軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

帰って早々

「ただいま戻りました」

飛翔魔術で真っ直ぐ学院都市に戻り、そのままフィディック学院の中庭に降りた。すると、待ち構えたような恰好でグレンが立ってこちらを見ていた。

偶然だろうか。驚きつつ挨拶を返し、御者席から降りる。馬車の扉が開き、ストラスやエライザ、コート達が降りてきてグレンの姿を発見した。

「おかえり……ようやく帰ってきたの」

疲労感を滲ませた声でグレンがそう呟き、ストラスやエライザ、コート達が顔を見合わせる。

「申し訳ありません。遅くなってしまいましたか?」

そう尋ねると、グレンは力なく首を左右に振った。

「いや、きっかり一ヶ月じゃよ。通常なら行き帰りで一週間ズレたりすることもあるのじゃから、計画通りで素晴らしい限りじゃ……」

「本当ですか? とてもそうは思えない雰囲気ですが」

弱っているグレンに確認すると、溜め息を吐いて顔を上げる。

「悩んでおるのは別のことでな。実は、毎年文化祭という文化交流の式典を開いておるのじゃが、今回は準備から何から全く出来ておらんかった。今、各国に日程の連絡を行い、急ぎで準備を進めておるところじゃ。帰ってきて早々申し訳ないが、三人にも力を貸してもらいたい」

グレンが困り果てたような表情でそう言うと、エライザとストラスが恐縮して頭を下げる。

「い、いえいえ! 私こそすみません! すっかり忘れてました!」

「申し訳ありません。急ぎで準備をします」

二人はそう言って、すぐに寮の方向へ走って行った。

「では、コート君たちももう帰りましょう。また次回、講義でお会いしましょうね」

そう告げると、コートたちも挨拶をしてそれぞれ帰っていく。シェンリーが不安そうに振り返っていたが、アイルに連れられて去っていった。

二人だけになると、グレンは眉をハの字にして深く溜め息を吐く。

「困った……いつもなら、三ヶ月は掛けて準備をするものじゃが、今回は何故か誰も文化祭のことを思い出さなくての。普段なら各教員がそれぞれフィディック学院での研究成果を発表するのじゃが、各国の王族に披露するとなるとそれなりの完成度が必要なんじゃ」

そう言って、私を見る。

「アオイ君には飛翔魔術を披露してもらえたら有難いの。どの国の魔術師が来ても驚くじゃろうから、単純に空を自由に飛んでもらうだけで結構じゃ」

「そんな簡単なもので良いのですか?」

グレンのセリフに思わず驚いてしまった。なにせ、ストラスやエライザの焦り方をみるに大変な準備が必要だと思ったのだ。

しかし、グレンは浅く頷いて肩を落とす。

「それはアオイ君がもう発表出来るものをもっているからじゃよ。普段ならエライザ君は大きなゴーレムを作ったりするし、ストラス君も風を使った魔術の新しい使い方なぞを発表してくれるのじゃが、今回は時間がないから大変じゃろうな」

「なるほど」

そう口にして、ふと思い立つ。

「その発表に、生徒は参加しないのですか?」

「生徒? ふむ……毎年一人か二人は独自に研究している魔術を発表しておるぞ。まぁ、よほど自信のあるものでないと発表は出来んが、その分発表出来た生徒は各国に優秀さを示すことが出来るのじゃ。今回はロックス君あたりなら発表出来るものがあるかもしれんの」

グレンの説明を聞いて、私は顔を上げて口を開いた。

「それならば、私が教えている生徒達を参加させましょう。メイプルリーフでもシェンリーさんが雷の魔術を披露しましたが、あれなら各国の魔術師も興味を持ってくれるかもしれません」

そう告げると、グレンがハッとした顔でこちらを見た。

「雷の魔術! それは良いぞ! というか、シェンリー君ももう使えるのかの? 何人も使える生徒がいるとなれば、フィディック学院としても高い評価をもらえて嬉しいぞい。あと一ヶ月でもう一人か二人いけるじゃろうか?」

俄然元気になったグレンが前のめりになって聞いてくる。それに若干引きながら、私は生徒たちの状況を思い出す。

「雷の魔術を使えるのは現在十人ほどで、あと少しで出来そうな人なら五人はいますね。新しい魔術という意味では、フェルター君の身体強化の魔術も面白いかもしれません。見た目は地味になるかもしれませんが、基礎は出来ているのですぐに全体強化か、腕や足の一点集中強化魔術を覚えることが出来ると思います」

「全体強化! それは面白いの! 身体強化はどこかを強くすれば他の部分が弱くなる欠陥魔術という印象が強い。それを覆せるとなると十分な成果じゃな!」

学長として安心しているというより、本人が新しい魔術に興味をそそられているような態度である。まぁ、元気になったようで良かったと思うべきか。

「他には何かないかの?」

ウキウキして聞いてくるグレンに苦笑しつつ、私は他に何かないか考える。

「そうですね。以前お見せした水流カッターや、魔法陣なども良いかもしれません。メイプルリーフで炎の壁を発生させる魔法陣を作成しましたが、少々想定と違ったものになってしまって作り直したかったのです。丁度良いので、一つ作ってみましょうか」

「炎の壁を発生させる魔法陣! それも面白そうじゃ! 文化祭は三日間あるからの! どうなるか心配じゃったが、それなら三日じゃ足りんくらいじゃよ!」

と、グレンは先ほどまでの沈んだ雰囲気は何処へやら。大変ご機嫌になって私の提案に食いついてきたのだった。