に、ミドルトン達は素直に頷いた。

「異論はない」

「うむ」

「助かったぞ。先程から腹が減っていてな」

「ラムゼイ卿。先程こそ随分と出店の肉を食していたではないか」

「あの程度、前菜にもならんわ」

と、グレンの言葉をきっかけに場は和やかに進み始める。

はてさて、私は何故この場に呼ばれたのだったか。

そんなことを思いつつ、各国の要人たちの懇親会がスタートしたのだった。