軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

今度こそ

再度、門の前の兵士に面会の依頼を行い、すぐに執務室らしき部屋に通された。

机の奥でオルドが顔を上げる。カティ同様、敵意の籠った目でこちらを見てきた。

「まだ何かあるのかね」

冷たい声音でそう言われて、シェンリーが息を呑む。私は萎縮するシェンリーの前に立ち、真っ直ぐにオルドを見返す。

「オルドさん。ようやく理解出来ました。宮廷魔術師のジェムさんのことを気にして、シェンリーさんを退学させようとしているのですね? ジェムさんに何を言われたのかは知りませんが、シェンリーさんや家のことは私がなんとかしてみせます。中々信じられないかもしれませんが、どうかここは私を信じてください」

そう言って、熱意をもって説得を試みるが、オルドの表情に変化はない。私の言葉を思案するように数秒もの間顎を引き、目を細めた後、口を開く。

「……まず、誤解があるようだが、私はジェム卿に脅されているわけではない。むしろ、ヒネク卿の訴えるメイプルリーフの強みを伸ばすという考え方に賛同しているのだ」

「ジェムさんの考え方……私としては、変化を嫌がっているという風に感じています。それに、今後他国の水準が上がれば、メイプルリーフの癒しの魔術も大きな強みとはなり得ないでしょう」

自分の思いを素直に告げてみた。すると、オルドは苛立ったように目を鋭くする。

「何を根拠にそんなことが言えるのか。他国の魔術の研究状況は機密だから把握出来ないが、他国から癒しの魔術を行使してもらおうとメイプルリーフに多数の貴族や王族が来る。それが答えだろう」

感情的になりつつ、オルドがそう言った。だが、その意見を私は真っ向から否定する。

「それは過去のメイプルリーフです。未来はまた違ったものとなるでしょう。それは二年後、三年後となるかもしれませんが、間違いなくそうなると思っています」

「だから、それは何故かと……」

徐々にお互い熱が入ってきてしまっていると感じたのか、オルドが言葉を途中で止めて押し黙った。そして、軽く舌打ちをして顎をしゃくってみせる。

「理由を言うが良い。その突拍子もない言葉を信じるに足るような証拠はあるのか?」

低い声でそう言われて、私はすぐに頷いてみせた。

「簡単な話です。これから私が各国の魔術レベルを大きく向上させるからです。一年以内に六大国を回り、三年以内にフィディック学院に各国の魔術師を集めて教育を行っていきます。そうすれば、各国の魔術研究は著しく躍進するでしょう。結果としてメイプルリーフの癒しの魔術の優位性は崩れてしまいますが、代わりに遅れていた他の魔術も高い水準に達します」

簡単に今後の予定を解説して、オルドの反応を待つ。オルドは呆気にとられたように目を瞬かせて、すぐに苦虫を嚙み潰したような表情になった。

「……理由に関しては分かった。しかし、あまりにも荒唐無稽過ぎる。いくらフィディック学院が優れているといっても、各国の宮廷魔術師の方が魔術師としては上だろう。我がメイプルリーフは六大国一の癒しの魔術を伝承していくという使命がある為、聖人や聖女が魔術学院のトップになることが多い。しかし、普通はその国で最も優れた魔術師は宮廷魔術師になるものだ。つまり、学院の教員とは宮廷魔術師になれなかった者がなる職種であると言える。フィディック学院といえど、他国の宮廷魔術師に魔術を教えるなんていう発言は傲慢が過ぎるというものだ」

と、オルドは語気を強めてそう言った。まったく信用していないことが言葉の端々から伝わり、何となく腹立たしい。とはいえ、メイプルリーフから出たことがない者であればそういった認識になるのかもしれない。

なにせ、聖都魔術学院や聖都の宮廷魔術師ですらそんな認識だったのだ。仕方がないことに違いない。だから、私はその常識を打ち壊すことにした。

「分かりました。それでは、何かテストをしましょう。魔術に関することならばどんなテストでも受けさせていただきます。そちらが納得するようなやり方でお願いします」

真正面から目を見返してそう告げる。

すると、オルドは鼻を鳴らして腕を組んだ。

「……大した自信だ。ならば、基本となる火、水、土、風、そして癒しの魔術で上級魔術を披露してもらおうか。上級魔術は我が子爵領にも使える魔術師は数えるほどしかいない。複数の属性で使える者など聖都にも殆どいないだろう。各国で魔術の教育を行うなどという大それたことを言うからには、最低でも上級の魔術は使えるのだろうな?」

挑戦的な態度でそう言うオルドに、私は深く頷いた。

「問題ありません。実際にお見せしましょう」