軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

文化祭7 王族

エライザの発表を見た後は、引き続き文化祭の様子を見学に向かった。グレンが各国の王族を案内しているらしいが、どのようなルートで案内しているのか知らないので今のところ遭遇していない。

「アオイ先生!」

「はい?」

ウロウロしているところで名を呼ばれて、私は振り返った。そこにはアイル達の姿があった。アイル、リズ、ベルの手にはパンや肉の串が握られており、今のところ一番お祭りを楽しんでいる風に見える。

「こんにちは。三人で見て回っているのですか?」

尋ねると、アイルが眉を八の字にして頷く。

「はい。朝はシェンリーと一緒にいたんだけど、お昼前にお父さんが着いて、私たちと別行動になったんです」

「シェンリーさんのお父さんが? そうですか……どちらに行ったのか、知っていますか?」

「え? 確か、中央広場だったような……」

シェンリーの場所を尋ねると、アイルは目を瞬かせつつ教えてくれた。

「ありがとうございます。気になるのでちょっと様子を見てきますね」

そう告げると、アイル達も何か察したのか、付いてくるとは言わずにただ返事をしたのだった。

中央の広場に向かうと、少し人の数や気配が増えたことに気が付く。上級教員の発表が終わった後なので、本来なら人の数は減っているものだと思うが、今は発表も無い広場に多くの人が集まっている。

と、よく見ると住民や他国から観光で来た人々以外に鎧を着た騎士らしき者も多く見受けられた。中にはローブを着た他国の魔術師の姿もある。やはり上級教員の発表となると様々な人が集まるのかと思ったが、どうも違うようである。

「おお、アオイ君」

グレンに声を掛けられて、私はそう思った。

「グレン学長。案内をしているところだったのですね」

そう言って、グレンの後方に並ぶ面々を見る。ミドルトンやレアの姿は勿論、メイプルリーフで会ったディアジオ、ラムゼイの姿もある。そして、他にも背の低い黒ひげの男や金髪の小太りの男もいた。半分以上は知っている顔であり身分を知っている為、自ずと他の二名もどのような人物か分かった。

「これはアオイ先生、久しぶりである」

「お久しぶり、アオイ先生」

「お久しぶりです」

ミドルトンとレアが親しげに挨拶をしてきたので返事をしていると、ディアジオとラムゼイもこちらに来た。

「アオイ殿。久方ぶりだな」

「先月はお世話になりました」

ディアジオの挨拶にも返事をする。ラムゼイは三人の様子を横目に見てから、二ッと歯を見せて獰猛な笑みを浮かべた。

「フェルターは最終日の朝、東の広場で発表を行うそうだ。俺はそこで実験相手として参加しよう。アオイ殿ともそこで戦いたいと思うが、いかがか」

ラムゼイが胸を張ってそう言うと、ディアジオがギョッとした顔になって振り返る。

「ラムゼイ侯爵。まさか、アオイ殿と戦うつもりか?」

ディアジオが尋ねると、ラムゼイは片方の眉を器用に上げて肩を揺すった。

「フェルターにも勝った強者と聞く。大規模魔術のみ禁止として手合わせをしたいのだ。どうせならフェルターと一緒に挑んでもらっても構わないが、噂では竜をも単独で倒すという。万全の態勢で一対一の戦いとした方が良いだろうな」

そう言って、ラムゼイは愉悦をかみ殺すように笑う。ディアジオはその様子を見てから、眉間に深く皺を刻んだ。

「……止めておいた方が良いと思うが」

ディアジオがそう呟くと、ラムゼイは腕を組み、胸を張る。

「何を言われるか。いまだに我が国で最も強いのは自分だと自負している。国の名にかけて、俺は負けるわけにはいかん」

自信満々といった様子でそう口にすると、ディアジオは同情を込めた目で見た。

「……自国の名もかけぬほうが良いと思うが」

ディアジオが何とも言えない顔でそう呟くと、ミドルトンとレアも思わずといった様子で苦笑していた。

そこへ、黒い髭の男が朗らかに笑いながら歩み寄ってくる。

「いやいや、楽しそうで何よりですな。さて、わしはグランサンズ王国の国王、グランツ・ハイリバー・グランサンズと申す。噂の上級教員、アオイ殿とは是非会ってみたいと思っていた」

グランサンズ王国の王、グランツが親しみやすそうな雰囲気でそう挨拶をした。それに会釈を返して口を開く。

「これはご丁寧にありがとうございます。ご存じのようですが、私はアオイ・コーノミナトと申します。よろしくお願いいたします」

答えつつ、そういえばエライザの出身の国の王様であることを思い出す。確か、グランサンズ王国はフィディック学院に通う生徒が最も少ない筈だ。教員に関してもエライザしか知らない。

それらを考えれば、グランサンズ王国は最も魔術の発展が遅い国という話も納得がいく。確か、グレンがとても優れた武具や防具を作る国だからと言っていた気がするが、実際はどうなのだろうか。

色々と考えつつ、私は視線を別の人に移した。すると、最後に金髪の小太りの男が顔を上げて口を開いた。

「最後か。私はカーヴァン王国のロレット・ブラック。公爵家当主であり、現国王の弟でもある。噂はかねがね……と言いたいところだが、私は自分の目で見たものしか信じない性格でね。最終日の発表を楽しみにさせてもらおう」

そんなことを言いながら、ロレットは厳しい視線を向けてきた。とはいえ、相手は公爵で私は一般市民相当だ。こんなものかもしれない。

「ご丁寧に……ではありませんが、よろしくお願いします」

軽く挨拶を返しておくと、ロレットの顔が若干引き攣った。そして、後方ではレアが笑いを堪えて顔を背け、グレンが頭を抱えていた。